「あなたも私も同じ」ニューヨークで“血”が展示される理由

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2015年、中東やアフリカなどからヨーロッパ諸国に難民が殺到した。UNHCRの報告によると、紛争や民族差別、自然災害などが原因で移住した人は現在約7,144万人にのぼるという。難民流入による治安の悪化が叫ばれたり、移民反対派による放火事件などの過激なテロ行為が起きたりと“難民危機”が世界各国で大きな問題となっている。

今回は、そんな難民問題に一石を投じるアート作品「Odyssey」を紹介する。Odysseyは難民と非難民の“血”を使った作品だ。難民と非難民に分けられた2つの巨大なボックスが、それぞれ2,500人以上のボランティアによって献血された血液で満たされる。

ラベリングされていない難民と非難民のボックスは、きっと同じ血の色で見分けがつかないだろう。この作品のコンセプトは“Under the skin we’re all the same(ひと皮むけば私たちは皆同じ)”。私たちはときどき、自分と違う立場の人々が同じ「人間」だという基本的な事実を忘れがちだ。人として誰もが持っている“血”の集合体Odysseyは、それをまざまざと教えてくれる作品である。

2019年1月から、作品のためにいくつかの都市で血液を採取し始め(法的助言を受け治験と同基準で行う)、同年9月にニューヨーク公立図書館の階段に展示される予定だ。

Odyssey

Image via Marc Quinn

この作品を考えたイギリス人アーティスト、マーク・クイン氏は「難民危機は、これまでの人道的悲劇の中で最も大きなものの1つだろう。私は難民問題に関心のない人々が目を留めるような作品を展示することで、難民の人々を助けようと考えた」と述べている。また、同氏はニューヨークだけでなく、世界各地で血液を採取し、ロンドンやヨーロッパ、アフリカや中東などでの展示会開催に意欲を示している。

すでにプロジェクトに賛同しているモデルのケイト・モス氏やミュージシャンのポール・マッカートニー氏などの著名人が、非難民のボックスに血液を寄付している。寄付したボランティアからのメッセージ動画は、作品の隣で再生されるそう。以下の動画はこれまでに協力した著名人によるOdysseyの予告動画だ。

このYouTubeチャンネルの他の動画では、難民が体験した悲惨な過去の話や、難民へのメッセージなどもあるのでぜひ見て欲しい。

今回のプロジェクトは、難民の声に耳を傾け、自分には何ができるのか考えるきっかけになるかもしれない。世界各地で行われるOdysseyの展示会が社会にどんなインパクトを与えるのか、2019年からの活動に期待したい。

【参照サイト】Marc Quinn – Odyssey
【参照サイト】Tonnes of blood: artist seeks to draw world back to refugee crisis
【参照サイト】UNCHR

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