いつもの食材が、もう食べられなくなる?「最後の晩餐」体験イベント

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いま目の前にある食材が明日世界から消えるとしたら。普段の生活の中で、食糧危機を身近に感じる事が少ない私たちにとって、にわかには信じがたいことだ。しかし、コーヒーやワイン、チョコレートの原料であるカカオなど、普段よく目にする食材でさえも、気候変動などの影響で、近い将来消滅してしまう可能性がある。

2024年1月、アメリカのミネソタ州・ミネアポリスのレストランで、元ホワイトハウスシェフのサム・カス氏が、今後消滅する可能性のある食材を使ったコース料理を体験できる「最後の晩餐」イベントを開催した。驚いたことに、このイベントで出てくる料理は、決して希少で高級なものだけではない。

そのコースの一部を紹介しよう。

エビとサーモンのチップス、オールドベイとディルを添えて

近年、気候変動によって海水の温度が上昇しており、あらゆる種類の魚介類が生息場所を追われ、生態系にも影響を及ぼしている。これまで漁場内で獲れていたエビやサーモンなどが獲れなくなり、価格にも影響が出る事が予測されている。

ラム肉とお米、フェヌグリーク・コーヒー・赤ワインのソース

陸上動物は現在、生存において高いリスクにさらされているわけではないが、その動物たちの食糧となる小麦、トウモロコシ、大豆などの作物が安定供給できなくなることで、世界の食卓に影響が及ぶことが予想されている。また、ミネソタ州の主食の一つである米と、コーヒー、ワイン(葡萄)も、気候変動によって収穫が減少する可能性がある。

カス氏は、2015年に世界的な気候変動会議であるCOP21で初めてこのディナーのコンセプトを発表して以来、気候変動が農業、そして私たちの食卓に与える影響を知らせるために、こうしたイベントを続けている。

彼が気候変動を食い止める重要性を説明するときに、コーヒーを例に挙げている。コーヒー栽培には夜は涼しく日中は暖かい安定した気候が必要で、2050年までに地球の気温が2度上昇すると、コーヒー栽培地域の半分が栽培に適さなくなるそうだ。

言葉で伝えるよりも「明日もう食べられないかもしれない」──そう思って食事をする方が何倍もの説得力がある。食事は私たちに喜びを与えてくれるかけがえのないものだ。日々の食事に感謝し、私たちが置かれている現状を誰かに伝えること。カス氏は当たり前にある小さな幸せを少しでも長く守り続けていくために、私たちが今できることを考えるきっかけを提供し続けている。

【参照サイト】No more chocolate, coffee or wine? ‘Last supper’ shows stakes of climate crisis
【参照サイト】THE GREAT NORTHERN Sam Kass: The Last Supper
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