話した言葉をすぐ点字に。専門知識がなくても点字ラベルが作れるプリンター

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視覚情報に頼らず情報を伝えることができる点字。必要とする人にとって欠かせない存在である一方、読み書きには専門的な知識や経験が求められる。だからこそ、点字を用意してアクセシビリティを高めたいと思っても、実際には簡単とは言えない場面が多かった。伝えたいことがあっても、「仕組みがわからない」という理由で、その一歩を踏み出せずにいる人も少なくない。

そうした、点字を用意する際に生まれてきたハードルを軽くしようとしているのが、ラベルプリンター「Nemonic Dot」だ。

これまで点字ラベルを作るには、点字の仕組みを理解し、専用の機器を扱う必要があった。一方、Nemonic Dotは、専用のモバイルアプリを入れたスマートフォンに話しかけたり、文字を入力したりするだけで、その内容を自動的に点字へと変換。アプリには多言語対応の点字翻訳機能が搭載されており、点字の知識がなくても、数秒でさまざまな点字ラベルを作成できる。

Nemonic Dot

Image via Mangoslab

Nemonic Dot専用アプリ

Image via Mangoslab

本体はバッテリー駆動で、Bluetooth接続にも対応したコンパクトな設計となっており、場所を選ばず、必要なときに印刷できるのも特徴だ。

また、金属を含む耐久性の高い素材へのエンボス加工にも対応しており、長く使われる場所や、頻繁に触れられる環境でも、点字が読み取りやすい状態を保てるよう工夫されている。こうしたプロダクトが広く使われるようになれば、公共施設やオフィス、家庭など、さまざまな場所で点字がより身近な存在になるかもしれない。

実際に、Nemonic Dotを手がけるスタートアップのマンゴースラブは、大韓薬剤師会(韓国の薬剤師団体)と連携し、視覚障害のある人が薬を安全に使える環境づくりに取り組んでいる。同社は、薬局のシステムとプリンターを連動させ、薬品名や用法、注意事項といった情報を、点字翻訳の専門知識がなくてもその場で出力できる仕組みを整えた。これにより、事前に用意された点字ステッカーを貼る従来のやり方とは違い、個人の処方箋に合わせて柔軟に情報提供できるようになったのだ。見えにくかった服薬時の不安や情報の行き違いに光を当てる、医療の現場から生まれた実践的なアプローチと言えるだろう。

また、Nemonic Dotのもう一つの特徴が、視覚障害のある人自身が使うことを想定した「アイズフリー・デザイン」だ。操作部の配置やカートリッジの交換は、視覚に頼らず、触覚だけで行えるよう設計されている。

「点字を扱うには、特別な知識や経験が必要だ」──そんなふうに、点字を遠い存在にしてきた前提を、Nemonic Dotは覆した。テクノロジーとデザインの力によって、アクセシビリティが日常の中に自然に溶け込んでいく。このプロダクトは、そんな未来を見せてくれることだろう。

【参照サイト】Nemonic Dot

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