「走行中に排気ガスを出さない車」として近年環境性能が注目される電気自動車。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の電気自動車の累積台数が2018年に500万台を超えたことを発表している。
電気自動車の普及に伴い、さまざまな課題も明らかになってきた。たとえば使用済みバッテリーの取り扱いだ。車載バッテリーは、通常であれば7年から10年ほど使用することで蓄電容量が低下し、交換することになるが、この使用済みバッテリーをただ廃棄するのは資源の無駄になる。そこで現在、多くの自動車製造メーカーがこれをリサイクルできないかと画策しているのだ。
そんな中、自動車製造大手ホンダの英国現地法人であるホンダモーターヨーロッパ・リミテッドが、フランスのSNAM社との提携を拡大し、ハイブリッド車や電気自動車の使用済みバッテリーのリサイクルを欧州で大規模展開していくことを発表した。
SNAM社は、資源のサーキュラーエコノミーを目指し、電池や蓄電池などの技術提供やリサイクル推進を行う企業だ。同社とホンダは2013年以降、使用済みバッテリーのトレーサビリティを確保し、欧州連合(EU)の環境基準に従って廃棄することを目標にしながら、ともに事業を進めてきた。
2社が新たに合意した提携内容は下記の通りである。
まず、欧州22カ国のホンダディーラーはSNAM社の専用オンラインプラットフォームで、使用済みバッテリー(リチウムイオン電池とニッケル・水素充電池)の回収を要請する。回収は15日以内に行われるため、ディーラーにとっては敷地内にバッテリーを保管する必要がなくなることが大きな利点だ。また、SNAM社は認定された廃棄物処理施設からも使用済みバッテリーを回収する。
その後、SNAM社は回収した使用済みバッテリーがリサイクルに適しているかを分析する。分析後の用途は、「セカンドライフ」の再生可能エネルギー貯蔵としてリサイクルするか、バッテリー内に含まれる貴重な材料を抽出するかの2つとなる。バッテリーセルが損傷していて「セカンドライフ」に適さない場合、コバルトやリチウムなどの材料を湿式製錬技術(水溶液中で金属を取り出す方法)を使用して抽出するのだ。
抽出された材料は、新しい電池や顔料、モルタル用の添加剤として再利用できる。銅やその他の金属、またプラスチック等はリサイクルされ、さまざまな用途に使用される予定だ。これを今後は欧州22カ国で展開していくということで、使用済みバッテリーのリサイクルの可能性は大きく広がるだろう。
貴重な資源でつくられた電気自動車のバッテリーを、使用後も有効活用するプログラム。バッテリーのリサイクル体制の確立が各社で課題となる中、一歩を踏み出したホンダの今後の動きにも注目していきたい。
【参照サイト】HONDA HYBRID & EV BATTERIES GET ‘SECOND LIFE’ IN NEW RECYCLING INITIATIVE
【参照サイト】Electric vehicles
(※画像:ホンダモーターヨーロッパ・リミテッドより引用)