「偶然」を取り戻す。”本に伸ばした手が重なるような出会い”をデザインするオンライン書店

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──読書が大好きな主人公の月島雫が、図書館で借りた本の貸出カードにいつも「天沢聖司」という名前が書かれていたことからその存在を意識しはじめ、2人の関係が始まっていく。ジブリ映画「耳をすませば」で描かれる偶然のロマンチックな出会いに憧れた人も多いのではないだろうか。

現代のデジタルを基盤としたサービスでは、こうした「偶然の出会い」が生まれづらくなりつつある。ユーザーの属性やWEB上での行動を記録・データ化し、その分析結果に基づいて、各人が好みそうなモノ、いわゆる「最適解」と呼べるものをおすすめすることが可能になったためだ。

そんな現代に「予期せぬ出会い」を生み出そうとしているのが、“感性先行型”マッチングサービスの一面を持ち併せたオンライン書店「Chapters bookstore(チャプターズ・ブックストア)」である。

Chapters bookstore

Chapters bookstore

「オンライン起点の出会いがスタンダードになりつつある時代だからこそ、『出会い方』にもこだわりたい」「本棚で手と手が重なる瞬間を現実に生み出したい」──そんな想いから生まれたChapters bookstoreは、ユーザーと本の、そして本を通じた人と人との「偶然の出会い」を提供する月額サブスクリプション型のサービスだ。ユーザーは毎月独自テーマのもと選ばれた文庫本4冊のなかから1冊を選んで購入。さらに、自分と同じ時期に同じ本を読んだ人とつながり「アペロ」と呼ばれる独自のビデオチャットで本の感想を共有できるのだ。

デジタル時代の出会いに、感性や偶然性といった定性的な価値感を取り込む理由は何なのだろうか?Chapters bookstoreを立ち上げた株式会社MISSION ROMANTICの代表である、森本萌乃さんにお話をうかがった。

話者プロフィール:森本萌乃(もりもと・もえの)

1990年東京生まれ。2013年に新卒で広告代理店に入社後、外資とスタートアップへの二度の転職を経験。映画「耳をすませば」に影響を受け、本棚で手と手が重なる瞬間を現実に生み出すことを目的に、2019年、株式会社MISSION ROMANTICを創業。効率化・合理化が加速する現代社会において、偶然・運命・フィーリングを信じ、出会えるもの・人と同様に「出会い方」にもこだわるプロジェクトを手がけることをミッションに、前身のサービスMISSION ROMANTIC bookを経てChapters bookstoreを2020年秋より始動。 photo / koji Takayanagi

キーワードは「偶然」「感性」。同じ本に伸ばした手が重なるような出会いを

Q. Chapters bookstoreを始めた経緯を教えてください。

私はもともと、デジタルサービスにおける「偶然のなさ」や従来のマッチングサービスの「スペックで相手を判断する」ような仕様に違和感を抱いていました。そこで、合理性や成約率を追及するのではない、出会いそのものに喜びを感じるようなサービスを形にしてみようと決め、本を通じたアナログな出会いの場を提供するマッチングサービス「MISSION ROMANTIC book」を手掛けたんです。ユーザーにリストからピンとくる本を選んでもらい、運営側で「同じ時期に同じ本を読んだ人同士」を引きあわせるというのがサービスの流れ。同じ本を読んだ人同士で一緒にディナーに参加してもらうイベントを行い、本の感想を話す機会を提供していました。

森本萌乃さん

森本萌乃さん

このサービスが好評をいただいて、「やはり私と同じようにオンライン起点の出会いに疑問を持っている人がいるんだな」と実感しましたね。しかし、会場を借りて行うオフラインでのディナー会には、参加できる人数が限られてしまうため、多くのお客様に順番を待っていただいていたんです。もっと多くのお客様にサービスを提供できるかたちにする必要があったこと、そして新型コロナの影響で対面で食事をすることが難しくなったことから、今回Chapters bookstoreというオンラインサービスとしてリニューアルすることを決めました。

Q. 本を起点とした出会いにこだわるのは、なぜでしょうか。

従来のマッチングサービスなどオンライン起点の出会いでは、相手の年齢やスペックを見ながらの合理的なマッチングが幅を利かせていて、出会いにおける「偶然性」が排除されているように感じていました。そこで「偶然性を取り入れた、他の出会い方ができないかな」と考えて思いついたのが、本を通じた感性先行型のマッチングサービスだったんです。

「本」をサービスの起点にしたのは、本が様々なテーマを網羅しているから。そして、個々人の選ぶ本にそれぞれの趣味嗜好が色濃く反映されるからです。本は歴史、SF、スポーツ、料理など、どんなジャンルもカバーしているので、誰もが関わることができますし、感性でマッチングするという目的にも合った方法だと思いました。

Chaptersの考える理想の出会い方

Image via Chapters Bookstore

本も感性で選んでほしいから──著者もタイトルもあえて隠す

Q.利用者はどのように本を購入するのでしょうか。

Chapters bookstoreは月額制のサブスクリプションサービスです。月ごとのテーマに沿って紹介される4冊の本のなかから好きな本を1冊選んでもらい、自宅にお届けしていきます。

特徴は、タイトルと著者名を「あえて隠した状態で」本を選んでもらうことですね。皆さんにお見せするのは、その本の簡単な説明や選書の理由、毎月迎えるゲストクリエイターに本の内容を表現してもらったクリエイティブワークのみです。

例えば12月のテーマは「本で笑う」、ゲストクリエイターはカメラマンのカツヲさんでした。「ふふっ」「クッ」「にこっ」……それぞれの本から得られる「笑い」のニュアンスを表現するような写真を撮ってもらい、利用者がどの本が好きか感覚的に判断するときの参考にしてもらいました。

Chapters Bookstoreの本

森本さん「『どの本が読みたい?』『どれに興味がある?』と頭で考えてもらうような問い方をするのではなく、写真や本のざっくりとしたイメージを提示することで『この中でどれが好き?』っていう感覚的な問いかけに変換する、というイメージでしょうか」Image via Chapters Bookstore

こうしてタイトルや著者を隠すのは、もっと直感や感性を大事にして本を選んでほしいからです。「あの有名な作家の作品だ」「○○に関する本だ」といった情報は、ときに先入観となってしまい、ありえたかもしれない新しい出会いを妨げてしまいます。

また、Chapters bookstoreをきっかけに読書を始めたい人にしてみたら、いきなり本のタイトルなどを見せられて「どの本が読みたい?」と聞かれるより、写真などのイメージを見てピンとくるものを感覚的に選ぶほうが、本を選びやすいのではないかと思います。

Q. Chapters bookstoreで取り扱う本は、どのように決めているのでしょうか。

Chapters bookstoreで取り扱う本は全て文庫本、内容は読み終わったあとに誰かと感想を共有したくなるような読後感であることを念頭においています。実際に選書に関わるのは、現役の書店員さん2名と私、計3名がメインです。まずは、あらゆるジャンルの本を熟知している書店員さんの視点で面白い本をピックアップしてもらいます。そのあと私が、それらの本を読んで”味見”。採用する際の判断の基準のひとつは、本の冒頭100ページを読んでみて、自分がその本の世界にすっと入り込めるかどうか。あまりに小難しかったり、逆にライトすぎると本を読み進めるってしんどいですよね。読書があまり得意でない方や、久しぶりに本を読んでみようという方でも、抵抗なく読み進められるように、そしてもちろん本好きの方にも「面白かった!」と思ってもらえるように、バランスを考えながら選んでいます。

マッチングサービスの側面もありますが、Chapters bookstoreはあくまでも本屋。「どうせ本を買うならChapters bookstoreで買いたい」と思ってもらえる魅力的な書店になれるように、選書にはすごくこだわっていますね。

森本さんの本

自宅兼オフィスの壁際には、本がずらり。ちなみに、ひと月の候補が4冊なのは「4冊の本から1冊を選ぶ」行為を5か月続けると「1024分の1」の確率の出会いになるからだそう。森本さん「5か月先で1,000分の1の出会いが待っているかもしれないって考えると、なんだかロマンチックじゃないですか?」

オンライン・コミュニケーションの短所を、強みに転換して

Q. Chapters bookstoreの特徴であるアペロについて教えてください。

「アペロ」は、同じ本を読んだ人同士が感想をシェアできるビデオチャット。通常のビデオ通話とは違って、最初の段階では互いの顔が見えないのが特徴です。参加者は運営側が割り当てた海外名のニックネームでアペロに参加し、20分間の制限時間で10問のお題に次々答えていってもらいます。お題の質問は、本に関するものが中心で、どれもあまり悩まずに答えられるようなものにしています。

アペロのイメージ

アペロの画面のイメージ | アペロとは、フランス語の「アペリティフ(=食前酒)」が元となる単語で、ディナーの前にさくっと軽めのドリンクや食事を楽しむことを意味する。ランチでもディナーでもない夕暮れの時間帯、各々が食べたいものや飲みたいものを気軽に楽しむこの文化は、初対面の出会いの緊張感を和らげるのに効果的であると考え、Chapters bookstore内でのビデオチャットをアペロと総称することにしたのだとか。

こうした仕様にしたのは、人を判断する先入観の材料となりがちな事前情報を極力排除し、声や話し方などを頼りに「感性でマッチするかどうか」を判断してほしいからです。年齢や職業、肩書、服装や見た目は、ときに人の見方にフィルターをかけてしまいますから。

ちなみに、アペロのお題1問目は「今日のニックネームと、今朝の朝ごはんを教えてください」というもの。初めて会う人との会話が「ジョアンナです。今日は美味しいお味噌汁を飲みました」という感じでスタートしたら、なんだか面白くないですか?

Q.MISSION ROMANTIC bookで行っていたオフラインのディナー会と、Chapters bookstoreのアペロにはどのような違いがあるのでしょうか?

MISSION ROMANTIC bookでは、参加者がテーブルを囲って食事を楽しんで、濃密な時間を共有できるという良さがありました。それと比べると、オンラインの出会いにはそれがないので、相手との距離を一気に縮めるのは難しいように感じられます。最初、そうした「深い関係が築きづらい」という点はオンライン・コミュニケーションの弱点だと思っていました。しかし、それって裏を返せば「合わない相手から気軽に離れられる」「相手と気軽に出会うことができる」ということでもあります。オフラインの場合、「この人とは合わないな」と思ってもその場をすぐに立ち去るのは難しいけれど、オンラインならそれができる。

例えば、オンラインのアペロで「この人とは合わない」と思った場合、チャットを途中で退出(エスケープ)することができる仕組みになっています。オフラインで顔を合わせて、すぐにその場を去ったらなんだか相手に申し訳ないという気持ちになりますよね。ですが、オンラインの場合、「そもそも出会っていなかったかのように」することができる。これって、オンラインならではです。

本来なら、去る側も去られる側も悪くないはずです。「たまたま相手と合わなかった」というだけなんですから。それでも、一度顔を合わせてしまったら「立ち去るなんて相手に悪いことしたな」「自分が何かしたせいで怒らせちゃったのかも」とつい考えてしまいますよね。相手の顔を見る前にエスケープできる仕様は、人と出会う際の心理的ハードルを下げることにつながる。だからこそ、オフラインよりももっと気軽に人と会ってみようかなと思ってもらえるのではないでしょうか。

オンラインでは、気軽に人と出会って、相手の話し方や雰囲気を感覚的に確かめる。そして「実際に会ってみたい」という気持ちが湧き上がってきたら、相手とオフラインでも会って、さらに関係を深めていく。そんなふうにオンライン・オフライン両方の良さを上手に使っていければ良いのではないかと思います。

本から始まる出会い

Image via Chapters bookstore

実は、選んだ本の内容が面白かった/面白くなかった、というのはどうでもいいんです。大事なのは、「相手と同じものを読み切った」という事実やそこから生まれる共感性だと考えています。

過去に開催したMISSION ROMANTIC bookのディナー会でのことです。歳の近いメンバー同士で盛り上がるグループが多いなか、その日のディナーで一番盛り上がっていたのは、20代から50代までが集まったグループでした。世代にギャップがあり、似たような趣味もなさそうだった彼ら。唯一の共通点は、ものすごく分厚い本だったのにも関わらず全員がしっかりと読み終えてきていたということでした。もちろん本の感想は様々です。面白いと思ったポイントも、何を感じたかも一人ひとり違います。年齢や職業に関係なく、同じ季節に、同じ作品を読み終えたという共通の体験は、人と人を強く結びつけます。本を読むという作業自体はとても孤独。だからこそ、他の人と分かち合えたときの喜びも大きいのでしょうね。

Q. 「出会う」部分をデザインすることにこだわるのは、なぜでしょうか。

私には「サービスに触れる全員を物語の主人公にしたい」という思いがあります。小学生のときに見た映画『ドラえもん のび太と銀河超特急』で、美人なしずかちゃんが一瞬で王子様に選ばれて、長い間順番待ちをしている女の子たちが憤慨するというシーンがあるのですが、これが幼心に衝撃で。「しずかちゃんのいる世界では私も一生主人公になれないな」と思ったんです。

──あの女の子たちや、私が、たとえしずかちゃんになれなくても、しずかちゃんみたいな子を目指さなくても……一人ひとりが主人公になって出会いにわくわくできる世界を作りたいと思いました。アニメで無理なら現実に作るしかないと、これが今でも覚えている一番最初の原体験ですね。

ただ、私が物語をデザインできるのは、「出会い」のところまでだけ。起承転結の「起」の部分までは引っ張っていけます。でも、出会ったあと相手のことをどう思うか、相手とどういう関係を築くかについては、私が踏み込むことのできない領域です。だからこそ私は、皆さんの「出会いがない」という悩みをなくしたい、「最高の出会い方」を演出したいと思っています。

Q. Chapters bookstoreは、恋人や結婚相手を探すためのサービスなのでしょうか。

恋を期待して使ってもらうのも、もちろんいいのですが、 Chapters bookstoreでは出会いの目的を恋愛だけに絞ってはいません。ですから、既婚・未婚問わず誰でも使えます。

マッチングサービスというと、「データをもとに効率よく恋人や結婚相手を探すことができる」というイメージがあるのではないでしょうか。しかしChapters bookstoreではカップル成立を目的とはしていません。まずは素敵な本に出会い1人で読書を楽しんでもらう、そしてその先で待っているかもしれない見知らぬ誰かとの出会いにわくわくしてもらう──そんな「出会い方そのもの」こそが大きな目的なんです。

恋人などパートナーがいるからといって、いつも幸せというわけではありません。誰かと一緒にいれば、心のなかの寂しさや孤独感をすべて消し去ることができるかというと、そうでもありません。結局、自分を幸せにできるのは自分だけなのです。

でも、「思いがけない素敵な出会いがあったらいいな」とわくわくする気持ちや、突然の心ときめくような出会いを嬉しく思う気持ちは多くの人が共通して持ち併せているものだと思います。だからこそ、恋愛という目的だけではなく、「まだ見ぬ誰か」や「自分では手に取らない本」など、さまざまなものごととの出会いを期待している人に使ってほしいですね。

デジタルの世界における、「定性的な軸」を持ち込む

Q. 社名にも「ロマンチック」という言葉が入っていますが、森本さんにとって「ロマンチックな出会い」とはどのようなものなのでしょうか。

私の考える「ロマンチックな出会い」は、「予期せぬタイミングに共通性を見つけること」です。この「予期せぬタイミング」というのが重要なポイントだと思っていて……例えば、たまたま入ったカフェで隣の席に座った人が読んでいるのが自分の一番好きな本だと気づく瞬間って、ちょっとロマンチックだと思いませんか?

今ある多くのマッチングサービスは「私はこういう人と出会いたい」という要望を最初に示し、その要望に基づいて出会う人を絞り込んでいく仕組みになっています。この方法はいわば、おでこに「出会いたい」と書いた紙を貼って街中を歩くようなものです。そこには、どんな人に出会えるかなとか何か素敵なことが待っているかもしれないという「予感」がない。

Chapters bookstoreでは、そんな「ロマンチック」のもととなる「予感」をつくりたいなと思っているんです。本を選んでもらうときにタイトルと著者名を隠したり、アペロで開示する情報を最小限にしたりするのは、「どんな本が来るのだろう」「相手はどんな人なのだろう」とワクワクする「予感」を持ちながら使ってほしいから。

「予感」はあらかじめ設計してしまったら、予感ではなくなってしまいます。だからこそ、本のタイトルや著者を隠す、プロフィールに登録するべき項目数を絞る等、情報をあえて絞ることでサービスに「余白」を持たせました。ただ、どこまで隠すか、どこまで偶発的な要素にゆだねるかという加減は難しいですし、今も考え続けているテーマですね。

Chapters bookstore

Chapters bookstore登録時の質問(一部)。利用者が入力するのは自身の基本情報と「読書頻度」「お気に入りの読書時間」といった9つの簡単な質問だけ。一般的なマッチングサービスよりもかなり少ない項目数だ。

Chapters bookstoreは、デジタル化が加速する世の中への問いかけ

Q.デジタルの世界にあえて「偶然性」や「感性」といった要素を持ち込むのはなぜでしょうか?

今って、様々なデジタルツールやサービスのおかげで、生活が楽になっていますよね。マッチングアプリなら、自分の情報を入力するとAIが数万人の中から自分にピッタリの人をお勧めしてくれるようなものもあります。「機械が自動でやってくれる」「間違いが少ない」「その人にとっての最適解がわかる」のは便利だし、すごいことだなと思います。

ただ、デジタルの世界ではうまくやるためのコツやテクニックが必要とされます。例えば、マッチングアプリでの出会いや関係づくりには、zoomを使い慣れている、テキストコミュニケーションが得意という人のほうが有利ですよね。ですが、デジタルコミュニケ―ションではうまく自分を表現できない、という人もいるはずです。

また、QOLや豊かさという文脈で考えると「間違いや寄り道がない」「全部分かっている」状況って、本当に100%良いものだと言い切れるのかな、と考えてしまうんです。

デジタル化による利点はもちろんあるけれど、デジタルな生き方にもやもやしている人も存在するはず。「偶然なんかなくて良い、最適解だけわかったほうが楽じゃないか」と思う人は、今の便利なサービスをどんどん使ったら良いけれど、選択肢が「それしかない」状態になってしまうのはよくないと思うんです。

Chapters bookstoreは「何が起こるかわからない、だから良い」という考え方で運営されています。膨大なデータや正確性ではない、そういう不確実さを楽しむ姿勢が、デジタルの世界をより豊かにするのではないかと思います。

これまで「より正確で・よりはやく・より快適で・より最適な」ものを目指して、発展してきたデジタルの世界に「セレンディピティ」「不確実さ」というもっと「定性的な軸」を持ち込むことで、デジタルはもっと豊かになるんじゃないでしょうか。

森本さんの自宅兼オフィス

森本さん「私はちょっとでも『不要不急』が楽しめるようなテクノロジーのサービスをしてみたいなって思うんです。コロナ禍での窮屈な暮らし方で、実は『不要不急』って私たちの生活を豊かにする大事なものだったんだと気づいた人もいるはず。こんな時代だからこそ、私は問いかけるのかもしれないですね。」 | オフィス兼自宅、自身のお気に入りアイテムばかりが並ぶ窓上のスペース

Q. 記事を読んでいる人に向けて、最後にメッセージをお願いします。

まずは、ピンと来た本とを一人でじっくりと楽しんでほしい。そして、その先に待っている「人との出会い」にわくわくしながらChapters bookstoreを使ってほしいです。「一人で完結していた読書という世界に『出会い』を取り入れる」「デジタルに『偶然』『不確実性』を取り入れる」というChapters bookstoreの取り組みは今の世の中にない新しい取り組みなので、どれだけ多くの人に喜んでもらえるかはわかりません。それでも私は、よりよい人生にはスペックや肩書によらない「感性での出会い」や「偶然」という要素が大切なのだと確信しています。

Chapters bookstoreのローンチは、その直感が当たっているかどうかを世の中に問いかけるようなイメージなんです。今のオンライン起点の出会いに何かしらの違和感を抱えている人に、このサービスが届いてくれたら嬉しいですね。

森本さんの画像

森本さん

取材後記

インタビューにうかがう前は、映画「耳をすませば」のイメージに引っ張られたこともあり、Chapters bookstoreは従来のマッチングサービスと異なるかたちで、運命的な恋をデザインしようとするサービスなのかと考えていた。しかし実際にお話を聞いて見えてきたのは、森本さんは恋愛に限らず人と人との関係全般を、そして人生を豊かにしたい人たちに向けて、このサービスを立ち上げたということだ。

あなたがChapters bookstoreを利用して出会うのは、かっこよくて素敵な同年代の恋人候補かもしれないし、30歳年上の人生の先輩かもしれない。会ってもピンとこないまますぐ忘れて、赤の他人に戻るだけの人かもしれない。あるいは人との出会いよりも、新しい読書体験のほうに大きく心が動かされる可能性だってある。Chapters bookstoreの場合、そのどれであっても失敗ではないのだ。

森本さんは言った。

「章(チャプター)を読み進めるうちに主人公の物語がどんどん展開していくように、Chapters bookstoreを使った人の人生が回っていけばいいなと思うんです」

〇〇歳までに年収〇〇円以上の結婚相手を見つけたい、など具体的な条件に合う相手に最短距離で出会いたいという人に、Chapters bookstoreのサービスは向いていないのかもしれない。感性を頼りに相性を見極めたり、偶然に身を委ねたり……「一緒にいて楽しいから」という理由だけで自然と仲良くなっていた幼い頃のような関係づくりは、効率を求める人からすると「回り道」のように見えてしまうだろう。だが、偶然の出会いや未来への予感は日常を彩り、誰もを「自分の物語の主人公」へと変えていくのだ。

ドラえもんのしずかちゃんでなくても、「耳をすませば」の月島雫でなくても良い。彼女たちのようになろうとしなくても良い。あなたがあなたのままで、自分の物語を紡ぐことができる──Chapters bookstoreはそんなワクワクする世界への「予感」を与えてくれた。

Edited by Yuka Kihara

【参照サイト】Chapters bookstore

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