約7,600の島々で構成され、そのうち約2,000の島で人が暮らす国、フィリピン。そんなフィリピンのある島が、廃棄物の削減に積極的に取り組んでいる。
フィリピンの廃棄物の状況は、どのようなものだろうか。2010年には、同国全体で約1,348万トンの廃棄物が発生したという。(※1)また、世界銀行の2021年の報告書によると、同国では年間270万トンのプラスチック廃棄物が発生し、そのうち20%が海に流れているという。(※2)特に沿岸地域に暮らす人にしてみると、海洋ごみの増加が漁業や観光業などに及ぼす影響は、大きな心配の種だ。
こういった廃棄物処理の課題がある中、国際環境NGOネットワークの「Global Alliance for Incinerator Alternatives(GAIA)」は、2021年9月、アポ島がフィリピンで初めてゼロ・ウェイストの島になったと発表した。アポ島には約1,000人が暮らしており、彼らが1年間ゼロ・ウェイストの取り組みを継続した結果、”ゼロ・ウェイスト島”として認定されたのだ。
2020年にゼロ・ウェイストの取り組みを始めたアポ島は、現地NGOなどの力を借りながら、廃棄物を管理する仕組みを導入した。これには、住民へのごみの分別方法の周知、ごみの分別収集システムの構築、堆肥化の実施、資源回収施設(MRF)の設置、廃棄物評価などに関するトレーニングが含まれる。
こういった活動の結果、2021年9月時点で、島には4つの資源回収施設が設置され、7人の廃棄物作業員が働いているという。また、使い捨てプラスチックの使用を規制する条例が制定され、住民はペットボトルなどリサイクルできるものを捨てる前に、中を洗って水を切る習慣が身に付いたそうだ。
ゼロ・ウェイストを目指すにあたって、島ならではの困難に直面することもあったという。住民が海岸をきれいにしていても、風や波の影響で、近隣地域のごみが海岸に流れ着くことがあるのだ。海はつながっているからこそ、一人一人がごみ捨てのマナーを守ることが大切だ。
ごみ問題と向き合うアポ島の挑戦は、今後も続く。今年中にはゼロ・ウェイスト店舗やゼロ・ウェイスト小学校を誕生させることを目指しており、廃棄された衣類を活用した女性の生計向上プロジェクトにも力を入れるという。
ダイビングスポットとして知られるアポ島の美しい景観を守るためにも、こういったごみ対策が続いていくといい。
※1 世界の廃棄物事情(JICA)
※2 Philippines: Plastics Circularity Opportunities Report
【参照サイト】 zero waste island Archives – GAIA
Edited by Erika Tomiyama