新型コロナウイルスの感染拡大防止にむけて、国会や自治体では今後の対策が活発に議論されている。日々報じられる政治の動きに対して、関心を持ち始めた人もいるのではないだろうか。
そんな中、政治に関心があるU30世代を対象とした政治メディア「NO YOUTH NO JAPAN」がSNSで注目されている。NO YOUTH NO JAPANのインスタグラムのフォロワー数は2万2000人を超え、多くのミレニアル・Z世代を中心に支持を集めている。なぜ「政治」というテーマに、ここまで多くの人が関心を持つようになっているのだろうか。今回、コロナ禍で精力的に活動を展開するNO YOUTH NO JAPANに迫った。
「政治の話はタブー」の時代は終わった
「若者は政治に関心がない」。そういった言葉を聞いたことがある人も少なくないだろう。実際に、2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙では、全年代を通じた投票率は53.68%だったのに対し、10代が40.49%、20代が33.85%、30代が44.75%という結果だった。
そういった若者の投票率の低さへの違和感から活動を開始したのが、NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子さんだ。もともと日本の投票率の低さに問題意識を持っており、大学2年時に選挙インターンをしていた能條さんは、同世代の間で政治について考える材料がないことに気づいたそうだ。当時参加したイベントをきっかけに北欧の80%の投票率の高さに感化され、実際に北欧へ行くことを決意。留学先のデンマークでは、北欧のカルチャーを発信するメディア「わたしたちの北欧がたり。」を立ち上げ、デンマークの政党の青年部や政治参加を支援する団体にインタビュー。若者が政治に参加していく土壌が整っていることに、とても刺激を受けたそうだ。
その中で能條さんは、彼ら・彼女たちは「change(変える)」ではなく「make a difference(違いを作る)」という言葉を良く使うということに気付いた。私も、社会を変えることは難しくても今の社会に違いをつくる一人にはなれる。この「make a difference」の言葉に励まされ、日本で若者が政治について考え合えるプラットフォームを作ろうと決意した。
内なる声を、どう社会に届けるか
家族や友人同士で政治の話をしたり、SNSで政策のシェアをしたりするデンマークのカルチャーがクールに見えたことから、自分たちの社会は自分で作っていけると確信した能條さん。2019年7月に行われた参議院選挙に向け、早速デンマークからSNSでプラットフォームの企画を提案し、100名ほどのメンバーとともに、日本とデンマークの間で活動を開始した。
コンテンツだけでなく、特にこだわったのが人々の目を引き、シェアしたくなるようなデザインだ。開始当初から基盤のデザインを担当するデザイナーの平山みな美さんは、各政党がブランドイメージとして使用するカラーと被らず、若者のフレッシュ感を意識したオレンジとミントグリーンの2色をメインカラーに選んだ。こうしたわかりやすいコンテンツとポップなデザインが話題を呼び、開始たった2週間でフォロワーは1万人に達したそうだ。
2020年からは1か月に1テーマを決めて発信し、教育、貧困、ジェンダー平等といった自分自身の関心テーマから政治を考える入り口を作っている。最近は新型コロナウイルスを通して多くの人が政治への関心をもつタイミングと重なったことで、U30世代にとって身近なメディアになっている感触もあるそうだ。
私たちが生きたい社会をつくるために
現在、20代の投票率は30%程であり、7割の声が届いていないことに大きな問題がある、と能條さんは話す。NO YOUTH NO JAPANの運営メンバーの8割が大学生ということもあり、学生だけでできることが限られているため、世代や所属を超えて協働しながら社会に大きなインパクトを与えたいそうだ。加えて、NO YOUTH NO JAPANのフォロワーは9割以上が若者(10代後半から30代前半)、約8割は女性である。政治的な発言権に関して、弱い立場に置かれている「女性」「若者」。実際に、政治分野における日本のジェンダーギャップ指数は153ヶ国中144位であり、女性の参画は諸外国と比べてもとても少ない。NO YOUTH NO JAPANを通じて、十分に政治に声が届いていない層のエンパワメントをしていきたいそうだ。
政治は市民が育てていくものであり、市民同士のやりとりから政治は変わる。上から目線ではなく、みんなで一緒に考えるメディア作りを心掛けているNO YOUTH NO JAPAN。彼女たちの挑戦は、今後誰もが政治について声を上げられる文化の醸成につながっていくはずだ。