ヨーロッパでも群を抜いて若者の失業率が高いと言われたスペインの失業率は、かつての24.79%(2012年)から15.51%(2018年)と減少傾向にある。同国ではホームレスの社会復帰のために、彼らをツアーガイドとして採用する社会的企業などが現れるなど、前向きに課題と向き合っているようだ。しかし国全体の失業率については、まだまだ改善の余地はある。
今回紹介するのは、スペインの赤十字社が、過酷な環境にあるホームレスにとって特に辛い“孤独感”をやわらげることをコンセプトにした「何に対しても“Yes”と言ってくれる掲示板(The Billboard that Always Say Yes)」である。
街中に設置されたデジタルサイネージの掲示板は、インターネットを利用できないホームレスに、さまざまな情報や人と繋がるきっかけを与えてくれる。「何に対してもYesと言ってくれる」という言葉は、ホームレスたちの拠り所としてできる限りサポートするという意志を表しているのだろう。
たとえば、“天気のマーク”をタップすると気象情報がチェックでき、“赤十字マーク”をタップすると、話を聞き相談に乗ってくれる場所や集会所へのルートが表示される。
“Twitterマーク”では、指定のハッシュタグを通じてツイートで声をかけてくれるさまざまな人と触れ合える。そして“本のマーク”では、ワークショップに参加できる場所を示す地図が表示され、実際に300以上の復職のための研修に参加が可能になる。これによって雇用率は39%増加したそうだ。
さらにホームレスだけでなく一般市民に見てもらうためのコンテンツとして、ホームレスへの寄付を募る場所も確認できる。大勢の市民が募金に訪れ、キャンペーン開始から24時間で3万ユーロが集まり、1,000kgもの衣料が寄付されたのだ。
すべてのホームレスが進んで今の状況を選んでいる訳ではない。多くの人はホームレス状態を脱却するための、人や社会に対する頼り方を知らないのだ。現状を変えたいという彼らの思いに答えるべく、赤十字社は社会と繋がる機会を与えた。この掲示板は、頼る人や場所を見失い孤独なホームレスたちの強い味方となるだろう。
【参照サイト】CRUZ ROJA_The Billboard
【参照サイト】スペインの失業率について – World Economic Outlook Databases
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