海洋プラゴミをエネルギーに換える。スイス発「レース・フォー・ウォーター号」、日本に着港

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最近、ニュースでも取り上げられている、海洋プラスチック汚染問題。既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。そこへ少なくとも年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が、新たに流出している。

これらは既に海の生態系に甚大な影響を与えており、このままでは今後ますます悪化していくことになる。例えば海洋ごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり、生命の危機にさらされたりしている。このうち実に92%がプラスチックの影響、例えば漁網などに絡まったり、ポリ袋を食べ物と間違えて摂取したりことによるものだ。プラスチックごみの摂取率は、ウミガメで52%、海鳥にいたっては90%と推定されている。

このような海洋プラスチック汚染問題に対して物理的な解決策を講じるプロジェクトの例として、2013年に18歳の青年がオランダで立ち上げた「Ocean Cleanup(オーシャンクリーンアップ)」がある。オーシャンクリーンアップは、海洋にあるプラスチックや川を経由して海に向かう途中でプラスチックを除去するためのシステムを設計・開発している。

海洋プラスチックをエネルギーに換える、サステナブルな船

オーシャンクリーンアップとはまた違った切り口で、海洋プラスチック汚染問題に向き合うプロジェクトがある。スイスの財団「レース・フォー・ウォーター」では、海洋プラスチックや太陽、風力、そして水素をエネルギー源に動く船「レース・フォー・ウォーター号」を開発した。この船は世界各地を航海し、海洋汚染に関する実態調査や啓発活動を行っている。2020年4月にはこのレース・フォー・ウォーター号が日本に着港する予定だ。航海の様子はこちらからリアルタイムで閲覧することができる。

2017年、「レース・フォー・ウォーター財団」 は、地球規模の真の環境災害であるプラスチック汚染から海洋を保全する解決策を提供するために、5年間で世界を巡る大航海へ出発。プラスチック廃棄物に付加価値を与え、それらの回収を促進する社会やビジネスモデルを実現することにより、プラスチック廃棄物が水路や海洋に流入することを防止できるという。

航海中に使用するエネルギーも環境に配慮しており、使用する太陽エネルギーは、太陽電池を介して電力に変換され、蓄電されるとともに、プロペラの駆動に使用される。また太陽光に加え、水素エネルギーも用いている。再生可能エネルギーという断続的な電力供給源が生成する水素は、燃料電池を通じて電気に変換できる。水素は時間の経過とともに消耗することはなく、温室効果ガスに影響を与えず、有毒ガスも出ない。また、そうしたエネルギーの観点だけでなく、従来取り付けられる帆の代わりに、風力を推進するを使用しており、化石燃料消費を抑えている。

構想の根幹は「ゼロエミッション構想」

このレース・フォー・ウォーター・プロジェクトの共催である NPO法人「ゼリ・ジャパン」では、プラスチックに由来する深刻な海洋汚染の課題に向き合うため、この計画の根幹にあるゼロエミッション構想(Zero Emissions Research and Initiative)の創始者であるグンター・パウリ氏と協働している。12月都内で開催されたセミナーにて、ゼロエミッション構想の創始者であるグンター・パウリ氏が「レース・フォー・ウォーター」を紹介した。

グンター・パウリ氏

グンター・パウリ氏

グンター・パウリ氏によって提唱されたことは、複数の産業がクラスター(連環)を構築することで、廃棄物を資源として再利用し最終的な廃棄物をゼロにすることを目指すものだ。自然界では、さまざまな種がクラスター化(集積化)することで、廃棄物をださずに生息している。人類も、この自然にヒントを得て持続可能な産業社会システムの実現を目指さなくてはならない、としている。

日本では1994年にスタートし、国連大学は本構想の提唱者であるグンター・パウリ氏を学長顧問として迎え、ゼリ・ジャパンの基本的概念の策定と具体的な取り組みが始まった。

そしていよいよ、「レース・フォー・ウォーター号」が日本へやって来る。今年は日本に注目が集まるオリンピックに向け、海洋プラスチック汚染問題のような環境への取り組みの増加も期待される。ゼロエミッション構想のように産業同士の連携も不可欠であり、加えてこうした取り組みを多くの人が知り、行動につなげていくことが必要だ。着港にあたって研究者や団体、企業や子どもたちとプラスチックの社会課題に関するプログラムを各地で計画しているという。この機会に参加してはいかがだろうか。