廃棄される宅配用バッグが、孤児院の子どもたちの学校用品に

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新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大で外食需要が大きく落ち込む中、多くの飲食店は減少する売り上げをカバーすべく、テイクアウトやデリバリーを始めている。ICT総研の推計では、2018年に3,631億円だった日本のフードデリバリーサービス市場は、2019年に4,172億円、新型コロナの感染拡大による外食自粛が目立った2020年には、4,960億円となった。そんなデリバリー市場の拡大は、東南アジアでも見られ、マレーシアでは2025年、その市場規模が2020年比で倍増すると予想されている。

外に出なくても、家で待っているだけでご飯が届く便利なフードデリバリー。しかし、市場が拡大するに従って見えてきた課題もある。例えば、使用済み配達バッグの廃棄問題だ。日本にはない制度だが、シンガポールを拠点に東南アジア諸国で展開されるデリバリーサービス『GrabFood』の配達員には、9ヶ月ごとに使い古した配達用バッグを新品と交換することが義務付けられている。この制度によって、これまで大量の配達用バッグが破棄されてきた。

そんな状況を受けて声を上げたのが、マレーシアのファッションブランド『Neng Kho Razali』だ。彼らはGrabFoodと連携し、使用済み配達用バッグをランドセルや筆箱、マスクなどを入れられる小さなバッグなどにアップサイクルし、孤児院に寄贈する取り組みを始めた。

使い古されたGrabfoodのバッグは、Neng Kho Razaliのメンバーによって一つずつ丁寧に消毒され、再利用可能なパーツとすり切れて使えないパーツに分類される。再利用可能なパーツは洗浄、乾燥後に裁断や裁縫の工程を経て繋ぎ合わされることで、新たな製品へと生まれ変わるのだ。

昨年始まったこの取り組みによって、すでに200個以上の使用済み配達用バッグが400個以上のアイテムへと姿を変えている。すべて、マレーシアの孤児院や学校、Grabfoodの配達員に提供されており、商品として販売されてはいないという。

Grab food

配達用バッグからできたアップサイクル製品

Neng Kho Razaliの創業者は、学校に行く時に、スクールバッグを自費で買うことができなくて何人かでシェアしている子どもたちのことがたくさんいる。そんな子たちのために何かできたら……と考え、この取り組みを始めたという。

今後ますます増加していくであろうフードデリバリーの需要。利用者の利便性はもちろん、そこで生まれる問題に対してもしっかりと目を向けていくことで、みんなにとって良い社会につながっていくだろう。

【参照サイト】Neng Kho Razali Facebookページ
【参照サイト】This Fashion Label Upcycles Used GrabFood Bags Into School Bags To Donate To Orphanages
【参照サイト】日本貿易振興機構
【参照サイト】ICT総研

Edited by Tomoko Ito

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