アフリカの農村に電気を届ける、コーヒーフィルターを使ったシンプルな電池

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私たちの生活のあらゆる場面で欠かせないものといえば、電気だ。しかし2019年の国際エネルギー機関の発表によると、世界では8億人以上の人が電気にアクセスできない状態にあり、特にサハラ以南のアフリカでは6億人近くもの人が電気を利用できていないという。

そこで、スイス連邦工科大学ローザンヌ校卒業生が設立したスタートアップhiLyte(ハイライト)社が、鉄、水、コーヒーフィルター、カーボンフェルトの4種類の素材を使ったシンプルで安価な新バッテリーを開発した。現在、プロトタイプの実証実験をタンザニアで行っている。

hiLyte社の新電池

(c) EPFL

hiLyte社の新バッテリーは、次のように電力を生成する。まず、鉄箔とコーヒーフィルター、カーボンフェルトをデバイスに挿入し、水と硫酸鉄粉末の溶液をバッテリー内に注ぐ。液体がカーボンフィルターに染み込むと、鉄箔がゆっくりと溶解していくなかで電子が放出され、電気が生成される。最後に電球やスマホを電池内蔵USBポートに接続すると、できた電力を利用できるという仕組みだ。この反応によって生成される硫酸鉄(II)は無害で、農業用肥料として使用できるのも特長である。

hiLyte社の目標は、サハラ以南のアフリカの人々が家を照らし、スマホを充電できる環境をつくること。当社が開発した新電池は、1回の充電で5時間LED電球に電力を供給し、スマホを充電できる。

エコな新バッテリーをhiLyte社が開発した理由はもう一つある。それは、タンザニアの農村部に住む人の多くの人々が電球の代わりに使っている灯油ランプだ。灯油は燃えると、有害なすす粒子を放出し、高価で引火性も高い。hiLyte社のCEOブリアック・バルテス氏は 「狭い場所で5時間灯油の煙を吸うことは、2箱分のタバコを吸うのと同じくらい肺に悪い。」と述べる。

hiLyte社の新電池

(c) EPFL

このようにアフリカの人々が抱えている問題を解決するバッテリーの価格は、灯油ランプの約半分と安価なことも大きな魅力だ。ユニット自体の価格は12ドル(約1,300円)で、鉄、コーヒーフィルター、カーボンフェルトの価格は充電1回につき12セント(約13円)である。 hiLyte社は現在タンザニアでの販売に焦点を当てているが、今後は他地域にも市場を拡大していく予定だ。

電気にアクセスできない人々の毎日の生活を変える可能性を持つ、 hiLyte社が開発したバッテリー。継続的な供給が可能な素材を使用し、安価で、電気の普及により産業にも好影響をもたらすということで、今後の展開が期待される。

【参照サイト】A green battery for home use in rural Africa
【参照サイト】SDG7: Data and Projections

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