昨今、地産地消によって「生産と消費を近づける」考えがある。たとえば食べ物を生産地の近くで消費すれば、輸送を省いているのでCO2が排出されず、また品質の確保、生産者の所得向上などにもつながる。しかし、920億ユーロの産業を持つチョコレートに限っては、これが難しいという課題がある。
チョコレートの原料となるカカオは、南米、アフリカ、インドネシアなど熱帯気候でのみ生産される。そのため、私たちがチョコを食べる限り、グローバルサプライチェーンに頼らざるを得ないのだ。カカオ生産には、近年より多くの国が参入しており、競争の結果として価格が40%低下したこともある。
これは、カカオ農家の生活を困窮させる原因となった。問題は、地産地消ができず、チョコレートをお店で買っても、その価格のわずかに3%しか生産者には支払われていないという現状だ。
そこでオランダのNGOであるFairChain Foundationは、カカオ農家の生活を支える収入と持続可能な未来のために、国連開発プログラムと提携してある開発を行った。「The Other Bar」と呼ばれるチョコレートバーだ。このバーの購入者は、ブロックチェーンを通じてカカオ農家に直接トークンを送れるようになっている。
The other barを購入し、パッケージにあるトークンをスキャンすると、カカオ農家にトークンが届く。農家はチョコバー4つ分のトークンで、1本のカカオの木を購入することができ、この木1本で2,700円の価値のあるカカオ豆を生産する。農家に支払われた金額や、トークンで購入されたカカオの木の正確な位置などは、ブロックチェーン技術により確認できることが特徴だ。
FairChainは、農家がカカオにより良い対価が支払われるように支援するため、農家にカカオ豆1トン当たりフェアトレードの約2,174ユーロや商業バイヤーの約1,721ユーロより好条件の3,080ユーロを支払っている。また、チョコバーはカカオ生産地であるエクアドルの独立した工場で生産している。
チョコレートの購入に、世の中のためになる体験という価値を加味。そしてブロックチェーンを通じて透明性を担保し、生産者と消費者の心理的な距離を縮める。現在フランスやドイツ、アメリカなど一部の国への発送のみ対応しているが、消費地に関わらずテクノロジーで生産者を支援できるというのは、これからのビジネスを形作るうえで重要な考えとなりそうだ。
【参照サイト】The other bar