泊まるだけで社会貢献になる。東京の下町にできたサステナブルなホステル「KIKKA」

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この夏、サステナブルをテーマにしたホステルが、東京の馬喰町・人形町エリアにオープンした。KIKKAという名のこのホステルは、サステナブル(持続可能な仕組み)をテーマに掲げ、新しい人、モノ、サービス、気づきとの出会いを求めている人に「きっかけを創造する」場を提供することを目指している。

さまざまな企業や自治体とコラボレーションし、食事やイベント、商品をとおして素敵な出会いを提供しているKIKKA。今回、KIKKAを運営する株式会社7gardenで事業部長を務める須賀裕子さんに、サステナブルをテーマに据えた理由からホステルのこだわりポイント、今後の取り組みまでいろいろなお話を聞いてきた。

須賀さん

サステナブルな仕組みが散りばめられたホステル

KIKKAは、「サステナブル」というテーマを具現化するにあたって、社会貢献に取り組んでいるいくつかの団体とコラボレーションをしている。

1つ目が、認定NPO法人Table For Two(以下、TFT)だ。TFTは、アフリカやアジアの開発途上国の飢餓と先進国の肥満や生活習慣病の解消に同時に取り組んでいる、日本発の社会貢献団体だ。対象となる食事を購入すると、1食につき20円の寄付金が、TFTを通じて開発途上国の子どもの学校給食代として寄付される。20円というのは、開発途上国の給食1食分の金額である。

カフェのメニュー

KIKKAのカフェでおにぎりセットや特定のドリンクを購入するか、寝室のシーツやタオルを交換しなかったりアメニティを使用しなければ、20円分がTFTを通じて途上国に寄付される仕組みになっている。TFTが宿泊施設と提携するのも、食事以外のものから寄付できる仕組みも初めてだという。

Table For Twoと提携したおにぎりセットが購入できる

2つ目は、エシカルなライフスタイルブランドを展開するSALASUSUだ。SALASUSU(サラスースー)は、「作り手に会いに行く旅をしよう」というライフ・ジャーニーを切り口にカバンや靴などの商品アイテムを企画し、実際に商品を作っているカンボジアの農村の女性たちに会いに行ける旅も提供している。KIKKAは、SALASUSUの初となる常設販売場所となっている。

SALASUSUの商品がカフェの一角に並べられている

3つ目は、徳島県上勝町との協力だ。上勝町は、日本初「ごみゼロ(ゼロ・ウエイスト)宣言」をし、料理の“つま”として出荷する葉っぱビジネスで成功した町としても有名である。KIKKAでは上勝町のクラフトビールを扱い、毎月シーズンにあったフレーバーを提供している。

徳島県上勝町のクラフトビール

4つ目は、カフェで提供しているコーヒー。コロンビアの契約農家からフェアトレードで豆を仕入れているlohasbeans coffee(ロハスビーンズコーヒー)と一緒に、KIKKAオリジナルのスペシャルティコーヒー豆を開発したそうだ。

ロハスビーンズコーヒーのスペシャリティコーヒー

そして最後は、こちらもカフェの看板メニューとなっているおにぎりだ。ベストセラー『作ってあげたい彼ごはん』の著者であり料理家のSHIORIさんとのコラボレーションにより、47都道府県のおにぎりメニューを開発し日替わりで提供している。地方活性化という観点から、ひとつのおにぎりが日本の多様な地域のことを知ってもらうメディア(媒体)になっているといえよう。カフェで提供するきんぴらごぼうのごぼうも、皮をむかずにそのまま出すなど、小さな取り組みを忘れない。

おにぎりセット

お店で使用しているトレーやドミトリーのベッドにも工夫が施されている。トレーは廃材を、ドミトリーのベッドは古材を利用してできており、ひとつひとつ少しづつ違った色味や形を楽しめる。

廃材を使用したトレー

古材を使用したドミトリーのベッド

これらのコラボレーションのきっかけはどのように起こったのだろうか。

「もともと(KIKKAを運営する)セブンガーデンの代表とTFTの代表が知り合いでした。SALASUSUもモノを販売しているだけではなく、旅をコンセプトにしているところに共感しました。上勝町も私の前職の知り合いのつてでつながりがありました」と須賀さんが語るように、まさにKIKKA自体がさまざまな「きっかけ」から生まれたホステルのようだ。

サステナブルを楽しんでいる世界中のゲストたち

須賀さん自身、「楽しめる場作りをしたい」とこの事業にジョインしたという。なぜ今回、KIKKAではサステナブルをホステルのテーマにしようと思ったのか。

「宿泊者に『きっかけ』を提供するにあたって、社会性のあるなにかを発信できたらいいなという思いがありました。けれど、私たちはNPOではないので、特定の社会支援ではなく、良いものをいろいろと取り込み、ナチュラルなカタチで社会貢献できるようにしたいなと。周りにあるいいものを取り込んで、自然体ですてきなものを作ろうと考えたときに出てきたキーワードが、サステナブルでした」

全面ガラス張りで、解放感溢れる作りになっている

8月1日にオープンしてからまだ日が浅いが、宿泊客は日本人と外国人が半々くらいで、欧米からもアジアからも旅人が訪れているそうだ。実際ゲストからはどういった反応があるのだろうか。

『宿泊してただお金を払うよりも、そのお金で誰かが幸せになってくれて、ありがとうと言ってもらえるのなら、そっちの方がいいから』という理由で宿泊してくださった欧米系のお客さまがいらっしゃいました。ドイツからの旅行者は、ドミトリーのベッドはクールで木のぬくもりが感じられ、まるで森の中で寝ているみたいと言ってくださいました。宿泊している海外の方のなかには、地下にあるバーで友だちを作って地元の人と一緒にカラオケを楽しんでいる人もいました」

地下のバー。日本らしく富士山ネオンが出迎えてくれる

地下のバー。外からも直接降りて来られる

「日本人の方もサステナブルというテーマの真新しさに惹かれて来てくださいます。またウェブサイトを見て内装や雰囲気全体が気に入ってくださったり、TFTのファンの方も来ますし、地元の方もカフェやバーに遊びに来てくださいます」

個室にはTable For Twoの写真が飾ってある

イベントやワークショップでもっと「きっかけ」を広めたい

さまざまな人・団体とのコラボレーションから生まれ、すでに利用客に次の「きっかけ」を作り出しているKIKKA。今後もさらなる「きっかけ」を作り出すべく、さまざまな展開を予定しているという。

「TFTとのコラボレーションでおにぎりアクションイベントやロハスビーンズコーヒーのワークショップを開催したいですね。SALASUSUの商品をスタッフに着用してもらったり、カバンなどのアイテムを旅人に貸し出して使って楽しんでもらうサービスもはじめたいです。SALASUSUのような社会性のある団体を集めた展示会だったり、地域とのつながりのあるイベントなどもどんどんやっていきたいです」と須賀さん。

須賀さんとスタッフの方

東京のど真ん中に位置するが、どこか下町っぽいのどかさとぬくもりが残る馬喰町・人形町エリア。昔ながらの問屋さんが並ぶ狭い路地にある、おしゃれなベーグル屋さんだったり、粋なビストロ、かわいい雑貨屋さんが人を魅了する。そんな散策にぴったりな立地で、サステナブルをキーワードに遠い地から来た旅人と自分の町が大好きなローカルを結びつける「きっかけ」がこれからどんどん生まれることにわくわくする。

編集後記

ブッキング・ドットコムが2018年におこなった 「サステイナブル・トラベル(滞在先の保全を優先した、環境にやさしい旅行)」に関する調査によると、80%以上の人がサステナブルな旅に興味があるという。その点、KIKKAは環境保全やエシカル消費、社会貢献に自然と関われる仕掛けが多くあるので、無理せずにサステナブルな旅行を楽しむことができる。

なんといっても、KIKKAに行くと新しいモノ・コトとの出会いが待っている。新しい友だちを作る、新しい文化・価値観に触れる、新しい気づきを得る。それこそが一番の旅の醍醐味だろう。

KIKKAのコンセプトに賛同し、一緒に新たな「きっかけ」作りをしたい団体や個人は、ぜひKIKKAに遊びに行ってみてはいかがだろうか。

【参照サイト】KIKKA ~東神田のサスティナブルホステル~
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