水Do!フォーラム2019 使い捨てペットボトルの時代は終わり。イギリスの150地域に展開する給水キャンペーン

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「もはやプラスチックごみの影響を受けない海洋生物はいない。毎年、10万匹もの海洋哺乳動物やウミガメ、100万羽もの海鳥がプラスチック汚染によって命を落としている。私たちが食べる魚介類の中にさえ、プラスチックが見つかっているのだ」

3月13日、東京都内にてイベント『水Do!フォーラム2019 脱プラスチック、そしてその先へ』が開催。そのメインゲストの一人としてイギリスから招聘された「リフィル(Refill:給水の意)キャンペーン」のプログラムマネージャー、ガス・ホイト氏はこう切り出した。

私たち人間の健康さえ脅かしはじめたプラスチック。その最たる製品の一つであるペットボトルを減らそうという取り組みが活発化している。フォーラムでは、イギリスのペットボトル削減事例の共有、さらにライフサイクル全体の環境負荷を低減し、資源の節約や気候変動への対策もふまえた「脱使い捨て社会」への道が議論された。

本記事で紹介するイギリスのリフィルキャンペーンは、そんなペットボトル削減運動の立役者だ。

水Do!フォーラム2019  当日のようす

水Do!フォーラム2019 当日のようす

リフィルキャンペーンが提案するペットボトル削減方法

イギリスの市場調査会社ユーロモニターによると、2016年に世界で生産されたペットボトルのうち、ミネラルウォーター、炭酸飲料などの飲料用が87%を占め、毎年3.9%の割合で増加しているという(※1)

この状況は、日本でもほとんど変わらない(※2)。日本ではペットボトルのリサイクル率が8割と高いため、環境負荷は少ないと思う人もいるかもしれないが、外国産のペットボトルに入ったミネラルウォーターを飲んだ場合と、水道水を水筒に入れて飲んだ場合のCO2排出量は約50倍も違う(※3)。水道水を選ぶことは、気候変動の原因となるCO2排出も防ぐのだ。

そこでキャンペーンでは、水筒を持ち歩けば、いつでもどこでも給水が簡単にできる「給水ステーション」の普及を目指した。IDEAS FOR GOODで以前ご紹介した、オランダの給水スポットを探す「TAP」と似た取り組みである。本キャンペーンでは、公的な場所の給水機だけではなく、カフェやレストランにもお願いし、現在はイギリスの150地域、約16,000箇所にまでステーションを増やしている。

給水ステーション

Image via City to Sea

この取り組みには、多くのボランティアが貢献している。各地域にはコーディネーターがおり、それぞれのボランティアをサポートしながら、給水ステーションの普及や、水を買うのではなく補給することの大切さを伝える活動を活発に行なっている。

キャンペーンのはじまりは、これを運営しているNGO法人、City to Seaの草の根活動だ。創設者は、ブリストル市のテレビ司会者ナタリー・フィー氏。ミッドウェー島のプラスチックごみ汚染に苦しむアホウドリの写真を見て、衝撃を受けたことから、仲間たちと台所のテーブルを囲んで自分たちに何ができるかを話し合った。

給水ステーションを教えてくれるアプリ

そして、City to Seaの活動に大きく貢献するのがアプリだ。イギリス国内の16,000箇所の給水ステーションを地図上に表示してくれる。アプリのユーザー自身が給水ステーションを発見し、登録することもできるので、自然発生的に給水ステーションが増加しているという。

重要なのは、アプリも給水も「無料で」利用できるということ。利用料を取ってはどうか、という意見もあったそうだが、少しでもお金がかかると利用者がミネラルウォーターを買ってしまうかもしれない、という懸念から無料にこだわったそうだ。

City to Sea アプリ

Image via City to Sea

「キャンペーンの目的は、ミネラルウォーターを買う必要性をなくすこと。買う必要がなければ、私たちが買わないで、と言わなくても自然と買わなくなる」とホイト氏。2018年に彼らが行なった調査でも、64%の人が「水道水を自由に給水できるならミネラルウォーターは買わない」と回答しているそうだ。

キャンペーンによるインパクトは大きい。給水ステーションの多くは1日に30回から50回使用されているが、各ステーションが1日に1回だけでも利用されれば、年間約500万本ものペットボトルを減らすことができるという。

こうした動きには、事業者も前向きだ。イギリス最大のカフェチェーンであるコスタ、そしてスターバックスも給水ステーションとしてキャンペーンに参加している。アプリを立ち上げた際には1か月もたたないうちに当初の目標の給水ステーション100件を大幅に上回る200件の登録があり、今も打診した事業者の9割は了承してくれる傾向にあるそう。調査によると、50%から67%の利用者は給水のついでに店舗で何かを買っており、売り上げにも貢献しているようだ。

この給水ステーション拡大の動きは、日本でもはじまろうとしている。今回開催されたフォーラムの主催者である、水Do!ネットワーク事務局長の瀬口亮子さんは「日本の各地でもすでに給水スポットづくりの取り組みは行われている。今年からこれらの主体をネットワークしながら、日本全国に給水スポットを広げていく計画だ」と語った。

リフィルキャンペーンを主導するCity to Seaも、イギリス国外で活動する人たちと連携し、将来的には世界中どこでも給水できる環境をつくりたいという野望を抱いている。

「解決策は、私たちの手の中にあると確信している」とホイト氏。美味しく、楽しく、節約しながら使い捨てペットボトルを減らす世界中の取り組みが、拡大していく予感大だ。

※1 イギリスの市場調査会社ユーロモニター調べ。『「脱使い捨て」でいこう!世界で、日本で、始まっている社会のしくみづくり』(瀬口亮子著)
※2 ペットボトルの約9割が清涼飲料や酒類の容器として利用されている。京都市ごみ減量推進会議より
※3 東京大学・平尾雅彦研究室による試算。水Do!ネットワークより

【参照サイト】Refill
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