多くの人が安全な水を飲めるように。汚染水から飲み水を作り出すポリマーマット

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アメリカ・テキサス州にある、ライス大学およびナノテクノロジー飲料処理センター(NEWT)研究チームが、水から汚染物質を除去するポリマーマットを開発した。廃水を使った実験により、このマットが他の浄水技術よりも少ないエネルギーで水をきれいにできることが証明されており、飲料水処理にも適用できるという。

現在、世界人口の1/3に当たる約20億人もの人が、清潔で安全な水を確保できていない状況にある。この問題に対し、各国の研究チームが、安全な水の確保に向けた研究を日々行っている。IDEAS FOR GOODでも、空気中の水分を飲料水に変えるパネル海水も飲めるようにする大豆油生まれの浄水フィルターなどをご紹介してきた。

今回、アメリカの研究チームが開発した浄水技術では、マットを使って2つのステップで浄水を行う。まず、マットに含まれる酸化チタンが汚染物質を捕まえる。そして、汚染物質を光にさらすことで分解し、破壊するのだ。

とはいえ、酸化チタンはすでに既存の廃水処理システムで使われることもある。酸化チタンを廃水と結合させて、固体粒子が液体中に分散した「懸濁液(けんだくえき)」にし、紫外線をあてて汚染物質を破壊したあと、懸濁液を水からろ過するといった仕組みだ。

研究チームは、この既存のプロセスを単純化した。ビニロン(ポリビニルアルコール繊維)でできたマットに小さなプラスチックビーズを加え、多数の細かい穴のあいた多孔性にすることがポイントである。気孔は表面積が大きく、酸化チタン粒子が多く付着するため、結果的に浄水処理速度を上げているのだ。

また、マット自体が水と混ざりにくい素材でできているため、同じく水に溶けにくい汚染物を引き付けている。

汚染水からつくりだすポリマーマット

Image via Courtesy of Rice University and NEWT

「現在の懸濁液による光化学触媒の廃水処理には2つの短所がある。」と、ライス大学の環境エンジニアであり、NEWTの所長でもある Pedro Alvarez氏は述べる。

1つは、非効率的だということだ。水に懸濁物が多くあると光が届きにくくなり、すべての汚染物質が完全に分解されないこともある。もう1つは、懸濁液の光触媒を分離し、一度処理した水への漏れを防ぐのに莫大なコストがかかることである。維持費もばかにならない。

Alvarez氏はこう続ける。「我々は触媒を固定して維持を容易にすることで、この2つの短所を解決したのだ。新たに開発した浄水用マットでは、汚染物質がマットの外に漏れることはない。たった2つのステップで水をきれいにできる。これは、懸濁液では不可能だ。」

このほかにも、このマットはさまざまな利点がある。取り除く汚染物質が水に溶けやすいかどうかによって、マットの親水性も変化させ、浄化の効果を高めることができるのだ。エネルギーだけではなく浄水スペースも削減でき、マットを洗って再利用することも可能である。

今回、発表された酸化チタンを使った浄水技術。清潔で安全な水を確保を目標に、これまでとは異なる視点での新たな技術が開発された。今後のさらなる研究が期待される。

【参照サイト】Mat baits,hooks and destroys pollutants in water
(※画像:Rice Universityより引用)

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