「カーボンネガティブ」を着よう。NY在住のデザイナーが開発した藻由来のレインコート

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2020年1月、マイクロソフト社は「2030年までにカーボンネガティブを達成する」と発表、目標達成に向けた開発支援に10億ドル(約1100億円)を投資すると宣言した。カーボンネガティブとは、ライフサイクル全体で見たときに、大気中へ排出する二酸化炭素(CO2)量よりも吸収する量が多くなる状態のことを指す。同社のこの宣言は、Amazon社やGoogle社などが掲げた「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする)」宣言よりも、さらに1歩踏み込んだものであるとして大きな注目を集めた。

そんなカーボンネガティブの考え方をファッション界に提案したのが、ニューヨーク在住のデザイナー、Charlotte McCurdy氏だ。彼女は「美大のハーバード」とも称されるロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)の卒業制作として、藻類を原料とするプラスチックを使ったカーボンネガティブ・レインコートを制作した。

カーボンネガティブレインコート

アメリカのビジネス誌Fast Companyが選ぶデザインアワード2019にて実験的デザイン部門の大賞を受賞した。|Image via Charlotte McCurdy

藻類は、二酸化炭素の吸収効果が高いという研究結果があり、陸上の森林にひけをとらない二酸化炭素の吸収源として注目されている。そんな藻類由来のプラスチックは、焼却処分する際に発生する二酸化炭素よりも、原料の藻が成長過程で吸収した二酸化炭素のほうが多いため「カーボンネガティブ」な素材となるのだ。

McCurdy氏のレインコートには、本体部だけでなくスナップボタンや縫い糸を含め、石油由来のものが一切使用されていない。レインコートの防水性を高めるコーティングに使ったのも、彼女が開発した100%ヴィーガンワックスである。市場に出回っているコーティング剤は石油由来の製品ばかりだったため、彼女自ら納得のいくものを作ることにしたのだそうだ。また、自身のスタジオは100%再生可能エネルギーで運営しているといい、McCurdy氏が普段から環境への配慮を徹底していることがわかる。

藻類プラスチック・コートの試作品

藻類プラスチック・コートの試作品|Image via Charlotte McCurdy

このカーボンネガティブ・レインコートはMcCurdy氏のプロジェクト「After Ancient Sunlight(古代の太陽光の後に)」の一環で制作されたものだ。McCurdy氏は、藻類由来のプラスチックを「現在の太陽光」から作られたプラスチックと表現する。これは、今生きる藻類の光合成で生成された炭素から作られているからである。一方、石油で製造されたプラスチックについて、数百万年前の光合成で生成された炭素(=石油)によって作られていることを指し、「古代の太陽光」から作られたプラスチックと述べている。

彼女はレインコートという作品を通して、単に石油の使用を取りやめることを提案しているのではなく、「プラスチックの原料にしている『炭素の出どころ』を今一度見直すべきだと」いう新たな視点を提示しているのだ。

カーボンネガティブレインコート

Image via Charlotte McCurdy

McCurdy氏は今のところレインコートを商品化するつもりはないという。この作品を通して多くの人に、気候変動や異常気象について、あるいは化石燃料に頼らない未来について想いを馳せてほしい、というのが彼女の願いだそうだ。

商品を選ぶとき、「現代と古代どちらの炭素が原料なのか」を確認する──それが当たり前の時代が、そのうちに到来するかもしれない。

【参照サイト】Charlotte McCurdy
【参照サイト】Blue Carbon – The Role of Healthy Oceans in Binding Carbon
【関連ページ】米マイクロソフト、2050年までに創業以来排出した全CO2を除去すると宣言