保守的な親と、自由な社会のギャップ。悩み続けた移民二世がつくる「ゲーム」とは

Browse By

「手遅れになる前に、父と母のことをもっとよく知りたかったんです」

中国人の両親を持つジョセフ・ラムは、家庭とアメリカ社会との狭間で幼いころから思い悩んでいた。中国から移り住んだ両親の習慣やルールは、アメリカ文化とは相異なるもので、「アジア系」という理由から学校でいじめられることもあった。

違いを受け入れられず、悲しみや苦しみを自分で操れなかった彼は、その矛先を両親に向け、ひどい言葉を何度も浴びせた。そして、大学進学で親元を離れて以降、両親とは疎遠になっていった。

しかし、大学を卒業して仕事を始めた彼は、自分を愛してくれる唯一無二の存在を、利己的な理由から傷つけていたと罪悪感にさいなまれるようになる。そして2018年8月、「両親との関係を再構築しなければ、一生後悔する」と思い立ち、両親に手紙を書き、電話で想いの丈をぶつけた。

自分を育ててくれた感謝の気持ちを伝えるとともに、今までの言動を悔いていること、聞いたことがなかった両親の話をもっと知りたいと泣きながら伝えた。18分間の通話を「10年以上抱いていた罪悪感から、私はようやく自由になれた」と振り返っている。

そして、自分と同じように親との関係に悩む二世や若い世代が、関係を再構築するきっかけになってほしいと生み出したのが、移民家族のつながりを深める対話型カードゲーム「Parents Are Human」だ。子どもと親がカードにある質問を答え合うことで、壊れてしまった関係を修復したり、さらに絆を深めたりできるようデザインされている。

カードには、「ライフイベント」「知恵」「アイデンティティ」「リレーションシップ」「アクション」のカテゴリーがあり、50の質問と20の行動で構成されている。

たとえば、

  • 子どものころ、好きだった食べ物は?
  • 次の世代に残していきたい、あなたの人生の学びは?
  • あなたにいつも幸せをもたらしてくれたものは?
  • あなたが他の親たちにアドバイスできるとしたら?
  • お互いに10分で手紙を書いて交換しましょう

など、互いに持っている価値観を共有し、より深い会話が生まれるように工夫がなされている。

さらに、カードの片面は英語、もう片方は異なる言語を選べるため、親がもっとも理解できる母国語でゲームを楽しめる。中国語や韓国語、タガログ語、スペイン語などがあり、まだない言語のリクエストも可能。親とだけでなく、言語や文化が異なる恋人や友人、夫婦間でも活用できそうだ。

ジョセフの両親は、彼からの電話に「あなたが変わると言うなら、私たちも一緒に変わります。あなたをいつまでも愛しています」と、愛情あふれる言葉をかけてくれたそう。親も、人間。きっと彼らも、親としてどう接すべきか長く悩んでいたはずだ。

コロナ禍で、実家に帰省したり、顔を合わせたりする機会が減っている今だからこそ、カードゲームを通して、知らなかった親の経験や思い出話を聞いてみてはどうだろうか。親子の絆を深めるのに、遅すぎるということはないのだから。

【参照サイト】Parents Are Human
Edited by Kimika

FacebookTwitter