牛乳からTシャツをつくる、米ロサンゼルス発のスタートアップ「Mi Terro」

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近年、資源の枯渇や環境汚染といった問題を背景に、ファッション業界で「サステナブル素材」が台頭してきた。CO2排出量を抑えるため、脱石油系繊維の視点が根幹にはあるものの、原料にこれまで廃棄されていたものをうまく利用できれば、食品ロスやごみ問題にも同時にアプローチできる。

米ロサンゼルス発のスタートアップMi Terro(ミ・テロ)は、余った牛乳からTシャツを製造する。2019年6月にオンラインで販売を始めてから今まで、40ヶ国以上でTシャツが販売された。

同社によれば、農場や食品加工センター、食料品店などから、世界全体で毎年1億2800万トンもの牛乳が余剰となり廃棄されているとのこと。CEOのロバート・ルオ氏は創業のきっかけとして、伯父が中国で経営する酪農場を2018年に訪れ、酪農場から出荷もされずに捨てられる大量の牛乳を見てショックを受けたときのことを振り返る。乳製品は主要な食品廃棄物の一つでありながら、世界中で具体的な有効利用がほとんどされていない。そうした現状を変えられないかと、化学博士の友人らと試行錯誤した末に余った牛乳で作られたファッショナブルな「牛乳Tシャツ」が生まれたという。

Mi Terroの牛乳Tシャツ

Image via Mi Terro

製造は、まさに伯父の農場を含めた複数の提携先から余った牛乳と乳製品を調達するところから始まり、集めた牛乳を独自の方法で発酵、脂質の除去、乾燥させ、粉末状の物質を得る。そのあと仕上げに粉末を再び水に溶かし、不要なタンパク質などを取り除くと、残った繊維が糸になる。ルオ氏は、現在開発を進める第ニの製法がまもなく実現すれば、液体状の牛乳から繊維を直接取り出せるようになり、コットンの製造過程に比べて60~70%もの水が節約できるようになると語る。

できあがったTシャツは、約15~20%を牛乳由来の繊維、残りはブナの木由来のマイクロモダールという、こちらも環境負荷の少ない繊維を掛け合わせて作られている。無臭で、通気性、伸縮性ともに優れたシャツの品質には定評があり、綿の3倍柔らかいと同社は謳う。

Mi TerroはミルクTシャツ以外にも、天然コルクと海から回収したプラスチックごみで作ったバッグを販売している。また、米国のNPO「The Eden Projects」と提携し、Tシャツが1枚売れるたびに15本の木を植えるなど、環境課題へ取り組むことが事業の起点にある。

同社はすでにアパレルや乳製品の大手企業と提携があり、今後その輪はさらに広がりそうだ。技術開発と規模拡大を合わせることで、製造過程における低コスト低炭素排出を進められれば、「酪農廃棄物のタンパク質から繊維を作る」という大きな循環を生み出せるだろう。

ルオ氏は公式Youtubeチャンネルで「これからは、ヘルスケアや包装関連事業などへも応用していきたい」と語っており、可能性は非常に大きい。話題性があっても実際には持続しきれない「サステナブル事業」も数多くある中、Mi Terroのファッションテクノロジーには大いに期待ができそうだ。

【参照サイト】Mi Terro

Edited by Kimika Tonuma

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