はしゃぐことなく、静かに本を読んだり絵を見たりしたいときがある。そんなとき、図書館や美術館に足を踏み入れると、作家や画家の世界観に飛び込んだような気持ちになるのだ。それは神聖なひとときだが、そういったものに今まで縁がなかった人もいるだろう。文化の意義とダイナミズムをより多くの人に感じてもらえるような企画はないだろうか。
ニューヨーク市では、すべての住民に優れた文化体験をしてもらいたいという願いを込め、美術館、展示館、庭園といった市内の文化施設に無料で入れるCulture Passというプログラムをはじめた。Culture Passを利用できるのは、市内の3つの図書館Brooklyn Public Library、Queens Library、The New York Public Libraryの図書カードを持つ人だ。
ニューヨーク州の住民、もしくはニューヨーク市内の会社や学校に通う人であれば上記の図書カードを無料で作れるため、30を超える市内の文化施設に実質無料で入れることになる。これらの施設のなかには、有名なニューヨーク近代美術館(MoMA)やメトロポリタン美術館も含まれている。大人の場合、これらの美術館で通常25ドル(約2,800円)の入場料がかかることを思えば、Culture Passの恩恵は大きい。
Culture Passを利用できるのはひとつの文化施設につき年1回まで、という回数の制限はあるものの、収入の多寡に関係なく13歳以上であれば誰でも参加できる。参加するには、図書カードの情報を使って各図書館の専用サイトにログインし、日にちと施設を予約する。
実際、ピュー研究所というワシントンを拠点とするシンクタンクの調査によると、アメリカ国内で図書館を利用する人は減少しているという。図書カードを持っていない人は新しく作るところからはじまり、今まで図書館に縁がなかった人も取り込める仕組みになっている。
Brooklyn Public Libraryの館長を務めるLinda Johnson氏は、「美術館に敷居の高さを感じている人がいます」と現状を説明し、「ニューヨーク市民に提供される素晴らしい文化体験からシャットアウトされるべきではありません」と語る。優れたクリエイターの感性をとおして時代の見方を学んだり、作品を自分の生き方に引き寄せてみたり、このプログラムで吸収できることはたくさんあると思う。これをきっかけに、より気軽で自由に文化に触れられる土壌が育つとおもしろい。
【参照サイト】Culture Pass
【参照サイト】Library users and learning