豆乳だけじゃない。牛乳よりサステナブルな「植物性ミルク」という選択肢

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スーパーマーケットやコンビニ、そしてコーヒーショップなどで少しずつ目にする機会が増えつつある、「牛乳以外のミルク」のセレクション。日本の一般的なスーパーマーケットでは豆乳以外を目にすることは少ないが、アーモンドミルクやオートミルク(オーツ麦のミルク)など、実は種類も増えてきている。乳糖不耐症や牛乳アレルギーがある方にとっては貴重なオプションである上に、雑誌やテレビなどでは肌や健康にいいと謳われていることも。

実はそれ以外にも、植物性ミルクには「環境に優しい」という非常に大きなメリットがある。ミルクは、そのまま飲んだり、コーヒーや紅茶、スムージーに入れたり、料理やデザートに利用したりと、私たちの生活に非常に密着している存在である。豊富な選択肢の中から、自分の体や生活に合わせて、できる限り環境負荷の少ない選択をしていきたいものだ。

牛乳と比べて植物性ミルクがサステナブルな理由

まずは牛乳と植物性ミルクを、環境負荷という観点から比較してみよう。近年は気候危機の議論の一環として、畜産がもたらす温室効果ガスの排出量や土地・資源の過剰利用が話題に上がり、肉消費のあり方を考え直す動きが出てきている。同じように、牛を扱う酪農の環境負荷はどうなのだろうか?

それについて、イギリスのBBCがオックスフォード大学の専門機関の調査結果を発表している。

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動物由来のミルク(牛乳など)、ライスミルク、豆乳、オートミルク、アーモンドミルクの環境負荷を比較したグラフ。Image via BBC

このグラフは、コップ一杯(200ml)当たりの 動物由来のミルク(牛乳など)、ライスミルク、豆乳、オートミルクそしてアーモンドミルクの環境負荷を、温室効果ガスの排出、土地の利用、そして水の利用で算出し、比較したものだ。どの項目においても、牛乳がいかに多くの資源を必要とし、多くの温室効果ガスを排出しているかが明らかだ。哺乳類である牛を育てるのに大量の水と飼料が必要となること、そして牛がメタンガスを発することが原因になっている。これらは、いずれも気候危機を引き起こす要因と言われている。

動物由来のミルクと比較すると、4種類の植物性ミルクは圧倒的に環境負荷を抑えることができる。例えば土地の利用。コップ一杯のミルクを生産するのに、牛乳の場合は650平方メートルの土地(テニスコート2面分)が必要になるのに対し、オートミルクの場合はその10分の1の土地に抑えられるそうだ。

牛乳を生産するためには、牛を育てるのに広大な土地が必要となるだけでなく、牛に水を飲ませ、エサを食べさせて体に栄養をつけ、そのうえで搾乳するという工程がある。それを、植物性ミルクを作る農業に置き換えたら、多くの土地や資源を節約できるのは当然のことである。アニマルライツの観点から見ても、精子採取・母乳のための人工妊娠・仔牛や余剰オス牛の処分・連日の搾乳といったことが行われているという指摘がある。体への大きな負担が原因となり、一般的な牛よりずっと短い期間で一生を終えるメス牛が、世界中の酪農場にいるということも忘れてはいけない。このシステムは持続可能と言えるのだろうか?

先ほどのグラフに戻り、今度はそれぞれの植物性ミルクの環境負荷を比較してみよう。先述の通り、4種類の植物性ミルクのいずれもが、どの項目においても牛乳より低い環境負荷となっているが、例えばライスミルクは温室効果ガスの排出と水の利用、アーモンドミルクは水の利用の項目で、他より高い数値を示している。土地の利用においては、どの植物性ミルクもかなり抑えられることがわかる。

牛乳にも無脂肪乳・低脂肪乳や加工乳といった種別があるが、基本的に牛からきていることに違いはない。一方、植物性ミルクは種類によって、環境負荷の掛かり方が異なってくる。

アメリカでの植物性ミルクの状況、トレンド

アメリカでは植物性ミルクの種類が拡大の一途を辿っており、一般的なスーパーマーケットでもかなりの種類の選択肢から選ぶことができる。豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ライスミルク、オートミルク、ココナッツミルク、ヘンプミルク(麻)、フラックスミルク(亜麻)、ピーミルク(豆)など様々だ。

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ブルックリンにあるホールフーズで売られている植物性ミルク。(筆者撮影)

植物性ミルクはそれぞれ味やテクスチャの特徴があるうえに、原料により栄養価も異なる。ナッツや穀類、グルテン全般にアレルギーがある方でも、体質に合うものを選べるようになってきている。さらに、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズなどの乳製品においても、植物性化が急速に進んでいる。

加えて、ミルクと密接な関係を持つコーヒー業界でも動きが出ている。最近、スターバックスはアメリカ中西部を中心に、新たに植物性ミルクの展開を広げる発表をした。これにより一部店舗における植物性ミルクの選択肢は、豆乳・ココナッツミルク・アーモンドミルク・オートミルクの4つとなった。この背景には、「酪農製品が温室効果ガス排出の大きな要因の一つである」というスターバックスの認識がある(スターバックス公式サイトの企業責任ページ)。

一方、アメリカのスターバックスにおいても、植物性ミルクを選ぶと追加料金がかかる。これに反対し、「追加料金を撤廃すれば、より多くの人が環境に優しい選択ができるようになる」という訴えは盛んで、署名運動も行われている。ローカルなコーヒーショップでは植物性ミルクに追加料金をかけない店舗も多く、今後スターバックスも「植物性ミルクの追加料金なし」の方向に舵を切るかどうかに注目が集まっている。

植物性ミルクを選ぶ上で気をつけたいこと

種類が増え、取り扱いも拡大することで、今後さらに身近になっていくことが期待される植物性ミルク。種類によって環境負荷にバラツキはあるが、牛乳と比べたらどの種類であっても環境負荷は大きく抑えられるので、植物性ミルクを選ぶ時点でまずサステナブルな一歩と言える。

そこからさらに進めると、どこで原料が生産され、どこで加工されて自分の手元に届くかという点も、サステナブルな選択をする上での重要な指標の一つになる。例えばニューヨーク在住の筆者は、味も好みで体にも合い栄養価も高いオートミルクをよく利用するが、アメリカではオーツ麦の生産が盛んで国内で供給されているという点も、選びやすさの要因になっている。一方で、日本で手に入るオートミルクの多くは外国産・外国製であると思われ、輸送等に掛かる環境負荷は無視できない。

農薬や肥料の利用についても、原料レベルでしっかりと確認する必要がある。牛乳の生産に比べていくら土地の利用が抑えられるとはいえ、強い化学物質が栽培に用いられると、土壌の再生は困難になる上に、人体への影響も懸念される。

加えて、販売されている植物性ミルクの多くは「加工品」であることも視野に入れておくべきだろう。味やテクスチャの調整、栄養の補強などがされている。特に森林破壊の大きな要因とされているパーム油は、植物性油脂や乳化剤などと名前を変えて原材料リストに載っている場合もあるので、注意が必要だ。

一般消費者の目からはわかりにくい点も多いが、エシカル・サステナブルな選択を提供する立場であるメーカー側の細かい配慮や、透明性の高い情報発信が求められる。

まとめ

これまではアレルギー対応の印象が強かった植物性ミルクだが、食のサステナビリティへの関心が高まるにつれ、環境負荷を抑える選択肢としても注目が集まっている。多くの人が日常的に利用するものであるからこそ、環境負荷を減らすという観点からも、「牛乳の代わりに植物性ミルクを選ぶ」という行動が重要になっていくのではないだろうか。そのためにも、今後日本でも植物性ミルクの選択肢が充実していくことを期待したい。

【参照サイト】STARBUCKS JUST LAUNCHED VEGAN OAT MILK IN 1,300 LOCATIONS
【参照サイト】Climate change: Which vegan milk is best?(BBC)
【参照サイト】Dairy is scary. The public are waking up to the darkest part of farming