小さな島国である日本の通勤ラッシュは、海外の動画サイトなどでも時折話題になる。電車内に押し込められる人々の様子や、顔面が電車の窓に押しつぶされた様子などの投稿があるが、特に都内での通勤ラッシュは本当に「辛い」の一言に尽きる。
この通勤ラッシュを避けるために企業や人々は早朝出勤や午後出勤など様々な対策をしているが、米国は西海岸を代表する大都市のサンフランシスコでは、ゲーミフィケーションの考えを取り入れた実にユニークなサービスがはじまっている。
サンフランシスコを走る地下鉄のBART(ベイエリア高速鉄道)が通勤ラッシュの解消に向けて新たに始めたのは、ピーク時を外して電車に乗ればお金がもらえる「BART Perks」という取り組みだ。まずは、来年2月までの6か月限定で試験的に行われる。
サンフランシスコ州交通公社が運営するBARTは、通勤ラッシュの事前調査により、サンフランシスコへ通勤する人々の20%がテクノロジー関係の職種に就いており、就業時間がフレキシブルであること、また、それによりおよそ1200人の通勤者はラッシュ時を避けた乗車が可能であることを突き止めた。
この1日1200人という数は、電車10車両分の稼働に相当し、今回の施策が成功すれば、州政府にとっても大幅なコスト削減となる。このサービスは連邦道路管理局からの助成金によって実現可能となった。
BART Perksの会員登録をした乗客は、地下鉄に乗る度にポイントを獲得する。ポイント内容は、ラッシュ時を含めたボーナスタイム外と週末が1マイル毎に1ポイント。ボーナスタイムは月曜日から金曜日の朝6時半から7時半までと8時半から9時半までで、それぞれ個人が持っている会員プログラムの地位によって1マイル毎に3から6ポイントを獲得できる。
この地位はボーナスタイムに乗車した回数によりアップグレード可能となり、獲得したポイントはそのまま現金と交換することもできるが、さらにルーレットゲームに参加することもでき、ルーレットが当たれば最高100米ドルまでの現金が獲得できる仕組みになっている。また、毎月得たポイントはPaypalで振り込まれるというのも非常に便利な点だ。
このBARTのアイデアは、ピーク時を避けた時間に電車へ乗車することをゲーム感覚で楽しんで欲しいとの思いから生まれたものだ。まさにゲーミフィケーションの考えを取り入れた問題解決の好事例と言える。
同様のサービスが日本でも実施となれば、「ラッシュを避けたいから、しかたなく時間をずらす」というネガティブな発想から、「今日はラッシュを避けて、もらったポイントで美味しいコーヒーでも飲もうか!」とポジティブな気分で1日をスタートできる日が訪れるかもしれない。
【参照サイト】BART Perks
(※画像提供:Joshua Rainey Photography / Shutterstock.com)