食品ロスも飢餓もない未来へ。太陽光で動くオフグリッド冷蔵庫「NILO」

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暗い夜を明るく照らして、私たちの生活の幅を広げてくれる電気。しかし今、世界には電気にアクセスできない人が約8億4000万人いる。電気がない場所では冷蔵庫を使った食品保存も困難であるため、清潔な食品へのアクセスが制限されることもしばしばだ。

冷蔵庫は日本では一般的な家電であるが、家庭で最も消費電力が大きい電化製品は電気冷蔵庫で、その割合は14%にのぼる。エネルギー効率とコストのバランスを保ちながら設計、開発することが難しい機器の一つであり、冷蔵庫のエネルギー効率を高めるには最新技術が必要になる。

そんな冷蔵庫が持つコストパフォーマンスの悪さと、電気の通っていないオフグリッド地域の食料安全にアプローチすべく開発されたのが、ブラジルのYOUMMA社が開発した冷蔵庫「NILO」だ。

電球一つとほぼ同じ定格消費電力(13,3W)で容量が42リットルのコンパクトサイズと容量96リットルの2種類あり、その電力消費量は日本で販売されている同等サイズの最新冷蔵庫の半分以下だ。ソーラーパネルとバッテリーを使って稼働できるのが特徴で、60Wpのソーラーモジュールと30Ahのバッテリーを用いると、42リットルのNILOを24時間稼働することが可能だ。

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また、エネルギー効率の高さの理由は、高性能のコンプレッサーとインバーターにある。エネルギー消費を抑えられるコンプレッサーを使って冷媒を圧縮して冷却し、さらに起動電力を小さくすることでエネルギーの消費を最小に抑えることができる仕組みだ。

電気にアクセスできないアジアやアフリカなどの貧しい農村地帯に住む人々にとって、高価な冷蔵庫を購入することは難しい。こういった現状を考慮して、高いエネルギー効率をもちながら手頃な価格でつくられたのがNILOだ。実際の価格は未定だが、平均的な冷蔵庫の40%未満の価格になることが発表されている。

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国連の持続可能な開発目標を行動理念とするYOUMMA社の目標は、冷蔵庫へのアクセスを可能にすることで電気のない場所に住む人々の生活の質を向上させること。具体的には、クリーンエネルギーである太陽エネルギーを利用することでオフグリッドの地域における食品保存をより安全にして食品へのアクセスを促進。また、バリューチェーン全体の新しく持続可能な繁栄を目指す。

同社は2019年、このコンプレッサーとインバーターの効率向上促進に関する研究開発と、メーカーとのパートナーシップを通じて現地組立を開拓したことが評価され、オフグリッド製品に関する国際的コンテストGlobal Leap Awards(※1) 2019で優勝もしている。

ソーラーパネルで動く、低コスト冷蔵庫NILO。今後オフグリッド地域では、生産者から消費者へより衛生的に安全な食品が届き、人々の健康状態と生活の質の改善が期待される。NILOは食品ロス削減と飢餓解決に貢献する大きな一歩となるかもしれない。

※1 Global Leap Awardsは、アフリカの電気へのアクセスを増やすことを目的とするイニシシアティブであるPower Africaと英国が支援するイニシアティブが行うコンテスト。

【参照サイト】YOUMMA
【参照サイト】国際連合広報センター
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Edited by Tomoko Ito

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