「夏の暑さ」を保存して「冬を暖める」技術開発、ヨーロッパ各地で進む

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2022年も、夏は暑かった。最高気温が35度を超え、日中は外に出るのが厳しいこともあった。しかし11月現在はすっかりそんなことも忘れ、寒さに備えて服を着込んでいる。「夏の暑さを少しでも、冬のために取っておけたらいいのに」そんな想像を現実にしようと、研究に取り組む人たちがいる。

ひとつめの事例は、スウェーデン・チャルマース工科大学の研究者が発表した、太陽エネルギーを蓄えるように設計された分子だ。

炭素、水素、窒素からできた分子に太陽光が当たると、そのエネルギーを蓄えた異性体(分子式は同じだが構造が異なる分子)に変化する。異性体を保存しておき、冬になったら、そこからエネルギーを取り出す仕組みだ。異性体には最長18年、エネルギーを蓄えられるという。

研究者らは、液体になった分子を建物の屋上に設置。そこで太陽エネルギーを集めた後、液体を室温で保存しておき、必要なときに暖房などに使えると考えている。暖房に使われた液体を屋上に設置すると、再び太陽エネルギーを集められるそうだ。

Image via Chalmers University of Technology

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ふたつめの事例は、スイス連邦材料試験研究所の研究者が発表した、水酸化ナトリウムにエネルギーを蓄える方法だ。

固形、または濃縮した水酸化ナトリウムが入ったビーカーに水を加えると、熱が発生する。この手順を逆にするのが、今回の研究のポイントだ。薄い水酸化ナトリウム溶液に熱という形でエネルギーを加えると、水が蒸発し、液体が濃縮されると同時に、供給された熱を蓄えるのだ。そして再び水とあわせたとき、熱を放出する。

その理論が実現できるのか確かめるため、研究者らは専用の実験室を作成。60度の熱湯が流れるパイプの中に、30%の濃度の水酸化ナトリウム溶液を流したところ、熱エネルギーを蓄えた50%の水酸化ナトリウム溶液ができたという。熱湯をつくるのに夏の太陽エネルギーを使うことで、夏の暑さを保存する仕組みだ。

Image via Swiss Federal Laboratories for Materials Science & Technology

Image via Swiss Federal Laboratories for Materials Science & Technology

気候変動により、熱波が発生する可能性が高まっている昨今。暑さから身を守りつつ、それを利用して生活に役立てようとする発想が興味深い。

【参照サイト】Emissions-free energy system saves heat from the summer sun for winter | Chalmers
【参照サイト】Empa – Communication – NaOH-heat-storage
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