ごみの排出量を減らし、限りなくゼロに近づけていく――「ゼロウェイスト」という言葉を耳にするようになって久しい。実生活において、個人がごみを「ゼロ」にすることはまだまだ容易ではないが、一人ひとりがごみゼロに取り組むための選択肢は増えてきている。
アメリカで2021年3月に誕生した、“Loop by Ulta”はそんな新たな選択肢の一つだ。これは、美容・消費財小売ビジネス最大手の一つUlta(アルタ)と、容器回収・再利用サービスLoopが連携して始めた循環型容器回収サービスで、商品の購入者が使用後の容器を返却することができるシステム。ゼロウェイストを身近で実現可能なものにする取り組みである。
View this post on Instagram
Loopのサービスを通してUltaから商品を購入すると、回収・洗浄・再利用可能な容器に入った商品が、専用バッグに梱包されて購入者の自宅に届く。使用後は、空になった容器を専用バッグに入れ、それを受取り業者にピックアップしてもらうという仕組みだ。容器は回収後にしっかりと洗浄されて中身を詰め替えて何度も利用される。このサービスでは、容器を返却することが前提となっているため、購入者が商品に支払う金額の中には、返金されるデポジットがあらかじめ加算されている。
Loopは容器の開発において、耐久性があること、水とエネルギーの利用を最小限に抑えて洗浄すること、最終的に廃棄する際にリサイクルが可能であること、美しく劣化していくことの4点を大事にしている。その他サービスの特徴としては、利用者が使用後に洗浄・分別をする必要がない点、容器に耐久性があるため輸送における緩衝材が不要な点、さらには専用バッグも返却後に洗浄され、穴が開いたり破れたりしている場合には修繕される点などが挙げられる。
今回Loopとの提携を発表したUltaの商品は、薬局などで手に入る比較的手頃なブランドから、百貨店で扱われるハイエンドブランドまで多岐にわたり、その商品の種類もバリエーション豊富だ。アメリカ全土で約1,200店を展開しながら、大きなオンラインプラットフォームも持つUltaは、アメリカで生活する人にとってとても身近な存在なのだ。
そんなUltaが、今回のサービスの対象商品としてセレクトしたのは、比較的価格帯が低めで、かつ買い替えサイクルが早いであろうスキンケア、ヘアケア、ボディケア、デンタルケア、ハンドソープやデオドラントなど55の商品。中にはヴィーガンやクルエルティフリー、有害な成分を省いたクリーンビューティのアイテムも多く含まれており、今後も対象商品は拡大予定だ。
さらに、実はアメリカで生まれたLoopの母体であるテラサイクルは、日本にも進出している。テラサイクルは、空容器を回収しリサイクルを可能にするシステムを構築しており、例えばコスメ・パーソナルケアの領域では、コスメキッチンと提携したリサイクルキッチンがある。一方で、今回Ultaと提携したLoopは、容器そのものを洗浄し再利用するので、より環境負荷を抑えた小さな輪での循環を生んでいる。Loopは日本でもイオングループが国内小売業では初の提携を2020年の秋に開始しており、同様に、世界の大手小売業でも取り組みが始まっている。
家庭でごみとして排出される容器を減らすという一人ひとりの行動は、地球環境を守るための大事な要素だ。しかし、環境汚染や廃棄問題、気候変動などを引き起こす原因は、廃棄物の問題以外にも、商品そのものの原料採取や製造、流通におけるサステナビリティなど様々である。私たちはそれらの原因に対して、可能な範囲で日々取り組みを続けながら、また同時に、構造の改革やシステムチェンジの必要性にも視野を広げられるといいのかもしれない。
世界中に広がるLoopのサービス。今回アメリカの人たちに馴染みがあるブランドで利用可能になったことで、サステナビリティはより身近になっていくだろう。Loop by Ultaの存在は、人々と、そして社会を変えるきっかけとなるのではないだろうか。
【参照サイト】Loop by Ulta
【参照サイト】「国内小売業初!イオンは持続可能なリユース容器商品の買物の仕組み「Loop」に参画」
【関連サイト】ループジャパン
【関連サイト】Loop US
【関連サイト】MASH Beauty Lab リサイクル キッチン プログラム
Edited by Tomoko Ito