京都から日本の祭りに「ごみゼロ」を。50万人が参加する祇園祭でリユース食器を導入

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もうすぐ夏祭りの季節。かき氷にたこ焼き、焼き鳥にビール!出店の食べ物をつまみながらそぞろ歩きするのは夏祭りの楽しみの一つだが、食べ物や飲み物が入っていた容器の包装ごみが毎回大量に出て、ごみ箱に溢れかえっているのは困りものだ。

最近は、洗って何度も使えるリユース食器を導入するイベントやお祭りが増えてきた。ごみの発生を防ぐ方法としては有効だが、通常は3,000〜5,000人規模の祭りがほとんどだ。

ところが2014年、長年リユース食器の導入を実践・推進してきたNPO法人地域環境デザイン研究所ecotoneが、約50万人以上が参加する日本三大祭の一つ、京都の祇園祭を舞台に21万食ものリユース食器を導入。京都のごみ収集運搬業者の組合や京都市、多くの露店、そして京都で活躍する幅広いNPO/NGOの協力を得て、ごみの分別回収も行なった。名付けて「祇園祭ごみゼロ大作戦」である。

祇園祭ごみゼロ大作戦の効果は?

祇園祭は山場となる山鉾巡行前の宵山行事期間中、まちなかに多くの露店が並び、道沿いの飲食店やコンビニなどでも飲食物が販売され、多くのごみが発生する。ごみゼロ大作戦導入の結果、2013年に約57トンあったごみを約42トンまで削減(2014-2018年平均)。一人あたりのごみの量も、開始前の2013年は約114グラムあったものが約88グラムまで減っている。祇園祭ほどの規模のお祭りにリユース食器が導入されるのは日本初、世界初の試みとして注目を集めた。

祇園祭ごみゼロ大作戦

(c) 祇園祭ごみゼロ大作戦

ごみゼロ大作戦では、ボランティアが大いに活躍した。祇園祭では、学生から社会人、留学生、さらに遠方からの参加者も合わせてのべ約2200人、天神祭でものべ835人ものボランティアが参加したという。

ごみゼロ大作戦で活躍するボランティア

ごみゼロ大作戦で活躍するボランティア。 (c) 祇園ごみゼロ大作戦

実は筆者も、この記念すべき第1回祇園祭ごみゼロ大作戦にボランティアとして参加している。リユース食器の回収やごみの分別回収を行う「エコステーション」にいたところ、ペットボトルなどの飲料容器、お好み焼きなどが入っていたプラスチック容器などがひっきりなしに集まり、数分もたたないうちにごみ袋の山ができる様子に圧倒されっぱなしだった。それだけに、リユース食器が返却されると「これでごみを減らせたことになる!」と嬉しくなったりもした。

全国の祭りに広がるリユース食器の導入

露店に置かれているリユース食器1_有川

露店に置かれているリユース食器

ごみゼロ大作戦の実施によって、祇園祭に参加した人たちの意識の変化も見られた。京都大学名誉教授の高月紘先生は「多くのお客さんやボランティアの皆さんが資源を分別したり、リユース食器を使ったり、返却したりという体験をすることで、日常でもごみを減らすきっかけになる」と指摘している。

お祭りでもらえるリユース食器

(c) 祇園祭ごみゼロ大作戦

ecotone代表理事の太田航平さんによると、実際、ボランティアとして参加した人が、自分が住む地域のお祭りにリユース食器を導入する例が多くあるという。たとえば東京の築地本願寺で開かれる盆踊りに、2019年は初めてリユース食器が導入される。4日間で約12万人が訪れ、多くの夜店が立ち並ぶお祭りだけにごみの量も多く、効果が期待される。このきっかけをつくったのは、祇園祭に例年ボランティアに参加していた龍谷大学の学生や教員だそうだ。

さらにうれしい展開も生まれている。祇園祭同様、日本三大祭の一つ、約130万人もの人が参加する大阪の天神祭でも2017年から「天神祭ごみゼロ大作戦」がはじまった。初年度は、全長1kmほどの南天満公園のみの活動だったが、4万食分のリユース食器を導入、エコステーションを14箇所設けた。その結果、資源ごみの回収ができた他、散乱ごみが驚くほど少なくなったそうだ。

ごみの散乱ビフォーアフター

左:2016年 右:2017年 (c) 天神祭ごみゼロ大作戦

「ごみを出した人がその責任を負う」仕組みへ

今後の課題について、太田さんは「排出者責任(廃棄物についての責任を規定したもの)」の仕組みづくりをを挙げた。今のところ、集まったごみを処理する費用は、京都の場合、町内や露店商が負担しており、コンビニや道沿いの飲食店などは負担していない。

そしてごみゼロ大作戦の実施費用は寄付金と企業協賛、京都市などからの補助金や助成金で成り立っているが、こちらもいつまで続くかはわからない。ごみ問題を継続的に解決していくには、「ごみを出した人がごみの処理費用を負担する」基本的な仕組みをつくることが重要、というわけだ。

そもそも、資源は有限であり、昨今の海洋プラごみ問題を鑑みても、ごみを出す人が何の負担もなく捨てられる時代は終わらせる必要がある。日本のお祭りを、暮らしを、脱使い捨てにシフトさせる京都、祇園祭からはじまる挑戦にこれからも注目していきたい。

2019年の天神祭のボランティアはまだまだ募集しているそう。(※ボランティアに参加するためには事前説明会への参加が必要)

▶祇園祭:祇園祭ごみゼロ大作戦2019 ボランティアスタッフ募集要項(最終説明会は7/8)
▶天神祭:天神祭ごみゼロ大作戦 ボランティアスタッフ募集(最終説明会は7/20)

また、「祇園祭ごみゼロ大作戦」、「天神祭ごみゼロ大作戦」それぞれで2019年7月25日まで寄付も募っている。集まった寄付はボランティアコーディネートや、取り組みの成果を多くの人に知らせる広報などに使われる。お祭りごみの削減、ごみの少ない暮らしへのシフトを応援してみてはどうだろうか。

▶祇園祭:祇園祭をごみゼロに!
▶天神祭:あなたの寄付で天神祭をごみゼロに!

【参照サイト】NPO法人地域環境デザイン研究所ecotone
【参照サイト】祇園祭ごみゼロ大作戦
【参照サイト】天神祭ごみゼロ大作戦
【参照サイト】築地の名店が大集合!第72回築地本願寺『納涼盆踊り大会』開催!

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