「藻」で牛のメタンガスを減らす。世界が注目するスウェーデンの気候変動テック

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みなさんが最後にファストフードを食べたのはいつだろうか。1940年にマクドナルドがアメリカで誕生して以来、ファストフードという新たな食文化は世界中に広まった。そんなファストフード店の定番メニュー、ハンバーガー。ハンバーガーに使われているビーフパティの主原料である牛の数も、ファストフード店の数に比例して増加した。

これらの畜産されている牛の「おならとげっぷ」が、実は地球温暖化を加速させている要因の一つなのである。牛1頭がげっぷやおならとして放出するメタンガスの量は、1日160〜320リットルとも言われている。アメリカ・カルフォルニア州では、農場経営者にメタンガス排出量の削減を義務づける法案も登場するなか、研究者たちは牛たちの「減ガス化」を目指し、飼料から遺伝学まであらゆる方法を用いて地球温暖化問題への解決策を模索している。

そして、バイオ関連事業を通して牛たちの「減ガス化」に取り組もうと注目を集めている企業がある。それが2018年にスウェーデンのストックホルムで創業したスタートアップ「Volta Greentech」だ。

創業者の一人、Fredrik Åkermanは2016年にオーストラリアのジェームズクック大学が「カギケノリ(asparagopsis taxiformis)」と呼ばれる海藻に含まれる「ブロモフォルム」というハロゲン化合物が、メタン細菌の働きを抑える効果があるという研究結果をReddit(ソーシャルブックマークサイト)で発見した。さらに調べを進めると、この海藻を牛が食べると、牛に害を与えることなくメタンガスを削減させることに繋がることを知った。そこでこの技術を活用して世界が直面している地球温暖化に取り組もうと決心し、もう一人の創業者 Leo Wezeliusと共に事業を展開することに決めたという。

共同創業者のFredrik

フレドリック氏

彼らは、2022年に運用開始予定の工場「Volta Factory 01」で商業用「カギケノリ(asparagopsis taxiformis)」の栽培を開始すべく準備を進めている。工場は毎日12,500頭の牛に給餌できる分の製造能力を持っている。さらに、データが蓄積され、分析できる段階まで来れば、将来的には同工場で10万頭の牛に対応できる生産能力に伸ばせると見込んでいる。

また、彼らが注目を集めているのは、今世界が抱える大きな課題への解決策を打ち出しているという理由だけではない。工場のオペレーション・商品の製造方法においてもグリーンビジネスの実践を試みているからだ。工場には100%クリーン電力と産業廃熱で稼働する仕組みを導入予定で、工場を可動させることによるエネルギー消費を限りなくゼロに近い形にすることを目標としている。他にも、海藻は地上の植物同様、空気中のCO2(二酸化炭素)を吸収し、O2(酸素)を発生させながら C(炭素)を蓄えて成長するため、海藻の生産を通じて、年間1,000トンのCO2(効率改善後は3, 800トンのCO2)を削減にも貢献しようとしているのだ。

Volta Greentechの工場

2022年に運用開始予定の工場「Volta Factory 01」

同社は現在社員が約10人ほどの小さな会社だが、世界からの注目度は高く、これまでに様々な投資家から資金調達を実施し、今年に入って数ヶ月で50万ユーロ(約6,000万円)の資金調達に成功している。Fredrik 氏は今後の課題について、「大規模生産にむけた具体的な方法の模索、そして小規模農家でも採用できるよう価格や手法の確立を実現することだ」とBREAKIT紙のインタビューで答えている。

牛の増加は森林の敷地面積減少という問題を招くだけではなく、間接的にはメタンガスの排出によって、地球温暖化などの気候変動を引き起こしてしまっている。Volta Greentechの挑戦はまだ始まったばかりだが、共感の輪を広げ、協力者を増やしていくことができれば、あらゆる土地で採用される画期的な商品となるだろう。

【参照サイト】Volta Greentech
【参照サイト】This factory is growing a new kind of food for cows: A seaweed that reduces their burps