マクドナルドといえば、世界を席巻するファストフードチェーンの帝王だ。世界中で量産し莫大な富を生むハンバーガー、フライドポテトにナゲット。これらの商品を支えているのはグローバルなサプライチェーンであり、強固なビジネスモデルであり、そして何より家畜である。
あらゆるビジネスに持続可能性を求める強い圧力が掛かる中、ファストフード業界が強い逆風を受けていることは間違いない。安価で大量生産するビジネスと、持続可能性というアイデアの相性は一見悪いように思われる。しかし、その中でマクドナルドは常に改善を続けてきたことも事実だ。
これまで同社は科学に基づく温暖化ガス排出削減のためのさまざまな取り組みを行ってきた。現在も2030年までに36%もの温暖化ガスを減らすために、プラスチックではなく紙でできた再生可能なストローの利用を進め、畜産におけるガス排出量を減らし、店舗でのエネルギー効率の改善にも取り組んでいる。
一方で、現代のビジネスに求められるエシカルさは、そのような環境の側面だけには留まらない。
最近、ニューヨーク・タイムズに1ページ丸ごとマクドナルドに向けた広告が載せられた。6つの動物愛護団体が連名で「毎年何百万羽の鶏が、マクドナルドのナゲットとサンドウィッチになるためだけに産まれ、育てられている。私たちは貴社のサプライチェーンにおける鶏の福祉について懸念している。」と直接的なメッセージを掲載したのだ。
マクドナルドはそれに呼応するように、鶏の福祉のための協議会「Chicken Sustainability Adocisory Council」を立ち上げた。この協議会は、サプライヤーはもちろん、研究者や動物福祉に関わるNPOなど複数の団体が参画し、鶏の生産過程における痛みやストレスを最小限に抑えるようサプライチェーンの改善に取り組むことを目的としている。
プロジェクトに関わるBlokhuis氏は「動物福祉に関わるさまざまな調査結果を統合し、鶏の福祉の質について検討していきます。福祉の質とは、動物の目線で考える福祉評価のことで、近年欧州で活発に議論されています。マクドナルドのような大企業がこれに着目して改善に取り組むことは非常に大きなインパクトを生むはずです」と述べている。
同社はさらにテクノロジー企業とも提携し、生産者やサプライヤーカメラモニタリングシステムを開発支援する。ただ行動するだけではなく、実際に動物福祉の改善がされたかどうかを計測するために必要だからだ。
持続可能な社会といっても、中に虐げられる存在がいるのでは真の意味で持続可能とは呼べない。高い水準を求められる企業にとっては簡単なことではないが、これからの社会では環境への配慮はもちろん、ビジネスに関わるさまざまな動物の福祉への配慮もまた当然の責任として求められるのだ。
【参照サイト】Animal Health and Welfare