もしあなたが、高齢者向けの新たなサービス開発のリーダーを任されたとしよう。創造的で、発想豊かなアプローチが期待されている。さて、どんな準備から始めるだろうか。
おそらく多くの人は、こう考えるかもしれない──「まずはクリエイティブに精通した若手のチームを組み、ターゲットとなる高齢者層へ丁寧にヒアリングを行おう」と。
決して間違ったアプローチではないはず。しかし、無意識のうちに重要なことを見落としていないだろうか。それは、高齢者が商品を購入するターゲットや、分析すべきヒアリングの対象である以前に、社会の第一線で活躍できる経験則と知恵を持った存在であるということだ。
そんな一歩踏みこんだ包括を体現しているのが、オランダ・アムステルダムにあるクリエイティブエージェンシー「Tosti Creative」の取り組み。彼らが2025年12月に立ち上げたのは、70歳以上に限定してクリエイターを募集し、実際のクライアントの課題解決を依頼するプロジェクト・Senior Creative(70+)だ。
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当初、この企画は高齢者の孤独解消のための場を提供するという福祉的なアプローチから始まったそう。しかし、参加者の一人が「私たちも一緒にブレインストーミングに入らせてもらえませんか?参加したいのです。年寄りかもしれませんが、愚かじゃない」と語りかけた(※1)。これが契機となり新プロジェクトとして募集を開始したところ、数百件の応募が殺到したというわけだ(※2)。
実際に採用された12名は、高齢者向けのデジタルスキル向上、高齢者がより小さい住宅を選択するための施策、難民とホストファミリーのマッチング、という3つの課題について、議論を交わした。うち2件はすでにクライアントとの具体的な協議に入っているという(※3, 4)。シニア世代が求めていたのは、ハードルを下げた気休めの職場ではなく、自らの才能を存分に生かせる挑戦の場だったのだ。
こうしたシニア世代の活躍は、将来世代に大きな影響を与えるだろう。2025年6月に日本で行われた調査(※5)によると、中学生の73%、高校生の77%が日本の将来に不安を抱いている。また、個人の将来に対する思いとして、高校生のトップ回答は「安定した毎日を送る」という少し内向きにも見えるものだった。
一方で、「好きなことを仕事にできる」という考え方が定着し始めており、就きたい職業の分散化が見られるという。自分らしい生き方を柔軟に模索しつつも、先行きの見えない未来に漠然とした不安を抱いている姿が垣間見える。
そんな将来世代がもし、Tosti Creativeのプロジェクトが体現したような、70歳以上の世代が生き生きと議論を交わし、課題をクリエイティブに解決していく姿を日常的に目にすることができたら、彼らの描く未来像はどう変化するだろうか。「年を重ねたら、こんな風に仕事がしたい」と、心を躍らせることは、彼らの足取りを軽くするはずだ。
少子高齢化の中で雇用のあり方は変化しているものの、最前線から徐々に退いていく印象は拭いきれない。単に長く働くことができる職場ではなく、シニア世代になっても志のままに生きられる働き方は、未来を生きる世代の「今」をも変えるかもしれない。
※1, 3 The new creative class? Amsterdam agency recruits 70-somethings to tackle client briefs|TheTrendWatching
※2, 4 Stefans creatief bureau werkt met twaalf 70-plussers: ‘Binnen no time waren ze aan het prompten’|De Ondernemer
※5 中高生が思い描く将来についての意識調査2025|ソニー生命
【参照サイト】SENIOR CREATIVES (70+)|Tosti Creative
【参照サイト】The new creative class? Amsterdam agency recruits 70-somethings to tackle client briefs|TheTrendWatching
【参照サイト】Stefans creatief bureau werkt met twaalf 70-plussers: ‘Binnen no time waren ze aan het prompten’|De Ondernemer
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