イランにできた土と砂の家。貧困に苦しむ住民と、観光客を結び付けるコミュニティハブへ

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ペルシャ湾に位置するイランのホルムズ島。海岸からすぐ傍に、一際目を引くドーム型のカラフルな施設ができた。

Majara(ペルシア語で“冒険”を意味する)と名付けられたこの多目的の住宅施設は、島を訪れる旅行者をさらに惹きつけるとともに、地元の人々の生活をより経済的、文化的に豊かにすることを目的に作られた。

ドーム型のカラフルな住宅

Image via Tahmineh Monzavi, Soroush Majidi, Payman Barkhordari

半分以上のドームが住宅で、他にレストラン、カフェ、サロン、手芸品店、観光案内所、浄水施設などの機能を併せ持っている。建物のデザインと色合いはさることながら、他の建物や植物が施設周辺にほとんど見当たらない全景は、まるでファンタジーの世界だ。

これはイランの建築事務所ZAV Architectsが手がけており、以前にIDEAS FOR GOODで紹介した「SuperAdobe(スーパーアドビ)」と呼ばれる、土や砂を突き固めてドームを作る建築技術が用いられている。材料と建設工程は驚くほどシンプルなのにもかかわらず、ドームは何百年に渡って崩れない強い耐久性を持っている。

住宅の中

Image via Tahmineh Monzavi, Soroush Majidi, Payman Barkhordari

ホルムズ海峡と言えば、中東の原油輸出の窓口とも言える世界経済の要衝である。付近に位置するこの小さな島は自然豊かな景観を有し、主に近隣地域からの観光客も訪れる。しかしながら、国家の核開発に対する国際社会からの経済制裁の影響でイラン経済は低迷しており、ホルムズ島でも多くの住民が経済的困難を抱えている現状がある。貧困下で、強制労働などの人身売買も横行しているとZAV Architectsはいう。

Majaraプロジェクトはこうした地域の課題解決を目指して行われた。魅力的な建築の力で複合施設としての価値を生むと同時に、この地域の貧困問題を世界に発信することで、観光客や投資家を呼ぶという。また、SuperAdobeのドーム建築自体も建設工程に特別なスキルを要さないことから、島で生活する人々への雇用機会も創出した。

ドーム型のカラフルな住宅

Image via Tahmineh Monzavi, Soroush Majidi, Payman Barkhordari

今後は、住民同士あるいは住民と観光客を結びつけるコミュニティのハブとして上手く機能させることを目指す。そうすれば、現地の人々が抱える課題へのアプローチがさらにしやすくなるだろう。建築やアートが政治や経済の問題を解決に導いていく、こうした事例に今後も注目していきたい。

【参照サイト】ZAV Architects
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Edited by Kimika

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