ビッグデータの力で動物実験をなくせるのか。機械学習で有毒性を予測するという論文発表

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化学物質が人体にどう作用するか調べるために、毎年数百万匹もの動物を使用する動物実験。人が安全に商品やサービスを利用するための必要な犠牲とはいえ、見開いた目に薬を入れられるうさぎや致死量を調べるために薬を投与されるねずみのことを知ると、やはりかわいそうに思えてくる。動物実験の数をできる限り減らせる代替案はないのだろうか。

最近有力な代替案として期待されているのが、機械学習ソフトウェアを用いて化学物質の有毒性を予測するという方法だ。ビッグデータの力で動物実験に匹敵する、いやそれをもしのぐ精度で有毒性を調べられないか研究が進められている。

7月11日、毒性学者のThomas Hartung氏ら研究チームが、数万種類もの化学物質の有毒性を予測するアルゴリズムを構築したとする論文を発表した。これは9種類の健康被害について調べた研究で、今までに発表されたコンピューターモデルよりはるかに網羅的であるとして注目を集めている。

産業界や学界では、有毒性を予測するためにコンピューターモデルを使うことは数十年前からおこなわれてきたという。物質の化学構造やすでに把握できている人体への作用などを、モデルに組み込んで使用するのが典型的だ。

未試験物質の有毒性を類似物質のデータと照らし合わせて推測する「リードアクロス」という手法もあるが、規制当局はこういった手法を認めるのに高いハードルを設定しており、代わりに動物実験を求めることが多いとHartung氏ら毒性学者は語る。

Hartung氏らのソフトウェアは上記のリードアクロスを使用しており、実質的には、毒性学者が新しい化学物質を評価する手順を自動化したソフトウェアだといえる。ビッグデータの新たな可能性を示す研究として関心を集めているが、政府当局がこういったコンピューターモデルを動物実験の代わりとして認めるのには、まだ長い年月がかかるともいわれている。たとえば、ある物質が癌を引き起こすのか、生殖能力に影響を及ぼすのか、といった複雑な調査では動物実験を置き換えるのがより一層難しくなる。

今回の件で動物実験が全面廃止になると喜ぶのは時期尚早だ、しかし、機械学習アルゴリズムの開発に取り組む研究者や企業のなかでいち早く論文を発表したことで、動物実験廃止への大きな一歩は踏み出せた。これからも実験に使われる動物たちに「悪いなぁ」という気持ちを持ちつつ、廃止に向けたベクトルが働いていくことを願いたい。

【参照サイト】Machine learning of toxicological big data enables read-across structure activity relationships (RASAR) outperforming animal test reproducibility