美しい南の島モルディブの海の上で、太陽光発電が始まった。
太陽光発電はクリーンエネルギーの最たるもので、今後のさらなる開発が期待されている。しかし、太陽光発電には、ソーラーパネルを設置する場所が必要で、モルディブのような小さな島国に大規模なパネル設置場所を確保するのは困難だ。
そこで、オーストリアの会社Swimsolは、島の周りに広がる雄大な海に注目する。同社はウィーン工科大学と共同で、4年間にも渡るコンピューターシミュレーションや実験などを行い、海の上で発電できるソーラーパネル技術を開発した。
以前、IDEAS FOR GOODでは、オランダの海の上の太陽光発電所の建設プロジェクトをご紹介した。海に面した小さな国オランダでの当プロジェクトの目的は、国土面積が限られた中で、再生エネルギー供給量を増やすということであった。
北海に面した肌寒いオランダに比べて、太陽がさんさんと照りつけるモルディブでの太陽光発電は理想的なエネルギー源であり、海の上はパネル設置に最適な場所のようにみえる。しかし実際は、熱帯の海という環境下で、電気機器を取り扱うのは容易ではないという。そのため、Swimsolは熱帯の海に合わせて、高品質で効率のいい素材を用い、最良のシステムを構築した。
Swimsolが開発した、特許申請中の海の上のソーラーパネル設備「SolarSea」は、1つのプラットフォームで25世帯の電力量を賄う。耐久年数は30年で、波や潮流、極端紫外線、および湿度に強く、錆止めが施されている。さらに、このソーラーパネルは、同じ場所の陸上の屋根に設置されたソーラーパネルよりも5~10%高い発電量をもつ。これは、水による冷却効果と水表面の反射によるものだ。
そして、SolarSeaで発電する電気は、これまでよりも50%以上安いという。電気を安価に提供できる理由の1つは、Swimsolが既存のグリッド電気を分析し、ディーゼルとソーラーのハイブリッドシステムを設計したことだ。
これにより、ディーゼル発電機の効率を持ちつつ、太陽が出ている時間には発電機をオフにして節電し、安定した電力供給ができるのだ。また、Swimsolはプラットフォームの組立て、インストール、観察、システムメンテナンスまでを顧客と一緒に行っている。
モルディブの海で始まった太陽光発電。限られた土地の中で再生エネルギー供給量を増やし、電気代をより安価にしていくという、小さな島のクリーンエネルギーへの挑戦だ。島の人々の思い、研究者の思いが、島の生活に新たな豊かさをもたらしていく。