サッカースタジアムを住居に。ビッグイベントがもたらす正のレガシー

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国際的なイベントの開催においても「サステナビリティ」が問われる昨今では、オリンピックのようなビッグイベントを開催した都市が、その盛り上がりを一過性で終わらせずにいかに正のレガシーを残していけるかが主要なテーマの一つとなっている。2012年のオリンピック開催をきっかけに見事に都市を再開発したロンドンの例は記憶に新しい。

2020年に東京五輪・パラリンピックを迎える日本でも、同じテーマが問われることになる。会場の建設費用がかかりすぎるとして東京都知事や国際オリンピック委員会がすったもんだしていたことがあったが、課題は大会前だけではなくその後も続くのだ。

そこで、今回は2014年にワールドカップが開催されたブラジルの例をご紹介したい。ブラジルでも日本と同様に大会のために新設された会場の建設費や維持費の高さが指摘され、その有効な使い道が検討されていた。巨大な牢屋として使うといったユニークなアイデアもあったが、なかでも一際注目を集めたのはサッカースタジアムを住居に変えるという案だ。

建築家のSylvain MacauxとAxel de Stampaが提案したのは、スタジアムの空いているスペースに箱状の住居をたくさん設置して、スタジアムを丸ごと集合住宅にしてしまうという斬新なプランだ。ブラジルではワールドカップの影響で17万世帯もの人々が立ち退いたと推測されており、住居不足の問題を解決する一助になるのではないかと考え出された。

スタジアムの中に住むというのはなかなかイメージしづらいが、サッカーファンはむしろ喜ぶのではないかと発案者は語る。そこはさすがのお国柄、といったところだろうか。ブラジル国民のサッカー熱を考えれば、日本人が思うほど違和感はないのかもしれない。

この案はあくまでもコンセプトだが、ワールドカップのレガシーとして住居不足という社会的課題を解決しようとした意欲作だ。ブラジルと日本とでは人口増加率なども異なるためまったく同じ案を練る必要もないし、そもそもスタジアムが住居としての建築構造上どうなのかといった課題もあるが、その発想の柔軟さやアプローチの仕方は3年後にオリンピックを迎える我々にとっても参考になりそうだ。

【参照サイト】1 week 1 project “Casa Futebol”
(※画像:Fast Companyより引用)

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