コインランドリーと言えば、ワンルームの一人暮らしや寮生活等で、洗濯機のない人々の強い味方だ。最近ではシャワーを併設する等、サービスも多様化している。そんなコインランドリーの利用法について、思いもよらぬようなアイデアが考案された。
イスラエルのエルサレムにあるベツァルエル美術デザイン学院の産業デザイン科の学生、エフタ・ガジットがデザインしたのは、洗濯機で洗濯物を洗う際に、一緒に食べ物を調理することができるというものだ。
Gazitは、魚やステーキ、野菜のような食べ物を石鹸や汚れた水が浸み込むことなく調理するための真空バッグ「Sous La Vie」を開発。これあまりにも意外で信じがたいが、実際のコンセプトは、かなりシンプルだ。
食品を真空密封された袋に入れ、温度制御されたお湯で食べ物を調理するというプロセスを応用する。 衣服ももちろん一緒に洗えるが、このバッグは防水素材(タイベックシートとビニール袋)で作られているため、水や衣服の汚れが食べ物に混入してしまうことはない。
これはガジットが、ランドリーで使われる洗濯機が、真空調理法に似ていることに気が付いたことから生まれたアイデアだ。肉など長時間の加熱を必要とするものを調理したい場合は、洗濯機を“合成(またはポリエステル)”に設定する。野菜であれば、“コットン”の設定で調理することが出来る。
一見バカバカしいおふざけの様だが、ガジッドには非常に真剣で確固たるインスピレーションがある。彼は、とあるホームレスのブロガーが「洗濯をしたり、水筒に水を入れたり、コンセントで携帯等の電子機器を充電したり、トイレを使用したり、インターネットを使用したりできるので、コインランドリーは非常に便利な場所だ」と説明しているのを目にした。
コインランドリーは24時間営業で年中無休の場合も多く、見方によっては、いつでも行けるサービスステーションのようなものだ。ホームレスの人々は、自宅がないため当然ながらキッチンで料理をすることもできない。
ガジットの開発する真空バッグは、コインランドリーで洗濯物をする間に、その排熱を利用して食事を料理することが出来るため、調理に余分な光熱費を必要としない。「“洗濯機ディナー”はホームレスだけを対象としたものではなく、味、経済性、文化を反映したプロダクトです。」とガジットは語る。栄養価等の表示に、衣類に用いるラベルを用いているちょっとした遊び心は、さすがデザイン学院の学生だ。
凍てついた路上で冷えた食事をとるホームレスや、調理に時間や労力を費やすのが惜しい一人暮らしの学生等にとって、一石二鳥のこの洗濯クッキングは、経済的でエコでもあり、なにより非常に便利だ。道行く人々が、コインランドリーでこのSous La Vieを食する人々を見かけた際には、意表を突かれ顔もほころぶことだろう。
【参照サイト】Sous La Vie (Under Life): vacuum-cooking in washing machines