ブロックチェーンが実現する太陽光発電のシェアリングエコノミー

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オーストラリア西部の都市、パースとその周辺地域で、電力供給の未来を大きく変える可能性がある新たな実験が始まっている。

パースにあるスタートアップ企業のPower Ledgerは8月中旬、オーストラリア最大のブロックチェーン企業、Ledger Assetsと協力し、新たにブロックチェーン技術を用いて個人同士が自身の屋根に設置したソーラーパネルで発電した電力を自由に売買できる仕組みの実現に向けた8週間のトライアルを開始した。

今回トライアルに参加する15~20世帯は、ブロックチェーンの仕組みを活用して電力の使用量およびソーラーパネルを通じた発電量をトラッキングする。参加する世帯の中にはソーラーパネルを設置していない世帯も含まれる。

この実験により、参加世帯は自身が発電した電力をどの程度の価格で隣人に販売できるのか、電力グリッドに送電する場合よりもどの位高く販売できるのか、などがシミュレーションできる。

パースにあるカーティン大学のサステナビリティ政策機関でリサーチフェローを務め、Power Ledgerを率いるJemma Green氏によると、現在、パースおよびサウスウェストにある世帯の22%が自宅に太陽光パネルを設置しているという。

これらの世帯は現在、余剰電力を地元の電力会社に1キロワットあたり約6セントで売電するか、蓄電により自身で使用することが可能だが、逆に電力を購入する場合は1キロワットあたり約25セントを支払う必要がある。

しかし、今回実験する仕組みが実用化されれば、発電する世帯は今よりも高い価格で売電ができ、購入する世帯は今よりも安い価格で電力を調達することできる可能性があるのだ。

ソーラーパネルを通じて発電した電力をP2P(個人間)で自由に売買できるようになれば、電力を売買する仲介者のマージンがなくなり、販売側も購入側も得をするシステムが成立するというわけだ。

太陽光発電市場におけるブロックチェーン技術の活用については、世界中で新たな試みが始まりつつある。今年の5月には、米ナスダックが同社のブロックチェーン基盤「NASDAQ Linq」を用いて太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの電力を証券化した「電力証書」市場の活性化するというケースを公表した。

これは、太陽光パネルをIoTデバイス化し、NASDAQ Linqで提供されるAPIを介して発電された電力の電力証書をブロックチェーン上で証券化(トークン化)するという試みだ。

これらの取り組みは、再生可能エネルギー、Fin Tech(フィンテック)、シェアリングエコノミーという最先端のテクノロジーの融合により初めて生まれる大きなイノベーションだ。

あとは蓄電池のイノベーションがさらに加速し、世界中の世帯がより低価格でより多くの電力を蓄電できるようになれば、そこには全く新たな電力供給の秩序が生まれることになる。

Power Ledgerは今回の実験が成功すれば、次は来年の前半に西オーストラリアの港湾都市フレマントルで、二度目の実験を行う予定だ。次は80世帯へと規模を拡大し、蓄電池も含めたより実用的なトライアルとなる。

【参照サイト】Blockchain power trading platform to rival batteries
【参照サイト】Power Ledger

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