子ども用「船型」点滴スタンドで、病院内をすいすい。グッドニュース5選【2026年9月】

2026.09.08

社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、図書館を音楽スタジオにする取り組みなどを紹介した。

日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。

愛に溢れた世界のグッドニュース5選

01.日々の小さな幸せを「木」に育てるアプリ

一日を振り返ってみると、「あれができなかった」「もっとこうすればよかった」ということはすぐに思い出せるのに、ランチがおいしかったことや、帰り道で好きな花を見つけたことなど、小さな「良かった」は、そのまま流されていってしまうこともあるだろう。そんな日々の「良かった」や小さな「いいな」を、目に見えるかたちで残してくれるのが、iPhoneアプリ「GOOD&NEW」だ。

GOOD&NEWでは、毎日の「良かったこと(GOOD)」と「新しい発見や気づき(NEW)」を記録すると、その積み重ねに合わせて自分だけの「Tree」が育っていく。30日・60日・100日の期間を選び、最後まで記録すると一本の木が完成。記録の長さやスコア、コメントの内容によって枝や実、花の形が変わり、一つひとつ異なる木が生まれる。

カレンダーでは月ごとの記録を色やスコアで振り返ることができ、完成した木や記録は動画やPDFでも残せる。さらに、友人同士でお互いの木を眺めたり、家族や仲間でグループをつくったりすることも可能。アプリを使ってTreeが育つ過程をSNSで共有する「G&N Tree完成チャレンジ」も行われている。

日記というと、「毎日書き続けなければ」と身構えてしまうこともある。だが、何気なく過ぎていく小さな出来事も、積み重なれば大きな木のようになっていくのだ。そう思えるだけで、自分の日常を見る目がほんの少し変わるかもしれない。

 

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【参照サイト】GOOD&NEW – 毎日の良かったことと発見を記録しよう – オン・ザ・ハンモック

02.低排出ゾーンの導入後、子どもの肺の成長スピードが回復

毎朝、学校へ向かう道。信号待ちをしている横を、車やバスが次々と通り過ぎていく。都市で暮らす子どもたちは、そんなごく普通の日常のなかで、排気ガスを含む空気を吸いながら成長している。目には見えにくいが、大気汚染は子どもの肺の発育にも影響を及ぼしてきた。

英国・ロンドンでは、排ガス基準を満たさない車両の流入を抑え、大気汚染を減らすための「超低排出ゾーン(ULEZ)」が導入されている。そこで研究チームは、ロンドンと、比較対象となるルートンの子どもたちを追跡。ULEZ導入前には、ロンドンの子どもたちの肺機能はルートンの子どもたちより低い状態にあった。

ところがULEZ導入後、ロンドンでは排気ガス由来の二酸化窒素への曝露がルートンより速く減少。それに伴って子どもたちの肺の成長も加速し、研究期間の終わりには、肺機能がルートンの子どもたちと同程度まで追いついた。また、臨床的に肺機能が低下しているとみなされる子どもの割合も減少している。研究チームは、大気の改善と子どもの肺の成長回復との間に強い関連が確認されたとしている。

子ども一人ひとりに「健康を守る行動」を求めるのではなく、都市の交通の仕組みを変えることで、毎日吸う空気そのものを変えた。健康を本人の努力だけに委ねず、暮らしている環境の側を変える。ULEZの結果は、そんな都市づくりが子どもの成長を支える可能性を示している。

【参照サイト】Introduction of London’s Ultra Low Emission Zone linked to improved lung growth in children(Queen Mary University of London)

03.花火のあとに残る「紙くず」を、水に溶ける素材へ

夜空いっぱいに花火が広がり、歓声が上がる。心躍るひとときだ。その翌朝、打ち上げ場所の近くの河川や田畑には、花火の外殻である「玉皮」の破片が落ちていることがある。丈夫なクラフト紙でできた玉皮は、自然のなかで分解されるまでに長い時間がかかる。華やかな一夜が終わったあとに、ごみの問題が残されていたのだ。

そこで株式会社柿木花火工業と龍谷大学の中沖隆彦教授が共同で開発したのが、「水溶性樹脂」を一部に使った新しい玉皮である。柿木花火工業は以前から生分解性プラスチックを使った玉皮など、環境負荷を抑える花火づくりを進めてきたが、それでも自然に分解されるまでには時間がかかっていた。今回は、さらに「水に溶ける」という性質を加えることで、打ち上げ後に残る破片そのものを減らそうとした。

打ち上げ実験では、落下した破片の大半が雨などの影響を受け、3〜4日ほどで溶解。最終的には跡形もなく自然に還ることが確認された。すでに本格的な製造・販売も始まり、北海道・洞爺湖での打ち上げ実績や官公庁関連案件での採用例があるほか、長浜や彦根など各地の花火大会での活用も進められている。

伝統をなくすのではなく、花火そのものをつくり変える。長く愛されてきた文化をこれからも楽しむための選択肢は、こんなところにも隠れているのかもしれない。

打ち上げ花火

【参照サイト】花火が環境負荷に? 龍谷大学と柿木花火工業が共同研究で解決を図る 水に溶けて自然に還る「花火の玉皮」の開発に成功(龍谷大学)

04.シンガポールに100カ所超の量り売り拠点を展開へ

洗剤がなくなったら、新しいボトルや詰め替えパックを買う。使い終われば、また容器が一つ増える。できれば繰り返し使いたいと思っていても、量り売りの店が遠かったり、値段が高かったりすれば、いつもの買い方に戻ってしまう。環境にいい選択ほど「ちょっと面倒」になってしまうと、日常に定着させるのは難しくなる。

シンガポールでは、政府が2030年までに国全体のリサイクル率を70%にする目標を掲げており、ごみになったものを処理するだけでなく、そもそも包装ごみを生み出さない仕組みも求められている。しかし、現実には家庭部門のリサイクル率が約11%で伸び悩んでいるという。

そこで家庭用品メーカーのLam Soonは、量り売り技術を手がけるスタートアップEcoworksに100万シンガポールドル(約1億3,000万円)を投資。2027年夏頃にかけて、大学キャンパスやコミュニティクラブ、コンドミニアムなど、人々が日常的に利用する場所へ100カ所以上の自動リフィル・ステーションを展開する。利用者は自宅から空の容器を持っていき、植物由来で生分解性の高い「bio-home」の衣類用洗剤や食器用洗剤などを必要な分だけ詰め替えられる。

さらに、容器や包装にかかるコストを抑えることで、一部の商品は通常の店頭価格より30%以上安く提供されるという。ここでは「環境のためだから、多少不便でも我慢すべき」から、「日常へ組み込まれたものを、ただ使う」という考え方への自然なシフトがうまれているのだ。

【参照サイト】Over 100 more refill stations for detergent, household products to open across S’pore(Mothership)

05.点滴スタンドを「小さなヨット」に。病院の廊下を冒険に変えるRingo

入院中の子どもたちは、点滴の際、大人用の高いスタンドを使うことが多い。長いチューブは絡まりやすく、足元のベースにつまずくこともある。それでも動きたい子どもがスタンドを引っ張ったりベースに乗ったりすれば、付き添う大人も気が抜けない。

そんな病院での移動を、子どもの身体と行動に合わせてデザインし直したのが「Ringo(リンゴ)」だ。韓国・弘益大学のウォン・ダビン、キム・ヒョンミン、ソ・ジェウの3人が手がけた、小児患者向けの移動型点滴スタンドである。子どもが座れる人間工学に基づいたシートや安定性を高める4つの車輪を備え、点滴のチューブも専用の溝に沿わせることで、足元で絡まりにくいよう工夫されている。

そして何より目を引くのが、ヨットを思わせるその姿だ。子どもが自分の船を操縦するような感覚で移動できるデザインは、病棟での移動を「小さな冒険」に変えることを目指している。Ringoは「iF Design Student Award」と「2025 Red Dot Design Award」を受賞し、子どもの安全だけでなく、想像力や移動の自由にも目を向けたデザインとして評価された。

Ringoが見せてくれるのは、「動き回る子どもをどう止めるか」ではなく、「子どもは動くもの」と考えて道具の側を変えるという発想だ。医療に必要な機能を守りながら、使う人に合わせて周囲の環境をつくり直す。その視点の転換が、病院で、子どもが子どもらしくいられる余地を生んでいるのだ。

Ringo

Image via Ringo

Ringo

Image via Ringo

【参照サイト】Ringo — IV Medical Product for Pediatric patients(iF Design)
【参照サイト】Ringo, IV Mobility for Pediatric Patients(Red Dot Design Award)

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この記事を書いたライター

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