良い食品を低価格で。英国で広まる「ソーシャル・スーパー」とは

Browse By

まだ食べられる食品を引き取り、生活困窮者などに無料で提供する「フードバンク」という活動を耳にしたことがある人は多いだろう。

イギリスでは、特に新型コロナウイルス感染症の流行が始まって以来、フードバンクの需要が増加している。2000年に同国初のフードバンクを開いた、トラッセル・トラストという慈善団体のフードバンク数は、2021年2月時点で1,300以上にまで増えたそうだ(※1)

このような状況のなか、同国で、フードバンクの進化系とも言われる「ソーシャル・スーパーマーケット」が増えてきていることはご存じだろうか。

ソーシャル・スーパーマーケットは、食品を大幅に値引きした価格で販売する。会員制を導入している場合が多く、たとえば年間15~20ポンド(約2,400~3,200円)の会費を支払うと、毎週木曜日に3ポンド(約500円)で買い物ができるといった仕組みになっている。

ソーシャル・スーパーマーケットの良い点は、利用者が一定の金額を支払うことで、選べる食品の幅が広がることだ。また、利用者の「施しを受けている」という認識が薄まり、彼らの尊厳を守ることにつながる。

2013年に、サウス・ヨークシャーでソーシャル・スーパーマーケットが試験的に始まって以来、取り組みは徐々に広まっている。2014年には、ランベスという場所にロンドン初のソーシャル・スーパーマーケットがオープン。2015年にはロンドン市が、ソーシャル・スーパーマーケットを資金面で支援すると発表した。

2022年9月には、ロンドンの中心部に位置するシティ・オブ・ロンドンにも、ソーシャル・スーパーマーケットがオープンする予定だ。すでにフードバンクを実施している教会の一部を、ソーシャル・スーパーマーケット用に使うという。

「通常のスーパーマーケットかフードバンクか」の二択にするのではなく、人々の変化する経済状況に応じて、支援にグラデーションを取り入れるのは良いことではないだろうか。「自分がのけ者にされている」と感じる人のいない社会をつくっていきたい。

※1 Food Banks in the UK – House of Commons Library
【参照サイト】The Community Shop – fighting food waste and food poverty – Love LambethLove Lambeth
【関連記事】「生活に困った高齢者」専用の無料スーパー、米アトランタにオープン
【関連記事】食品廃棄を減らし、貧困層の生活も支える。カナダの「値札のないスーパー」とは?
【関連記事】“I’m Hungry” たった一言で生活困窮者が食事を注文できるプラットフォーム「Bento」

FacebookTwitter