世界一履きやすい靴で、まちを綺麗に。Allbirdsとgreenbirdのみんなが幸せになるコラボ

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SDGs(国連持続可能な開発目標)の17番目に掲げられている目標、「パートナーシップ」。社会課題の解決や循環型のまちづくりを進めるうえで、他者との協働は欠かせない。特に、社会課題の現場に精通し、地域に根付いた活動をしているNPOと、課題解決リソースを持つ企業とのコラボレーションの重要性はかつてないほどに増している。

しかし、そのコラボレーションを持続可能にするためには、企業からNPOへの一方的な支援ではなく、お互いが有益な価値を相互に与えあうwin-winの関係が必要だ。

そんななか、まさにそのモデルケースとも言えるユニークなコラボレーションを実現しているのが、ごみ拾い活動を展開するNPO法人greenbird(グリーンバード)と、米国発のサステナブルライフスタイルブランド、Allbirds(オールバーズ)だ。

greenbirdは、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに掲げる、原宿・表参道で始まった街のゴミを拾うプロジェクト。個人をはじめ、企業・団体など、コミュニティの輪は原宿表参道のみならず全国各地、そして海外へと活動が広がっている。

一方のAllbirdsは以前IDEAS FOR GOODで紹介した、2020年1月に日本初の店舗を原宿にオープンしたばかりの米国発サステナブルライフスタイルブランド。自然由来の原材料を使用してシューズをはじめとするアパレルグッズを製造し、調達から販売まで発生する二酸化炭素の削減に尽力している企業だ。

今回実現したコラボレーションの仕組みは、Allbirdsが廃棄予定のシューズをgreenbirdに寄付し、その靴を履いて一緒に両者の拠点である東京・原宿エリアのクリーンアップ活動を行うというものだ。

Allbirdsは、廃棄予定シューズを有効活用できるだけではなく、クリーンアップ活動への参加を通じて地域とのつながりを作ることができる。また、「世界一履きやすい」と称されるAllbirdsのシューズが売れるためには、そのシューズを履いて歩きたくなるような綺麗な道や楽しいまちが必要だ。その意味で、クリーンアップ活動によるまちの環境保全は長期的に自社の事業のサステナビリティにも直結する。

一方のgreenbirdにとっては、Allbirdsの履きやすい靴が街を歩き回る運営メンバーの足元をサポートするだけではなく、ごみ拾いをオシャレでカッコイイ活動に見せることができ、モチベーション向上にもつながる。また、同じ地域に根ざす企業の社員との交流を通じて、立場を超えてまちづくりの仲間を増やすことができる。

「ゴミ拾い活動を担うNPO」と「ファッションブランドを営む企業」とのコラボは一見異色にも思えるが、ともに協働を通じて得るものがあり、win-winの関係を構築しているのだ。同じ “bird” でつながった両者は、どのようにこのような素敵な取り組みを実現したのだろうか。

今回IDEAS FOR GOOD 編集部では、2020年10月某日に行われた記念すべき初回の共同クリーンアップに参加してきた。当日の様子も交えながら、greenbird理事長兼表参道チームリーダーの福田圭祐(ふくだ けいすけ)さんとAllbirdsのマーケティングディレクター蓑輪光浩(みのわ みつひろ)さんから伺った話と共に、企業とNPOによる共創モデルのポイントをご紹介したい。

左:greenbird福田さん 右:Allbirds蓑輪さん

左:greenbird福田さん 右:Allbirds蓑輪さん

きっかけは「地域コミュニティに貢献したい」という想いから

グローバルに展開するブランドでありながら、それぞれの店舗を構える地域コミュニティとの関わりを大切にしているAllbirds。そしてNPO団体として企業からの活動支援を受け入れているgreenbirdにとって、両者のコラボレーションはとても理想的な形だった。Allbirdsの蓑輪さんは今回の協働に至ったきっかけを教えてくれた。

「日本へ進出した時から原宿の文化的背景を理解していくなかで、もともと地域社会へ還元できる活動がしたいと思っていました。そこで、現場のスタッフから活動アイデアを募集したとき、greenbirdを知っているスタッフから『自分たちもゴミ拾いをしてみたい』という声があったので、それを採用しました。」

元々は現場スタッフのアイデアから始まった取り組みだったが、蓋を開けてみると、双方の課題やニーズを満たす、まさに理想としたコラボレーションの形だったのだ。お互いにどのような課題があったのだろうか。

開始前の準備する様子

ゴミ拾い開始前に、準備する様子。Allbirds原宿店にて。

一方的支援ではなく、お互いのニーズを満たすwin-winなソリューション

ファッション業界が抱える課題の一つは、製品の廃棄量の多さ。売れ残った商品を販売するファクトリーアウトレットストアなどが存在するが、そこでも売れなかった場合は廃棄せざるを得ない。Allbirdsの場合は、サービスとして提供している30日間の返品保証で返却されてしまうシューズの行き場がなく、課題となっていた。

まだ数回しか履かれていないが、返品されたシューズの靴底が多少汚れてしまっているため、新品として販売をすることができない。Allbirdsでは、返却された靴のセカンドライフをどう作るか考えていたのだと蓑輪さんは言う。

「ひとつのソリューションとして、米国ではSoles4Souls(ソールズフォーソールズ)というプログラムがあります。返品された靴を恵まれない方々に送る取り組みなのですが、このプログラムに参画する場合、船で靴を米国に送らなくてはならず、環境負荷や多面的に考慮するとベストな案とは言いきれず、別の方法を探していました。」

また、greenbirdとしても、多くの企業から協賛や寄付という形で支援されることはとても有難いと感じていた一方で、お金ではなく、その企業にしかできないユニークな支援のありかたを求めていたところだった。

そこで生まれたのが、Allbirdsの返品されて行き場を無くしていた靴をgreenbirdへ寄付し、Allbirdsのスタッフと一緒にゴミ拾いをするという形のコラボレーションだった。Allbirdsが原宿に出店して以来、同じく拠点を原宿にするもの同士一緒にできることはないかと考えていたgreenbirdの福田さんも、信じがたいほど嬉しいアイデアだと話す。

「Allbirdsの返品されて行先に困っている靴の提供先としてgreenbirdを選んでいただいたことが嬉しかったです。これまでビブスや軍手、ごみ袋などの清掃用具をいただくことはありましたが、靴を提供して頂くのは初めてのことです。スポーツ選手になったようだとメンバーも喜んでいました。」

全国で活動しているgreenbirdとの連携は、Allbirdsが今後全国に展開する際にもタッグを組み、継続的に活動ができるため、長い付き合いができる点もAllbirdsにとっては魅力の一つだった。こうして双方は意気投合し、初回の活動ではgreenbirdメンバーとAllbirdsの店舗スタッフが集まり、ゴミ拾いを行った。

モットーは「楽しく」活動をすること

greenbirdは楽しく、気軽にゴミ拾いをすることを意識している。グリーンとピンクの二種類あるゴミ袋をランダムに配布し、燃えるゴミと燃えないゴミの分別ができるだけでなく、自然に参加者同士のコミュニケーションが生まれるような工夫もあった。

初めに約30分で回れそうなルートを決め、ゴミを拾いながら進んでいく。

普段街を歩くときは目線を下に落とさないのでなかなか気が付かないが、きれいな印象を持つ原宿・表参道エリアでも、ふと視線を下げてみるといくつものポイ捨てされたゴミが目に入ってくる。

話をしながら拾う人もいれば、無我夢中にゴミ拾いをする人もいる。参加スタイルも人それぞれで、無理がない。それがgreenbirdが長く続いている理由でもある。

自分の持っていないほうの色の袋を持った人を探し、「お願いします」といいながらゴミを入れている様子も。

コラボがつながりを生み、つながりがコラボを生む

実際に活動した感想を蓑輪さんに伺うと、まだまだ続けたいと笑顔で話してくれた。

「ゴミ拾いは一人ですると恥ずかしいけれど、みんなでやると楽しく、強制的にやらされている感じがありません。この緩さがちょうど良いと感じました。自発的に取り組む活動は自然と周りに賛同する人が増えていきますよね。みんながやりたいと思えることを実現していき、有機的に社会に貢献できるムーブメントになると良いと思っています。」

福田さんも、今回の取り組みを通じたことに大きな意義と価値を感じたと語る。

「今後は、Allbirdsのファンのみなさんとも一緒にgreenbirdの活動をしたり、店舗を使わせていただき一緒に講演会やイベントを開催したりと、もっと新しいことを仕掛けたいと考えています。今後の可能性も含め、単なるコラボレーションより一歩先に行けたのではないかと感じています。今回の取り組みは、僕らが求めていたAllbirdsという企業にしかできないサポートの形でした。これからは金銭的なサポートだけを得る時代ではなく、このように何かを共創する事例が作れるとNPOの可能性が広がるのではないでしょうか。」

実際に初めてgreenbirdの活動に参加したAllbirdsのメンバーからは、みんなで取り組むことで「ゴミ拾いのハードルが下がった」という声もあった。このように個人にとっても気づきが得られるよい経験になったのではないだろうか。

編集後記

一見すると、greenbirdとAllbirdsの共通点は、原宿を拠点にしていることと”bird”という名前だけだ。しかし、実はそれ以外にも両者には「地域のなかで人と人とのつながりを大切にしたい」という共通の想いがあった。根底に同じ価値観があったからこそ、今回のようなコラボレーションが実現できたのではないだろうか。与える、与えられるの関係を超えて、同じ方向を向いて協働できるパートナーとなることで、はじめてそのパートナーシップは持続可能なものになる。

Allbirdsはシューズの提供を通じてgreebirdの参加者にハッピーを提供し、greenbirdはゴミ拾いという体験を通じてAllbirdsのメンバーにハッピーを提供する。そして、そのコラボレーションで原宿のまち全体が美化されていき、地域の人がハッピーになる。誰もが幸せになる、理想のコラボレーションだ。

読者の皆さんの中には、企業としてどのように社会課題の解決に取り組んでいけばよいか悩んでいる方も多いかもしれない。そんなときは、社員の声を聴いてみたり、オフィスを出て周辺のまちを歩いてみたりするのも有効だ。ユニークなコラボレーションのヒントは足元に落ちている。そんなことを感じた1日だった。

【参照記事】世界一履きやすいスニーカーブランド「Allbirds」に学ぶ、愛されるサステナビリティ
【参照サイト】greenbird 公式HP
【参照サイト】Alllbirds 公式HP

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