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食糧危機

食糧危機

食糧危機とは?(What is food crisis)

「食料」は食べ物すべてのことをいい、「食糧」は世界で主食として用いられている米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモなどの穀物のことをいいます。食糧危機とは、それらが必要な量を満たせないほど減少してしまった状態のことをいいます。特に穀物自給率が29%のみで、穀物の7割以上を輸入に頼る日本では食糧危機は深刻な問題です。

世界人口は年々増加し、2050年には97億人へと増加すると予想されており、それに合わせて確保しなければならない食料も増大しています。

世界の穀物生産量は毎年26億トン以上であり、世界中の人が十分に食べられるだけの食糧は生産されています。それにもかかわらず、2021年には世界人口の11.7%にあたる8億2,800万人が飢餓や栄養不足に苦しんでいます。こうした世界の人口増加を背景に、今後飢餓人口が増えていくと予想される中、私たちはどのように対策していけばいいのでしょうか。

食糧危機がなぜ起こっているのか?数字と事実、原因、解決策などの情報をまとめました。

数字で見る食糧危機(Facts & Figures)

世界で進行している食糧危機の現状に関する数字と事実をまとめています。

食糧危機の状況
  • 2021年には世界人口の11.7%にあたる8億2,800万人が飢餓や栄養不足に苦しんでいる。これは2020年より4,600万人、2019年より1億5,000万人も増加(SOFI
  • 2015年以降、飢餓の影響を受ける人の割合は比較的横ばいに推移していたが、2020年に急増。(2019年の8%に対し、2020年は9.3%)その後も上昇を続け、2021年には世界人口の9.8%に達した(SOFI
  • 2020年、世界中で健康的な食事をとることができない人々の数は1億1,200万人増加し、ほぼ31億人に到達(SOFI
  • 推定4,500万人の5歳未満児が消耗症(最も命を落とす危険性が高い栄養不良の形態)に陥っており、子どもの死亡リスクを最大12倍まで高めている。(SOFI
  • 世界で1億4,900万人の5歳未満児が食事に含まれる必須栄養素が慢性的に不足していることが原因で、発育阻害に陥っている。一方で、3,900万人が肥満で健康を阻害であることがわかっている(SOFI
  • 世界全体で飢餓の影響を受けている人の数は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生してから1億5,000万人増加している(SOFI
  • 2021年には、食料不安の男女格差が拡大。世界全体で女性の31.9%が中度または重度の食料不安であるのに対し、男性は27.6%に留まり、4ポイント以上の格差があった(2020年の格差は3ポイント)(SOFI
  • 今後、たとえ世界経済の回復を考慮したとしても、2030年にも引き続き6億7,000万人近くが飢餓に直面すると予測されている(SOFI
  • 2022年3月、食料や燃料、輸送費の高騰により、国連の世界食糧計画(WFP)の毎月の経費は7,100万ドル増加すると予測。これは1年で総額8億5千万ドルになり、「WFPが支援できる人数が400万人減る」と推定(WFP
  • 小麦の輸出シェアはロシア産が19%、ウクライナ産が9%となっており、世界の小麦輸出の約3割を両国が占めている(国連食糧農業機関(FAO)
  • 食料価格は2022年2月から12.6%上昇し、3月には史上最高値を更新(国際通貨基金
  • WFPの世界全体の食料援助量は、2020年で年間約420万トン(WFP
  • 世界で食糧不足や飢餓で苦しむ人々がいる中、日本ではまだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」が570万トンある(農林水産省

食糧危機の原因(Causes)

食糧危機が起こっている原因は様々ですが、主な原因としては下記が挙げられます。

  1. 戦争・紛争
  2. 気候危機
  3. 新型コロナウイルス感染症の拡大
1.戦争・紛争

世界で飢えに苦しむ人々の6割は、戦争や暴力にさらされた地域で暮らしているといわれています。世界の主要な穀物である、油料種子と肥料の二大生産国を巻き込んでいるロシアによるウクライナ侵攻は、サプライチェーンを混乱させ、穀物や肥料、エネルギーの価格にさらに影響を与えています。

加えて、重度の栄養不良に苦しむ子どもたちのためのすぐに食べられる栄養治療食(RUTF)の価格を押し上げていることからも、紛争や戦争は飢餓の最大要因であるといわれています。

2.気候危機

気候危機は、人々が食糧を確保する力を奪っており、2020年には気候危機により世界中で3,000万人が家を失い、避難を強いられています。水不足や気温変化によって栽培状況が変化すると、農作物の収穫が不可能になります。

地球の平均気温が上昇することにより、穀物収量の増減や、畜産や養殖業における疾病発生、漁獲量への影響が指摘されています。さらに、エルニーニョなどの異常気象は、食料生産に大きな影響を及ぼしており、2015年には気候関連災害による経済的影響のおよそ25%が農業への影響でした。

2022年3月には小麦の生産量が世界第3位のインドを記録的な熱波が襲い、小麦の収穫量が大幅に減少。同国では小麦の輸出制限が課せられています。インドの気象局によると、2021年3月は過去12年で最も暖かい月だったといいます。

3. 新型コロナウイルス感染症の拡大

2020年4月、FAOは世界銀行などと共に、新型コロナのもたらす食料安全保障と栄養への影響に関する声明を発表しました。声明では、国内外での移動制限は、食料関連の物流サービスを妨げ、フードシステム全体に影響を及ぼしたとしています。

中国上海では「ゼロコロナ政策」によってロックダウン(都市封鎖)など強い規制を導入したことで、物流が滞り、中国内での食糧不足が深刻化しました。近々食料生産に重大な困難をもたらすことにより、最も貧しい国々に住む特に困難な状況にある人々を直撃するだろうと警告されています。

食糧危機を防ぐために、私達ができること(What We Can Do)

食糧危機を食い止めるために、私たちができることは何なのでしょうか?毎日の生活の中からでもできることは数多くあります。

  1. 世界の現状を知る
  2. 自分の身近にある食品ロスを見直す
  3. 食品ロスを減らすテクノロジー・フードシェアリングを使う
  4. 寄付やボランティアをする
  5. 肉中心の生活を改めて見直す
  6. フードマイレージを考え、できるだけ地産地消を取り入れる

2021年8月、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書によると、1850〜1900年以降の約1.1°Cの気温上昇は、人間活動による温室効果ガスの排出に起因しているとし、今後20年間で、平均すると世界の気温は1.5°C上昇に到達するか、または超えると予想されています。気候危機による食と農への影響を抑えるためには、各国が温室効果ガス削減を徹底し、地球温暖化を食い止めることが欠かせないでしょう。

世界で生産されている食料の3分の1にあたる13億トンが毎年廃棄されているという世界の食料供給のアンバランスが問題となる中、食料廃棄を処分するために排出される温室効果ガスはCO2換算で年間36億トンに達し、世界の排出量の約8%を占めています。こうしたことからも、食品ロスを防ぐことが大切です。

また、肉類の消費を減らすことで、温室効果ガスの削減に寄与します。肉生産は、飼料製造から輸送、流通等段階で多くのエネルギーを使い、家畜排せつ物からは温室効果ガスの一種であるメタンが排出されます。まずは週に数日、肉を食べない日を設定してみるなども、温室効果ガスを減らし、食糧危機の原因となる気候危機を防ぐ第一歩です。

世界の食糧危機、フードシステムのアンバランスを解決する3つのアクション

食糧危機に関する国際団体(Organization)

食糧危機への対策に関する国際的な団体としては下記が挙げられます。

食糧危機を解決するアイデアたち(Ideas for Good)

IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアで森林破壊の問題解決に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。

食糧危機に関連する記事の一覧

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【参照サイト】ユニセフ
【参照サイト】飢餓の大惨事
【参照サイト】戦争は食料危機を煽る | 国際通貨基金
【参照サイト】Double whammy for wheat growers! Early summers, heat wave conditions shrivel grain & reduce yield
【参照サイト】世界食料農業白書 2016年報告
【参照サイト】新型コロナウイルス感染症による食料安全保障と栄養への影響に関する共同声明
【参照サイト】世界食料農業白書 2016年報告

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