全ホームレスひとりひとりにあったコミュニケーションを改革。米イリノイ州が始動

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ホームレス問題について考えるときに「住居を提供する」という解決策を簡単に思い浮かべがちだが、そこには複雑な問題がある。行政上の必要な手続き、自身に対応した生活保護・就労支援を一人で把握することが難しかったり、煩雑な申請手続きをあきらめてしまったり、生活保護が断られるようなケースもあることなどから、ホームレスをゼロにすることがまだ難しいのが現状だ。

米国では2018年内に、55万人以上が1晩以上のホームレス状態を経験しており、さらに8万人以上が長期的なホームレス状態にある。

15万人程度の人口を抱え、700人以上のホームレス状態の人が住むとされるイリノイ州ロックフォードでは、2020年内にこの問題の解決が見込まれている。退役軍人と障害のある長期的なホームレス状態の全ての人に対して、即時入居可能な住居を提供できる体制を2018年から整えており、彼らが望めばいつでも住居のある暮らしをスタートできる。ロックフォードは退役軍人に対しては全米で初めて、障害のある人に対しては2番目に早く、この状態を達成した自治体だ。

しかしながら全米のホームレス状態の人の内、退役軍人は約37,000人、障害のある人は約88,000人とされており、それ以外の42万人以上が77%を占める。ロックフォードでも同様に、退役軍人と障害のある人以外(若者、ホームレス状態になって間もない単身者や家族)のホームレス状態の解決が課題になっていた。

この問題の解決のために、ロックフォードでは2014年から実施しているホームレス状態の退役軍人向けの住居提供プログラムを、全ての人を対象に提供し始めた。対象者一人ひとりと専門の支援者が定期的に会って、生活状況の相談や医療等の必要な社会資源の紹介を行う中で信頼を築き、公的補助のある住居の紹介を行うプログラムだ。

プログラムを提供する上で、若者とやり取りする際はFacebookメッセンジャーを使用したり、野球好きの人には住居にテレビがあることをアピールをしたりするなど、対象者に合わせてやり取りの形式や提供価値を柔軟に切り替えている。プログラム担当者は「ホームレス問題を地域で一気に解決できるコツなど存在せず、ひとりひとりの生活課題を解決するアプローチが必要」であり、「公的な制度や資源だけでなく、それを活用できる仕組みが必要だ」と考え、このようなひとりひとりに合わせたプログラムを実施している。

同様の取り組みはすでに全米85都市で展開されている。プログラムを通して浮かび上がった地域課題に合わせて条例改正の動きに発展するなど、ホームレス状態の解決に向けて幅広いアプローチが行われている。ホームレス状態は様々な問題が絡み合い、施策の効果測定も難しい複雑な課題だ。

ロックフォードのプログラムでは、目標を「ホームレス状態の人をゼロにする」絶対目標ではなく、「ホームレス状態の人が望めばいつでも住居を供給できる状態」という相対目標に定めている。このような相対指標はすでに米国のホームレス対策で用いられており、実現可能性の高い中間目標を設定して自治体とNPOの協働を円滑にする狙いだ。人の移動が伴い変化の激しい社会課題に対して、現状を早く正確に捉えて足並みがそろいやすい目標を設定する協働の形は、多セクター協働の参考にできるだろう。

【参照サイト】State of Homelessness
【参照サイト】DISCERNING‘FUNCTIONAL ZERO’