IoTを活用したスマートホームやビッグデータを活用した不動産価値査定、VRやARを活用したリモート内見など、最近ではテクノロジーを活用して不動産市場の透明化や効率化を進める「Real Estate Tech(リアルエステートテック)」の領域が盛り上がりつつある。
しかし、その中でもいまだにテクノロジーが未開拓の領域が存在していた。それが、街中でよく見かける「For Sale」の看板だ。買主を探し中であることを示すこの看板は、低価格の物件から高級物件まで古くから変わらず伝統的なものが使われてきた。
人々の目に頻繁に触れ、とても効果的であるにも関わらず、最も平凡なマーケティングツールだった「For Sale」の看板。この看板に目を付けたのが、ニューヨーク発の不動産テックスタートアップ、Compassだ。
“A real estate company with a purpose.”を掲げるCompassは、新たにテクノロジーを活用してインタラクティブな表示ができる「For Sale」用のスマート看板を開発した。
この新しいスマート看板は、従来の「For Sale」看板の常識だった長方形ではなく円形のデザインとなっているのが特徴だ。看板の半径6メートル以内で何かが動くとそれに反応して丸い看板の縁取りがぐるりと回って点灯し、その物件を取り扱う不動産業者の名前が強調表示されるようになっている。
また、Compassのアプリを持っている場合は6メートル以内を歩くだけでその物件に関する詳細な情報が自動で通知される仕組みだ。なお、看板にはQRコードも設置されているため、そこからCompassに接続して物件のより詳細な情報を見ることもできる。
この看板は今年の秋から購入可能となり、不動産業者や追加費用を払えばドライビングアプリのWaze上に物件を掲載することも可能となる。
Compassは将来的にこの看板を完全にデジタル化し、仲介業者がリモートで物件情報を更新したり、物件周辺の空気質や交通量、騒音などに関するデータを収集してなぜその物件が売れないのかを分析したりできるようにする予定とのことだ。さらに、ARを活用して外壁の色をシミュレーションできるようにするなど買い手の意思決定を支援する様々な機能の追加も計画されているという。
Compassのチーフ・クリエイティブ・オフィサーでこの新しいスマート看板のチーフデザイナーを務めるMatthew Spangler氏は、「年間4000万人が引っ越していることを考えると、For Saleの看板はエージェントが最も認識されやすいシンボルの1つだ。我々は、データとソフトウェア、ハードウェアを組み合わせることでエージェントおよび彼らの顧客に価値を提供し、Compassをより強力にするエコシステムを創り上げることを考えていた」と語る。
人のすぐそばに立ち、インタラクティブなコミュニケーションをとることができるのが特徴だけに、プロモーション以外にも様々な可能性が考えられる。例えば、災害や犯罪などの危険が迫っているときに、携帯電話を持たずに街を歩いている子供たちにもスマート看板を通じて救援メッセージや通報を発することなどもできるだろう。
売主と買主のマッチングだけではなく、スマート看板を通じてより安全な街づくりにも貢献することができれば、結果として土地の価値が上がり、CSRを本業の事業価値向上につなげることもできる。Compassが世に送り出したスマート看板の可能性は無限大だ。
【参照サイト】Compass
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