波の力を安価でシンプルに電力に変える装置、英エディンバラ大学が開発

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英エディンバラ大学が、波の力を複雑なシステムなしで安価に電力に変える装置を開発した。この装置を使うと、数千の家庭に低コストで電気を供給できるという。

いま世界では、気候変動問題への対策として再生可能エネルギーの開発が進められており、私たちの大切な資源である広大な海を利用した発電方法が注目されつつある。海上風力発電をはじめ、オランダモルディブなどの地域では、海上での太陽光発電も始まっている。また、2021年にはフランス北西部の海上で欧州最大となる波力発電所の建設が開始される予定だ。

今回開発された装置は、「誘電エラストマー発電機(DEG)」として知られ、柔軟で耐久性のあるゴム膜でできている。誘電エラストマーとは、二枚の電極に挟まれている柔らかいコンデンサ(電荷を蓄えたり、放出したりできる蓄電器)のことだ。装置の形は管状で、写真のように垂直に設置して使用する。

波が来ると、内部に入った水が閉じ込められた空気を押し上げ、デバイスの上の膜が膨張・収縮をして電気を生み出す仕組みだ。

波力エネルギー

(c)Universities of Trento, Bologna and Edinburgh and Scuola Superiore Sant’Anna Pisa

研究チームは、この装置を直径25mの円形タンクに設置して、波と海流をシミュレーションしたテストを実施。その結果、1台の実物大の装置で約100戸の住宅の電力に相当する500kWの電力を生み出すことが確認された。

複雑な構造の空気タービンや、高価な可動部品が必要だった従来の装置のかわりに、この装置を何十年かの間に波力発電システムに使用できると、研究者らはみている。

当研究は、 トロント大学、ボローニャ大学、サンターナ大学院大学と共同で行われ、王立学会誌で発表された。研究とイノベーションを促進するEU最大規模のプログラムである欧州連合Horizon 2020プログラムと、Wave Energy Scotland (WES)が支援している。WESは、波のエネルギー技術促進のためにスコットランド政府が設立した技術開発機関だ。

「波エネルギーは、スコットランドの貴重な潜在的資源だ。波力発電システムの開発は、将来のクリーンエネルギー生産における重要な役割を果たすだろう。」と、エディンバラ大学のデイヴィッド教授は語っている。

地球の大部分を占める海の波を利用して、安価でシンプルに電力に変える装置。今後の開発が期待される。

【参照サイト】Device could deliver wave energy to thousands
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(※画像はResearchGateより引用)

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