容器の所有権をメーカーが取り戻す。サーキュラーエコノミーのプラットフォーム「Loop」の挑戦

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2019年1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにて、世界初となる循環型のショッピングプラットフォーム「Loop」が発表された。Loopは、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションを掲げ、世界20ヶ国以上で廃棄物問題に取り組んでいる米国発のソーシャルスタートアップ、テラサイクル社が立ち上げた革新的なサーキュラーエコノミーのプラットフォームだ。

Loopの特徴は、従来使い捨てにされていた一般消費財や食品の容器を繰り返し利用可能な耐久性の高い素材に変え、使用後は消費者の自宅から容器を回収し、洗浄、補充した上でリユースをするという新しいショッピングシステムを生み出している点にある。

パッケージのリユースにより、メーカーは各ブランドのパッケージを優れたデザインと機能を備えたものへと進化させることができる上、短期的には高価なパッケージにはなるものの、長期的にはコスト削減が期待できる。また、消費者は使い終わった容器をLoop専用の配達用バックに入れておけば自宅まで回収しに来てもらえるので、現在の便利なライフスタイルを変えることなくより環境に優しいサステナブルな消費を実現することができる。

このLoopのプラットフォームにはP&G、ネスレ、ペプシコ、ユニリーバ、ザ・ボディショップ、ダノングループといった世界を代表する消費財メーカーをはじめ、欧州の小売大手カルフール、テスコ、米国のウォルグリーン、クローガーといった小売業者らもパートナー企業として参画を表明しており、サーキュラーエコノミーへの移行を進めたい企業らが一堂に会する一大イニシアチブとなっている。

2019年5月にはフランスのパリ、アメリカのニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルバニア、メリーランド、ワシントンでパイロットプログラムが公式スタートした。同年中にイギリスのロンドン、そして日本では2020年から東京でのパイロットプログラム導入が決定している。

世界中でプラスチックをはじめとするゴミ問題が深刻化し、2019年1月には中国が資源ごみの輸入を禁止するなど、日本国内においても早急な対応策が求められているが、Loopは今後日本においてどのような展開を考えているのだろうか。今回、IDEAS FOR GOOD編集部では、テラサイクルのアジア太平洋統括責任者を務めるエリック・カワバタ氏と、マーケティング&コミュニケーションズマネジャーを務める片山亜沙美さんにお話を伺ってきた。

「廃棄物が商品になる」という原体験。

Q:テラサイクルの歴史について教えて下さい。

カワバタ氏:もともとは、創業者のトム・ザッキーが2002年の大学在学中にミミズの糞を肥料に変えるというアイデアを思いつき、大学を辞めてテラサイクルを設立したのがはじまりです。最初は肥料を商品化したかったのですが、肥料を入れる容器を作るお金がないため、使い捨てペットボトルを回収して洗浄し、その中に肥料を入れて販売しました。この肥料を全国のホームセンターで販売できるようになり、そこで彼は「廃棄物が商品になる」ということに気がつきました。

テラサイクル社のオフィス外観

テラサイクル社のオフィス外観

その後、徐々に小規模なリサイクルプログラムをはじめていったのですが、最も盛り上がったのはクラフトフーズ社との取り組みです。子供たちが学校に持っていく、ストローを挿して飲むパウチのドリンクがあったのですが、これにアルミ箔とプラスチックがついておりリサイクルが難しく、埋め立てしかできないことからクラフトフーズは相当なクレームを受けていました。そこで、テラサイクルがそのパックを加工してリサイクル原料を作り、その原料をアウトドア用品メーカーに売るという取り組みを始めました。回収するドリンクパックの量を増やすために学校に声をかけ、学校から引き取る代わりにテラサイクルポイントを提供するという仕組みも作りました。

このプログラムはかなり成功し、クラフトフーズ社にも大変喜んでいただきました。プログラム開始時点にアメリカで1,000億円だった売上が、数年後には特別なプロモーションをしなくてもリサイクルをしたというだけで1,500億円まで伸びたのです。これは、市場が増えたのではなくマーケットシェアが伸びた結果でした。この経験から、メーカーがリサイクルをすれば消費者は認めてくれて、ブランドイメージもアップでき、場合によっては売上にもプラスの影響があるということを我々は学びました。

そこから、次々に様々な企業でのリサイクルプログラムが立ち上がりました。最初はスナックフードなど食品のリサイクルが多かったですが、北米からヨーロッパへ、そして2013年にはオーストラリアへと活動が広がり、2014年1月からは日本でトゥルースピリットタバコカンパニーと協働した吸い殻のリサイクルプログラムが始まりました。

その後、日本では2014年から花王と共同研究プロジェクトをスタートし、2015年には詰め替えパックをリサイクルするパイロットプログラムを始めました。最初は徳島県の上勝町ではじめ、その後は鎌倉、女川、石巻で実施しました。他にもロレアル社とは化粧品容器のリサイクルプログラムを、その次はライオン社と歯ブラシのプログラム、P&G社とのクルマ用消臭芳香剤リサイクルプログラムに取り組みました。

右:エリックカワバタ氏、左:片山亜沙美氏

右:エリックカワバタ氏、左:片山亜沙美氏

Q:日本進出において難しかったことは?

カワバタ氏:2013年に調査を始めたとき、日本では資源を回収し再資源化するマテリアルリサイクルをやっている会社がとても少なく、ほとんどは焼却型のサーマルリサイクルだったので、サーキュラーモデルのリサイクルに対応できる加工業者を探すことがとても大変でした。やっと見つけたとしても彼らは何かを売り込まれると思い込んでいて、最初は我々の仕事を引き受けてくれようとしませんでした。しかし、彼らとゆっくりと対話して、売るのではなく仕事を委託してお金を払うのだと説明すると、とても喜んでもらえました。プログラムが始まり、回収量が増え、委託するお金が増えると、加工業者も潤いました。

テラサイクルは、自分で施設を持ち、自分たちでリサイクルをするわけではありません。サーキュラーエコノミーのなかで他の会社に新しい仕事をもたらすプラットフォームなのです。

例えば物流についても、テラサイクルは自らのトラックで回収しに行くのではなく、すでに存在している物流会社と契約し、彼らに仕事を提供します。使用している倉庫も同様で、お金を払って倉庫会社に稼いでもらいます。このように、プラットフォームにいろいろなステークホルダーを巻き込み、みんなにサーキュラーエコノミーの恩恵をもたらすというソーシャルエンタープライズの考え方を大事にしています。

メーカーが容器の所有権を取り戻す。

Q:Loopが生まれたきっかけは?

カワバタ氏:テラサイクルのリサイクルプログラムの目標は、廃棄物のリサイクルを可能にすることです。しかし、リサイクルのために全ての廃棄物を回収するのは不可能ですし、限界もあります。そこで、新たなビジネスとなり、そもそも根本的に“廃棄物”をなくすアイデアを探していたところ、創業者が牛乳配達のような仕組みをもう一度復活できないかと思いつき、そこで生まれたのがLoopです。

使い捨て容器が増えた理由はとてもシンプルで、「軽くて」「安く」、そして「便利」だからです。何も洗う必要がなく、ただ捨てるだけですから。結果として使い捨て容器はどんどん増えていきました。もともとは飲料会社も牛乳配達も、みんな瓶で販売していました。スーパーでガラス瓶を買い、飲んだ後にそれをスーパーに戻すとデポジットの5円が戻ってくるといった仕組みです。瓶を洗ったり戻したりするのが面倒くさいという点はありますが、その時点では容器はメーカーのものだったのです。

しかし、現在では容器も中身も販売していますので、メーカーとしてはやはりコストダウンのために「安く」「軽く」作りたくなります。また、そのほうが消費者にとってもベネフィットがあります。だからこそ、使い捨て容器を使う人が増えたのです。

海に浮かぶプラスチックごみ

海に浮かぶプラスチックごみ via Shutterstock

問題は、容器を「軽く」「安く」作ったことで原料価値が減り、コストをかけてリサイクルする経済合理性がなくなったという点です。それでゴミ問題が起こったのです。

そのため、Loopでは、どのようにこの便利さとコストの問題を解決できるかを考えました。コストについては、10円で使い捨て容器を作るより、50円かけて30回使い回せる容器を作ったほうがコストを抑えられます。テラサイクルでは容器包装会社と協働し、Loop専用の容器の作り方やノウハウをメーカー側に伝えます。また、ユーザーにとっての使い捨ての便利さという点については、一般的なリサイクルやリユースの場合は丁寧に容器を洗う必要がありますが、Loopでは洗わずに捨てるのと同じ感覚で回収バッグに入れるだけでよい仕組みを創りました。

Loop専用の配達バッグ

Loop専用の配達バッグ

Q:Loopの仕組みについて教えて下さい。

カワバタ氏:Loopのシステムはとても簡単で、使い捨ての容器をリユースの容器に変えるということです。リユースの容器は耐久性が必要になるので、ガラスや金属性の容器が多くなります。メーカーがリユース容器に中身を入れて、テラサイクルがそれをLoopというプラットフォームで仕入れ、在庫を持ち、オンラインポータルサイトに登録します。

ユーザーにその中から買いたい商品を選んでもらい、Loop専用のトートバックに入れて家まで届けます。再注文の際には使い済みの容器を回収します。そして回収した後はテラサイクルが容器を洗浄し、それをメーカーに戻し、また中身を詰めてもらい、テラサイクルのところに戻して販売するという仕組みとなります。

エリックカワバタ氏

大事なことは、Loopのサーキュラーエコノミーはテラサイクル一社だけで創るわけではないという点です。配送・回収は物流の会社に依頼していますし、在庫は倉庫会社、洗浄についてはリユースの洗浄をやってくれる会社に任せています。また、小売店でも販売と回収をすることができ、小売業もLoopのサーキュラーエコノミーに参加することができます。こうしてLoopはサーキュラーエコノミーにより様々な新しいビジネスを生み出すドライバーになるのです。

エコだからではなく、便利だから使う。

Q:Loopを利用する消費者のメリットは?

カワバタ氏:消費者テストを実施したところ、Loopを利用する理由についての共通点が見え、びっくりしました。Loopの利用者は、もともとエコやサステナブルに関心があって参加していたわけではなく、より自分本位な理由で使っていたのです。第一は、便利だからという理由です。商品を届けてもらえるので、いつも店まで買いに行かなくてよいという便利さです。

そして二つ目は、金属とガラス製の容器が綺麗でかっこよく、機能的で使い捨て容器よりもよいという理由です。そして最後が「家の中のゴミが減った」という理由です。便利さやカスタマーエクスペリエンス向上につながるからこそ、消費者はLoopを使ってくれるのではないかということで、スポンサー企業も増えました。

ハーゲンダッツアイスクリームの容器。機能性にもデザイン性にも優れている。

ハーゲンダッツアイスクリームの容器。機能性にもデザイン性にも優れている。

日本はLoopに向いている。

Q:日本の市場をどう見ているか?

カワバタ氏:日本はすごくLoopに向いていると思います。日本は島国で、過去には鎖国している時代もありました。国内の資源だけで生活をしており、ゴミがほとんどゼロの時代もありました。そうした時代があったからこそ、「もったいない」という言葉に象徴されるように、日本の文化には資源を大事にしなければいけないという考え方がDNAとして根付いていると思います。

ライオン社と初めて話をしたとき、一般的に歯ブラシは1ヶ月ぐらいするとあまり磨けなくなるにも関わらず、日本人は歯ブラシを大体3ヶ月ぐらい使ってから取り替えるという話を聞きました。その理由を調べてみると、「高い」からでも「面倒だから」でもなく「もったいない」からだったそうです。

また、日本には卸売のビール瓶などのようにリユースの商習慣も残っています。日本人は再利用された瓶に少しぐらい傷があっても文句を言いません。それは、資源の大事さを理解しているからだと思います。

卸で流通する瓶ビール

卸で流通する瓶ビール。via Shutterstock

そして、日本は国土全体でもカリフォルニア州と同じ程度の広さで国自体がそれほど大きくないため、物流のシステムも効率よく働きます。こうした様々な観点で考えても、日本にLoopは合っているのではないかと思います。

Q:日本ではどのような事業展開を考えているのか?

片山氏:日本独自のLoopをつくりたいと考えています。例えば醤油など、日本人の誰もが使うものをLoopに乗せることで、身近に感じていただけるようにしたいなと。

カワバタ氏:日本人にLoopを使っていただくためには、日本人が日常的に使っている商品を乗せなければいけません。だからこそ、醤油やお酒など、日本ならではの商品を作っている会社とも話を進めています。また、行政ともよく相談をするのですが、日本では高齢者が増えているので、Loopを利用することで、買い物に行けなかったり、重たい荷物も抱えられない高齢者にとってもありがたいサービスになるようにしていきたいと思っています。

片山亜沙美氏

Q:今後、Loopは企業向けのサービスとしても展開していくのか?

カワバタ氏:恐らくBtoBの事例も出てくると思います。先ほども話したように、産業廃棄物の処理費用が高くなると中小企業の中にはオペレーションが苦しくなるケースも出てきますが、使っている洗剤や食品をLoopにすれば、処理費用も節約できて経済合理性もあります。

また、ホテルではアメニティの詰め替え作業などをスタッフがやっていますが、そのぶん人件費がかかっています。Loopを使えば容器ごと回収して洗浄もしてもらい、中身も入れ替えてもらえます。他にも、サロンなどがLoopに登録することもありえるでしょう。こうした様々な分野にチャンスがあり、今後BtoBのマーケットは増えるのではないかと見ています。

Loopはサーキュラーエコノミー時代のAmazonになるか?

Q:AmazonはLoopにとっての競合になるのか?

カワバタ氏:私たちはすべての商品をリユースできるとは思っていません。そのため、Loopが取り扱える領域は限られます。Loopはリユース可能なものしか載せないプラットフォームになりますが、Amazonのように何でも買えるマーケットプレイスも必要です。また、Amazonも将来Loopに商品を載せることはあるかもしれません。

片山氏:Loopは、一部の環境意識が高い人が行くような、サステナブルに配慮した商品を取り揃えたエコなストアではなく、一般の多くの方々が使っている商品を載せ、環境に良いという点ではなく便利さや高級感のある容器などを良いなと思ってくれる人をターゲットにしています。オーガニックの良い商品やリサイクル商品だけを出していても意識の高い人は来てくれますが、そうでない人は来てくれません。しかし、それではサステナビリティは追求できないので、誰にでも使っていただけるプラットフォームを目指しています。

カワバタ氏:なぜ、世の中が使い捨てのシステムにシフトしたのかを考えないといけません。それは「安くて」「便利」だからです。結局それには全て負けてしまいます。だから、リユースによって「安くて」「便利」が実現できれば、また成功するのではないかと思っています。

もちろん、正直に言ってどうなるかは分からないですし、パイロットで1~2年やる中で、成功も失敗もたくさん出てくると思いますが、みんなで学びながらその経験をシェアできるとよいなと思っています。

テラサイクル社のショールーム

テラサイクル社のショールーム

Loopは日本を守り、新しいビジネスを創り出す。

Q:Loopに関心がある企業にメッセージをお願いします。

カワバタ氏:Loopには、今後、サーキュラーエコノミーを盛り上げるために活動しようと考えている企業からの賛同が必要です。海外の成功事例を取り入れるのではなく、日本も海外のサーキュラーエコノミーと肩を並べられるよう、リスクではなく機会と捉えてどんどん参画してもらえると嬉しいです。

中国のプラスチック輸入禁止から日本が学んだことは、国内で回るシステムを持っていないと海外で何かが変わったときにとても困るということです。国内でサーキュラーエコノミーを創り出すことができれば、コントロールできない外部性に対する防御策になります。

Loopには日本で製造していないと参加することができません。日本では海外のブランドが数多く成功していますが、彼らがLoopに参加したければ工場を日本で作る必要があります。また、Loopではゴミも出しません。日本の中だけで経済が回るようになれば、外部性の問題が出てきてもある程度対処することができます。Loopは国内のサーキュラーエコノミーという新しいビジネスのドライバーになるのです。サーキュラーであるためには一ヶ所で行う必要がありますから、日本の経済にとっても大きなプラスがあります。

片山氏:日本の消費者は一度Loopを使い出していただければ、便利さや環境にも良いという点をすごく受け入れてくれると思います。日本にある中小企業がこの新しい仕組みを受け入れて、チャレンジする姿勢を持っていただきたいなという期待がありますね。

取材後記

お二人の話の中でもっとも印象的だったのは、製造から消費、廃棄まで一連のプロセスが循環するサーキュラーエコノミーというビジネスモデルを創り出すことが、消費財メーカーだけではなく物流業や倉庫業、リサイクル加工業者、容器メーカーなどあらゆる業界・業種に新たなビジネスチャンスをもたらすという点だ。また、日本国内で循環のループを閉じることが、日本経済にとってもプラスになるという点も参考になった。

世界や日本が直面するゴミ問題に立ち向かうためには、一人や一社の力だけではどうにもならない。だからこそ重要になってくるのが、SDGs(持続可能な開発目標)の目標17にも掲げられている「パートナーシップ」だ。

テラサイクルのLoopは、まさにこの「パートナーシップ」の力によりゴミ問題を解決するためのプラットフォームだ。共通の目標に向かってサーキュラーエコノミーという新しいビジネスの常識を創り出し、その恩恵を参加した全員で等しく享受する。Loopは、消費者も企業も環境も、全員が幸せになる仕組みをみんなで創り出すという壮大な実験でもある。

日本でのLoopのローンチは2020年の予定だが、その後日本でLoopが広く受け入れられるためには、片山氏が指摘するように、醤油やお米といった日本の家庭で普段から消費されている商品をどれだけLoopのプラットフォームに載せられるかが鍵を握る。一方、日本に数多くある中小企業にとっては、Loopの存在は大きなビジネスチャンスとなるはずだ。

Loopのパートナーとして日本独自のサーキュラーエコノミーをともに作っていきたいという方は、ぜひこのイニシアチブに参画してみてはいかがだろうか?

※テラサイクルでは、ライオン社と共同で、使用済みハブラシをリサイクルし、プラスチックごみを減らす取り組み『ハブラシ回収プログラム』のポスターデザインコンテストを2019年10月21日まで開催しています。応募資格は未就学児、小学生、中学生、高校生となっています。興味がある方はぜひこちらも参加してみてください。

【参照サイト】Loop
【参照サイト】テラサイクル、サステナブル意識の高い大手企業と共に、一般消費財のごみゼロを実現する新しく便利なショッピングプラットフォーム『Loop』を世界経済フォーラムにて発表
【参照サイト】テラサイクル