ファストフードの定番、フライドポテト。ハンバーガーと一緒に食べることがある人も多いだろう。ラトビア農業大学が2015年に発表した論文によれば、剥かれたジャガイモの皮は、元のジャガイモの15〜40%もの量になるという。(※1)世界のジャガイモ生産量が約3億7600万トンであることを考えると、ジャガイモの皮も相当の量が廃棄されていることになるだろう。
ジャガイモの皮は、土や水の中に入れれば分解され、自然に還ることができる素材だ。しかし燃えるごみとして廃棄されてしまうと、焼却の際にCO2を発生させ、環境に負荷をかけるものとなってしまう。世界で幅広く食べられているフライドポテトも、ジャガイモの皮ごみの排出源として例外ではない。
今回は、そんなジャガイモの皮を有効活用するアイデアを紹介しよう。イタリアのデザイナーが開発した、ポテトの皮からできたフライドポテトのパッケージ「Peel Saver」だ。このパッケージは、フライドポテトをつくる過程で廃棄される、ジャガイモの皮を救うためにデザインされた。
ジャガイモの皮はデンプンと繊維を含むため、実はパッケージの原料に適した素材だ。水に浸して柔らかくしてから自然乾燥させることで、皮の中の成分がくっつき、固くなるという。完成したパッケージは、100%生分解可能で、使い終わったら、動物の餌や植物の堆肥になるなど、資源循環のサイクルに還ることができる。
Peel Saverのプロジェクトを担うのは、イタリアで活躍するZ世代のデザイナー、パウロ・ステファノ・ジェントルさん。イタリアの芸術大学NABAの在籍中に、授業の一環として学友と一緒にPeel Saverをデザインした。このプロジェクトは、2018年に大学内の賞「Naba Design Award 2018」で、「best technical,materials and innovation project」を受賞。パウロさんは卒業後も、デザイン雑誌「Elle Décor Italia」で2020年度の30人の若い才能あるデザイナーとして選ばれるなど、活躍を続けている。
そのままでは廃棄物として処理されるものが、新たな役割を持つ。その意義は、資源の有効活用に加え、「廃棄物とは何か?」という問題提起にもあるのではないだろうか。今回の例は、フライドポテトがもともと包まれていた皮で再び包装されるという、なんとも粋な発想とデザインだ。世界中のファストフード店や飲食店で、こういった循環型のソリューションが取り入れられていくことを期待したい。
【参照サイト】Gentil design
Edited by Motomi Souma