インドネシアが、「ゴミ問題」に揺れている。この国は、世界最大の島嶼国(とうしょこく:大陸から距離が離れた島々で構成され、開発上困難を有する発展途上国)だ。それ故に、ある島で海上投棄されたゴミが他の島に流れ着くという問題も発生している。そして何より、「ゴミをゴミ箱に捨てる」という概念が成熟していない。
紙でもプラスチックでも、土に捨てれば自然と分解されるだろう。残念ながら、国民の大半はその程度の認識に留まっているのが現実だ。さて、インドネシアでは今『Go-Jek』というサービスが急成長している。東南アジアで盛んなバイクタクシーを、スマートフォンのアプリで呼び出すというものだ。Uberの二輪車版、と表現すれば分かりやすいだろうか。
当初はひとつのベンチャー企業に過ぎなかったGo-Jekは、今やASEAN地域を代表するユニコーン企業に成長した。最近では独自の電子サービス『Go-Pay』も展開している。慢性的な小銭不足に悩むインドネシアでは、フィンテックの成長が国民から熱望されているのだ。今年4月から、Go-Jekはこんなキャンペーンを打ち出した。「#TrashForCash」と韻を踏んだハッシュタグで、国民にペットボトルの回収を呼びかけている。
330mlのボトルは30ルピア、1200mlは70ルピアで引き取るというキャンペーンの内容だ。それをGo-Payの残高に充当させるのである。ちなみに、1000ルピアは約8円。1回につき最低5000ルピア分以上のペットボトルを持ってくるのが条件で、これにより市民が進んでペットボトルの回収を行うシステムを構築しようというのが主催者の狙いだ。今年10月までの毎月25~30日が回収受付日である。
今の時点では、半年限定のキャンペーンである。しかしプロジェクトの進捗状況に応じて、これが恒久的な取り組みに昇格する可能性は十分にある。
インドネシアに限らず、新興国の国民は銀行口座を所有していない場合が多い。デビットカードやクレジットカードも当然持っていない。「なぜ銀行が儲かるのか」という金融の基礎知識が浸透していないし、銀行としてもワーキングクラス以下の市民に口座を持たせたがらないのだ。
電子マネーの需要は、こうしたところから生まれる。そしてその新しい技術が、長年国を蝕んできた環境問題を改善しようとしているのだ。