東大発、廃棄食材から作った「食べられるセメント」

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世界で生産されるすべての果物と野菜のほぼ半分が、毎年無駄になっている。

国連によると、毎年人間が消費するために生産される食品の約3分の1(約13億トン)が食べられずに廃棄されているという(※1)。特に果物と野菜は食料廃棄率が高く、全体の40〜50%にのぼる。

まだ食べられる食品が捨てられてしまうと、育てるために必要な水やエネルギー、労働力などすべてが無駄になるだけではない。処分するためにさらにコストがかかり、また焼却や埋め立ては環境負荷も大きい。そうした生産と廃棄を続けることは、温室効果ガスの排出につながり、地球温暖化や気候変動問題に直結する。

捨てられる食料を活用するサーキュラーフードなど、廃棄される食料の活用法に注目が集まるなか、東京大学発のベンチャー企業fabula(ファーブラ)は、捨てられる野菜などから「食べられるセメント」の開発に成功した。建材に活用できるほどの強度があり、プラスチックやコンクリートに代わる新素材として注目を集めている。

食べられるセメント

Image via fabula

新素材は、規格外の野菜やコーヒーかす、加工時にどうしてもでてしまう端材などを乾燥させ粉末状にし、粉末を熱圧縮することでセメントに代わる素材となる。素材ごとに乾燥方法や粉末の粒度、熱圧縮の温度を適切に調節することで、さまざまな食材からセメントを生み出すことを可能にした。さらには、複数の材料を混ぜ合わせて強度を高めたり、再成形をしたりもできるという。

これまでに柑橘系の皮や白菜、コンビニ弁当、抽出後の茶葉などから新素材を精製することに成功。食べ物と聞くと強度が心配かもしれないが、白菜の廃棄物で作った素材は厚さ5mmで30kgの荷重に耐えることができる。これはコンクリートの約4倍近い曲げ強度だ。

食べられるセメント

fabulaの新素材は建材などでの活用だけでなく、将来的には「食べる」ことも目指している。例えば、避難所のベッドを新素材で作って、物資の調達ができないときに食材として活用できるようにする。

食べ残しや廃棄されてしまう食材を完全にゼロにすることは、現在の社会のシステム上、不可能に等しい。ただ、その状況を逆手にとった今回のアイデアは食料廃棄問題に解決の糸口を見出すかもしれない。

さらに、建築に欠かせないセメントは、原材料のクリンカを精製する際に温室効果ガスを大量に排出し、世界の二酸化炭素の8%を占めるとされる(※2)

食品廃棄物から生まれたセメントが世界に広がれば、気候変動や地球温暖化抑止への大きな一手となるだろう。「食からセメントを生み出す」という創造的なアイデアのさらなる開発に期待したい。

※1 Worldwide food waste
※2 CO2大量排出のセメント産業、環境負荷を減らせるか

【参照サイト】fabula | ゴミから感動をつくる
Edited by Kimika

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