シドニーから北へ約800㎞に位置するオーストラリアの最東端バイロンベイという街に、100%太陽電池で動く世界初の電車が登場した。バイロンベイは美しい海岸をもち、ダイバーやサーファーに人気がある人口約5,000人のリゾート地だ。街の名前は18世紀のイギリス人世界航海士であるジョンバイロンにちなんでつけられた。
この世界初の100%太陽電池で動く電車を運営するのはNPO団体のByron Bay Railroad Companyだ。Byron Bay Railroad Companyは地元住民と旅行者が公共交通手段として利用できるように1949 年製の車両2両と3㎞の線路、および橋を修復した。この車両はもともと、第二次世界大戦後にやってきた多くのヨーロッパからの移民輸送用として製造されたものだ。
今回開発された太陽電池の電車は、片道3㎞を10分間で走行する。車両内にはリゾート地という土地柄を考慮して、荷物や自転車、サーフボードを置けるスペースがある。座席は100席だが、立ったままの乗車も可能だ。片道料金は大人3オーストラリアドル、13歳までの子供2ドル、5歳未満は無料とリーズナブルで、自転車の持ち込みも無料だ。そして、すべての収益はこの団体が所有する鉄道に再投資される。
100%太陽電池で動く電車の仕組みは以下の通りだ。電車の屋根と電車保管庫に設置されたソーラーパネルで電車操業に必要なエネルギーを発電し、電車に搭載されたバッテリーバンクに充電する。また、走行時に駅でチャージもできる。このバッテリーバンクは1回の充電で12~15回の走行に十分な電力を充電できる。さらに、ブレーキをかける度に消費されたエネルギーの25%を再生する再生式ブレーキシステムも採用している。これにより、電車内の電気、牽引、回線管理、空気圧縮機など全てをバッテリーパワーで行うことが可能になった。
当初、Byron Bay Railroad Companyは太陽電池システムに移行する前にディーゼルエンジンの電車を計画していたが、太陽電池の近年の目覚ましい技術革新により、太陽電池で動く電車の開発が可能になった。しかしながら、この電車は重さとバランス調整のためにディーゼルエンジンを1つ搭載している。このディーゼルエンジンは電気システムに欠陥が生じた時のための緊急バックアップにもなっているが、太陽が出ていない時を含めて通常使用されることはない。太陽が出ていない時は、地元のエネルギー会社から高圧送電で100%グリーンエネルギーが搭載バッテリーに充電される。また、騒音が最小限であるのも注目すべき点だ。低速かつ電気を使って走行するため、通常の電車と比べてとても静かなのだ。
オーストラリアの太陽が降り注ぐ、歴史のある美しい街に誕生した100%太陽電池で動く電車。この街の歴史を刻んできた車両と線路を再利用し、最新の太陽電池技術を取り入れた世界初の試みのこれからに期待したい。
【参照サイト】Byron Bay Railroad Company
(※画像提供:Byron Bay Railroad Company)