VR(Virtual Reality:仮想現実)の技術を活用し、患者の治療における心的負担を軽減する試みを始めた病院がある。
オーストラリアの医療施設、Chris O’Brien Lifehouseは、Samsung AustraliaとStart VRとの連携の下、VRヘッドセットの利用で患者のストレスを緩和するプロジェクトを開始した。Chris O’Brien Lifehouseは、最新技術の導入と妥協を許さない治療で知られ、年間4万人を超す患者を診療するがん専門医療センターだ。
化学療法の合間、患者は医療スタッフのサポートの下でVRヘッドセットを装着し、ベッドの上で多様なアクティビティを体験する。スカイダイビングに身を投じたり、シドニー・ハーバーにクルーザーで漕ぎ出したり、きらめく海でシュノーケリングを楽しんだり、動物園でコアラと触れ合ったりと、選択できるコンテンツは多岐にわたる。
「化学療法という体験から抜け出すことで、患者は少しの間でも現状を忘れることができる」と話すのは、Chris O’Brien Lifehouseのセラピー・ディレクター、Michael Marthick氏だ。例えば手術の前には不安がつのりがちだが、このVR体験が気晴らしとなり、患者は元気を取り戻すことができるという。
Start VRのコンテンツ部門責任者を務めるMartin Taylor氏は「魅力あるVRコンテンツとイニシアチブを生み出し、利用者の実生活にポジティブな影響を与えていくこと」をチームの一番の目標に掲げる。患者の一人は、「その場に座って見ているだけで、別の文化に触れることや、別の場所での体験を味わうことができる。素晴らしい」とVRの技術に感嘆する。その様子は、StartVRのサイトでも公開されている。
圧倒的な没入感とコンテンツへの共感を体験者にもたらすVRの力。商品の原産地を示すプロモーション映像や、環境問題への注意を促す映像など、その利用シーンは広がりを見せている。今回の医療環境における試みが新たな境地となり、さらなる活用が促されることに期待する。
【参照サイト】Start VR Introduces Virtual Reality to Chemotherapy Patient Program at Chris O’Brien Lifehouse
【参照サイト】LIFEHOUSE VR TREATMENT TRIAL
(※画像提供:Samsung Newsroomより)