石油大手シェル、自社製品の石油からのシフトでどこに向かうのか?

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たとえば肉屋さんが、家畜を育てることは環境に悪いからといって、肉を売らなくなったら何屋さんになるのだろうか。肉屋としてのアイデンティティはどこへ行ってしまうのだろう。そこと同じ疑問が、今エネルギー業界で起ころうとしている。

世界有数の石油関連企業であるシェル(正式名称はロイヤルダッチシェル)は、2070年までに自社製品である石油の使用量を次第に減らすというシナリオを発表した。その名はSky Scenarioで、電気自動車のシェア拡大や二酸化炭素回収貯蔵(CCS)施設の発展、現在の石油から水素などの代替エネルギーへ移り変わることを見越しての予想である。

シェルのガソリンスタンドと車

SkyScenarioは「気温の上昇を2℃以下に抑える」というパリ協定の具体的な到達目標の一つを達成する想定で作成されている。

そこでは、2070年にはグローバル規模で二酸化炭素排出量ゼロを目指している。これを達成するためには、現在行っている環境対策法や、いわゆるエコ税、再生可能エネルギーの導入サポートなどに関する取り組みを少し拡大するだけでは不十分だ。各国政府が積極的に不足しているテクノロジーやイノベーションをサポートすることが必要なのである。

このシナリオによると、世界の石油消費量は、2025年にピークを迎え、その後は減少するという。さらに、2040年には現在よりも消費量が削減される予想だ。

また、天然ガスの主原料である液体炭化水素燃料は、2020年から2050年にかけて使用が半減するとされ、70年には90%減が見込まれる。これに伴って、原子力発電は3倍、そして総電力使用量は5倍になるとされる。そして世界はCCSにより依存すると考えられる。

水素自動車

シェルはこのような予測に基いて、合理的な行動を取り始めている。将来、自社製品の石油では経営が難しくなることを見込んで、代替エネルギー事業などへの投資を開始しているのだ。

昨年10月には、NewMotionという電気自動車の充電スポットを展開する企業に投資した。また、米国やヨーロッパで小規模ながら、水素自動車のチャージ場所の運営を開始したり、CCS事業に大きく関わったりしている。

今回のシェルの例は、現代社会の問題を解決するために、必要な行動であると同時に、自社が長年販売してきた石油という商品から少しずつ代替エネルギーなどに転換していくという大きなリスクのある決断であるといえる。しかし、自社の将来を守りつつ地球規模での問題を解決するためには、このような合理的でありながら、勇気ある判断が必要だ。

【参照サイト】Shell Sky Scenario
【参照サイト】Shell — yes, that Shell — just outlined a radical scenario for what it would take to halt climate change
(※画像:Shutter Stockより引用)

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