今、世界の名だたるテクノロジー企業や自動車メーカーらがこぞって実用化に向けた開発に取り組んでいるものがある。それは、人間のドライバーなしでも走行可能な自動運転車だ。
従来の自動車よりも効率的かつ安全な走行が可能とされる自動運転車だが、人間のドライバーと比べると、機械ならではの欠点もある。その一つが、歩行者や他のドライバーとコミュニケーションをとる力だ。
しかし、横断歩道で見かけた歩行者に対して先に渡るようにアイコンタクトを送ったり、対向車に先に道を譲ったりといった人間のドライバーが普段から無意識で行っているコミュニケーションは、実は安全な運転を実現する上でとても大事な役割を果たしている。
人のドライバーがやっているように、自動運転車も歩行者に対してコミュニケーションをとれないだろうか。そんなアイデアを基に生まれたのが、北欧スウェーデンで開発された「歩行者に向かって微笑む自動運転車」だ。
この自動運転車は、搭載したセンサーが歩行者の存在を前方に感知すると、ブレーキをかけて歩行者に対して前方のディスプレイで微笑みかける。その笑顔を見た歩行者は、安心して横断歩道を渡ることができる。
Semconの調査によると、横断歩道を渡るとき、歩行者の80%はドライバーに対してアイコンタクトを試みるという。自動運転車はアイコンタクトすることはできないが、その代わり歩行者に対してにっこり微笑むことで、「先に渡って大丈夫だよ」というメッセージを伝える。
下記の動画を見て頂ければ分かる通り、歩行者はドライバーとの意思疎通ができていないと感じると、大きな不安を覚えることが分かる。こうした不安を拭い去り、自動運転車が街中を走り回る時代に歩行者が安心して道路を横切れるようになるためには、機械と人との意思疎通が不可欠だ。
「笑顔」という慣れ親しんだ方法で意思疎通を試みるSemconのアイデアは、シンプルながらとても効果的なアプローチだと言える。ときには優れたテクノロジーよりもこうした人間らしいデザインが問題解決の近道となることを教えてくれる好事例だ。
Semconは、今回の微笑む自動運転車はまだ同社の研究開発の第一段階に過ぎず、今後もパートナー研究機関らと協働しながら自動運転車と周囲の人々とのコミュニケーション方法に関するグローバルスタンダードの確立に向けて取り組んでいくという。
世界の街中を自動運転車が自由に走り回る時代はもうそれほど遠くない。そのときに一番大事なことは、私たち人間がどれほど自動運転車を信頼できるかということだ。自動運転車との信頼関係を築くうえで、お互いに意思疎通ができることは大きな一歩となる。今後のSemcon社のさらなる取り組みに期待したいところだ。
【参照リリース】SELF-DRIVING CAR SMILES AT PEDESTRIANS
【参照サイト】Semcon Smiling Car