「海」と「妊婦」には、共通点があります。
「いま地球上に存在しているすべての生命体は、そもそも海から生まれています。私たちが吸っている空気中の酸素の半分以上は海でつくられており、海は生命の源なのです。そんな海を、あたりまえのように大事にすること。そして私たちすべての人間を産み出した女性の人権を守り、尊重するということ。それこそが、社会や人類の平和につながることなのではないでしょうか。」
そう話してくださったのは、フリーダイバーで女優の福本幸子さんです。あらゆる生命の“母”である「海」と、私たち一人一人の“母”である「妊婦」。そんな私たちの命を育んでくれているふたつの“母”をもっと大切にし、地球にも人間にも優しい世界を作り上げていくためにできることは何なのか。
IDEAS FOR GOODはそのヒントを探るため、2021年9月12日に “母”をテーマにしたイベント「出産先進国ニュージーランドに学ぶ、”母”に優しい世界のつくりかた~海と妊婦の関係から考えるウェルビーイング~」を開催しました。スピーカーは、ニュージーランドでサステナブルな自給自足生活を営み、今年一児の父となった執筆家・四角大輔さんと、2019年にパートナーとともにニュージーランドで自宅での水中出産を経験した福本幸子さんのお二人です。モデレーターはIDEAS FOR GOOD編集部・富山恵梨香が務めています。
本レポートでは、同イベントの当日の様子をお届けします。
スピーカー:四角大輔さん(執筆家)
ニュージーランドで森の生活を営む執筆家。大量消費社会と行き過ぎた資本主義から距離を置くべく、貨幣制度に依存しないインディペンデントな生き方を求め、原生林に囲まれた湖でサステナブルな自給自足ライフを営む。 場所に縛られない働き方を構築し、機内持込のバックパックだけで世界のエシカルな現場を視察するオーガニックジャーニーを続け、65ヵ国以上を訪れる。InstagramやTwitter、公式メディア〈4dsk.co〉、オーガニックライフメディア〈Spring Step〉の連載を通して、禅的なライフスタイル思想を発信しながら、独自開発した「人生デザイン学」を直伝するオンラインサロン〈LifestyleDesign.Camp〉を主宰。2021年に一児のパパに。
スピーカー:福本幸子さん(フリーダイバー/女優)
2019年、パートナーでありフリーダイバー世界チャンピオンのウィリアム・トゥルブリッジともに「出産先進国」として知られる彼の故郷ニュージーランドで、念願の自宅での水中出産を経験。この様子を追った短編『Water Baby』は再生回数が800万回を記録し、世界3つの映画祭で受賞し、5つの映画祭で出展作品に選ばれるなど、国際的に高い評価を受ける。現在、出産制度、海の保護、女性の権利にフォーカスした長編ドキュメンタリーフィルム「Pacific Mother」の2022年夏リリースに向けて準備中。Instagram/YouTube
産みたいように産めない、世界の現実
イベント開始と同時に上映されたのは、再生回数800万回を記録し、世界3つの映画祭で受賞・5つの映画祭で出展作品に選ばれるなど国際的に高い評価を受けた、短編ドキュメンタリーフィルム『Water Baby』。福本幸子さんはこの映像プロジェクト発案者の一人であり、主人公を務めています。福本さんの水中出産の様子を追ったこのドキュメンタリーの中では、私たちが普段の生活ではなかなか気づくことのできない、海と妊婦に関する「問い」を投げかけてくれています。参加者の中には、見ている間に涙が溢れたという方もいらっしゃいました。
この短編ドキュメンタリーフィルム『Water Baby』は、どのようにして生まれたのでしょうか。これまで世界中を飛び回り、女優やモデル、クリエイティブ制作やプロジェクト企画といったさまざまなエンターテイメントの仕事に25年以上携わってきた福本さんは2019年、ご自身の出産をきっかけに、出産について猛勉強を始めたといいます。そのなかで、世界の出産制度には、根深い問題があることを知りました。
福本さん 「妊娠がわかったとき、直感的に『海で産みたい』って思ったんですよね。よく『なぜ?』と聞かれるんですが、沖縄で生まれ育って海に馴染みのある私にとっては、とても自然なことでした。しかし、産婦人科の検診で『海で産みたいんです』と言ったら、みんな固まってしまって。それから調べていくうちに、日本の出産の選択肢がいかに少ないかを知りました。みんな妊娠したら病院に行って、予定が立てられて、病院で産む。その流れがあたりまえだったことに、違和感を覚えたんです。」
私が産むのに、なぜ産みたいように産めないのだろう──そう思った福本さんは、ご自身で海で出産するため、世界中のあらゆる海について調べたといいます。
福本さん 「出産予定日が3月だったので、水温の関係から北半球の海での出産は厳しく、南半球に位置する国の海で産めないかと調べつくしました。いくつか目ぼしい場所があったのですが、医療施設が近くにないなどの理由で、なかなか出産に適した場所が見つかりませんでした。こんなに探しても適した海が見つからないということは、赤ちゃんが願っていることではないんだと思い、切り替えることができました。しかし、そのときは既に妊娠7か月目。この時点でまだ産む場所が決まってないのは、日本ではありえないことだと思います(笑)」
さまざまな壁にぶち当たり、海での出産を諦めた福本さんですが、「せめて自宅で水中出産をしたい」という想いがあったそうです。しかし福本さんの出産時の年齢が日本では高齢出産にあたり、その願いも叶いませんでした。そんなとき、知り合いの助産師さんからニュージーランドでの出産をすすめられます。
福本さん 「何も知らない国で初めての出産をすることに不安があったのですが、ニュージーランドの助産師さんと話をしていく中でここで産みたいと感じ、ニュージーランドでの出産を決めました。ここまでの流れが大変すぎて、シンプルに自分が選んだ場所で子どもを産みたいだけなのに、それがこんなにも難しいものなのかと衝撃を受けましたね。」
福本さんは、この現状をフィルムにして伝えていくべきだと感じ、そうして誕生したのが短編ドキュメンタリーフィルム『Water Baby』でした。『Water Baby』にアソシエイツ・プロデューサーとして関わっている、今年一児の父となった四角さんも、出産について「選択肢があることの大切さ」を語ります。
四角さん 「僕、今回初めて自分の妻の妊娠出産に立ち会ってわかったんですが、これほど大きなライフイベントはないと思うんです。そこにはやはり選択肢があるということが大切。いまの選択肢がない状況は社会システムの問題でもあり、それは簡単に変えられないと思います。しかし、それぞれの意識は一瞬で変えられるはずなんです。システム以前に、同調圧力や常識の思い込みのようなことが多い。日本ではいま、99%の人が病院で出産しています。助産院で産んでいる人は、たったの0.6%ほど。自宅出産というと、0.1〜0.2%。一方で、助産師さんの数は、実は日本はとても多いんです。しかし、それも知らない人が多い。病院出産が99%という数字は極端な数字ですが、これが良い悪いではなくて、もっと多様性があっていいのではないかと、僕は思うんです。」
“妊婦が主体”な、ニュージーランドの先進的な出産制度
一方、ニュージーランドでは、妊婦の94.2%が助産師を選ぶなど、妊婦が自ら出産方法を選び、安心して子どもを産むことができる環境が整っています。ニュージーランドが出産先進国と呼ばれる理由を、実際にニュージーランドで出産を経験されたお二人のお話から紐解いていきます。
四角さん 「病院やお医者さんの都合ではなくて、最後の最後まで妊婦さんの意思や気持ちが大切にされて、本人が納得する形で出産をするのが一番理想ですよね。ニュージーランドには、LMC(Lead Maternity Carer)というシステムがあり、1人の助産師さんが妊娠から出産6週間までワンストップで、継続してケアができます。例えば病院に行かなければいけない事態になったときも、助産師さんが主導権を握り、お医者さんに指示をします。最後まで助産師さん主導なんです。日本と違うのは、助産師の権限がお医者さんと同等であるということ。もちろん、助産院でも自宅を選んでも、いざとなったら病院に行けるバックアップはきちんとあります。ニュージーランドは、この『医療』と『昔ながらの助産師さん』の2つのコンビネーションが素晴らしいんです。」
こうした、助産師さんによるワンストップのケアによって、助産師と妊婦の「信頼関係」が構築されると、福本さんは言います。
福本さん 「妊娠中から出産に至るまでの間、短い期間でしたが助産師さんと二人三脚でずっと一緒に過ごし、出産前に私の要望はすべて伝えていました。実際にお産の途中で『もう無理』という瞬間があったんですが、そのときに彼女が『あなたできるわよ、大丈夫大丈夫。産めるわ。』と、背中を押してくれたんです。それが自信につながりました。助産師さんの励ましがなかったら産めていませんでしたね。『本当にまずいと思ったら、もう病院に連れて行ってた。でも私はあなたのことを以前から見ていて、産めると判断したから、背中を押したのよ。』と、言われました。
いま世界で主流になっている、シフト制の医師や助産師さんが入れ代わり立ち代わり入ってくる環境の中では、そうした信頼関係の構築は難しいと思うんです。そういう意味で、助産師さんに妊娠期間中からずっと寄り添ってもらい、出産に挑むことができる重要性を出産の最中にすごく感じましたね。」
福本さん 「妊娠時には、『FindMyMID』という助産師さんを探すためのWebサイトにいきます。助産師さんのプロフィールには『私は水中が得意』『病院が得意』などが書いてあり、それらを見て自分に合いそうな助産師を選んでインタビューしていくんです。日本での出産を考えていたときは多くの制約がありました。もちろん安全面を大事に考えた上でのルールや法律なんですが、例えば高齢出産になると自宅出産はちょっと難しいとか、予定日を1・2週間超えたり逆子だったりした場合は帝王切開になるとか……。
ニュージーランドで助産師さんと初めて話をしたとき、私が持っていた質問をすべて投げかけたんです。『予定日が過ぎたらどうなりますか?』『もし万が一逆子だったらどうなりますか?』『私はネイルが好きなんですが、取らなければいけませんか?』と、大きいものから小さいものまで。そしたら、すべての私の質問に対して『あなたがしたいようにしていいんだよ』と、言うんです。『あなたの予定日が過ぎても、あなたが待ちたければいくらでも待ちましょう』『だって、あなたの出産だよ』『あなたが産むんだから、あなたが決めていいんだよ。』と。そうした対話を通して、“ここで産んだら、自分がお産の主役になれる”、そう思ったんです。それが、ニュージーランド出産の決め手でしたね。」
女性の権利が認められると多様性がうまれ、環境も守られていく
出産の選択肢が少ないという課題を抱えているのは、実は日本だけではありません。世界中の妊婦が同じような課題を感じているのが現状で、むしろニュージーランドがまれなケースなのだといいます。ではなぜ、世界の中でニュージーランドだけが出産先進国と呼ばれるまでになれたのでしょうか。
四角さん 「そもそもニュージーランドでこのLMCシステムが導入されたのは、1990年代に社会的ムーブメントが起きたことがきっかけです。それまでは安全性を重視するがあまり、病院で産むのがニュージーランドで主流で、帝王切開の率が高かった時期もありました。しかし、助産師さん主導にならないとケアサービスが行き届かず、断片的なケアしかできずに産んだ後もバーストラウマを抱えてしまう女性が多かったんです。そうしたバーストラウマを抱える人がニュージーランドに限らず世界中でたくさんいて、ニュージーランドの助産師さんたちが立ち上がったんです。
ニュージーランドが出産先進国と呼ばれる一つの理由は、これまで女性が主体となって社会を動かし、女性の権利がきちんと認められていることが挙げられます。ニュージーランドは、基本的に女性がとても強い国。これまで女性の首相も3人輩出していますし、いまのアーダーン首相は37歳で首相になり、首相会見で産休取得の宣言しました。さすがのニュージーランド人も驚いてましたが、その後世論調査でしっかり支持率が上がっています。そしてこれにはもちろん女性の努力もありますが、男性の協力がすごく大きい。ニュージーランドには『キウイ・ハズバンド(Kiwi Husband)』という言葉があるんですが、家事や育児、何でも全部できる夫のことを指します。ニュージーランドでは、基本的に大半の男性が、このキウイ・ハズバンドなんですよね。
妊婦さんの権利が守られている場所は、間違いなく女性の権利も守られているし、女性が女性らしく働けます。それだけで当然、その延長線上には、社会的なマイノリティの人たちが認められる社会があります。ニュージーランドでは、かなり早いタイミングで同性婚が認められているんですよね。国会議員の多くが、自分は同性愛者だとカミングアウトもしています。やはり女性の権利が認められて女性の発言が強くなると、そうした多様性を認める社会になっていくというのが、僕の考えの一つです。」
女性の権利が認められると、多様性を認める社会がうまれる。四角さんはそれだけではなく、女性が強い社会は「環境への考え方やアクションが変わってくる」と、続けます。
四角さん 「ニュージーランドは、環境保護の観点でも進んでいたり、オーガニック率が高かったりしますが、大きな理由は女性の権利が守られ、女性が社会を動かす立場にいることだと思います。男性よりも女性の方が、共生や共存という発想をしっかり持てる。男性はどちらかというと奪い合いや、自分の持っているものをいかに保持するかとか、勝ち負けを決めたくなるという性質があります。これまで地球環境を破壊し、海をよごしてきた一番の理由は、男性社会が行き過ぎてしまったことも一つの理由としてあるのではないでしょうか。」
日本の産婆さんたちが、ニュージーランドの出産制度に与えた影響
「ニュージーランドはすごい」で終わらせないために、日本で私たちができることはないのでしょうか。そんな問いに、福本さんのお話から、あるヒントをいただきました。
福本さん 「先日、たまたまLMCシステムを動かす、ニュージーランド助産師会会長であるカレンさんにインタビューをする機会があったんです。そのときに私は『日本ではいま、みんながこのニュージーランドのLMCシステムを羨ましがっていて、日本でもこれができるように頑張って活動しているんです。』という話をしました。そうしたら、そのカレンさんが驚いた顔をするんです。『いやいや、私たちがいまニュージーランドでやっているこのシステムはもともと、私が昔日本を訪ねたときに、日本の産婆さんたちがやっていたことなの。それをニュージーランドに持ち帰ってきたのよ。』と、言われました。私そのとき、鳥肌が立ってしまって。実は日本が発祥だったんだ、って。昔の産婆さんが、おうちで赤ちゃんを取り上げていたときのこと、それをそのまんま持ってきたものが、現在のニュージーランドにあるLMCシステムだったんです。
そしてもう一つ、私の出産の中で、少し緊張する場面があったんです。赤ちゃんがお腹から出てきてから、息をするまでの時間が長くかかっていて。日本の助産師さんがその映像を見たときに、みんな『嘘でしょ?』という緊迫した空気になり、これを待ってくれるニュージーランドの助産師さんがすごい、という話になったんですよ。なぜならこれが日本だったら、赤ちゃんから水を出して泣かせるために、赤ちゃんを逆さまにして叩いたり、管を入れたりと、色々な処置がなされます。それを、ニュージーランドの私の助産師さんは、私に気づかせることなく冷静にそれを見守って、赤ちゃんがアクションするのをじっと待っていたんです。日本の助産師さんは、その“間”にもびっくりしていたとカレンさんに言ったら、『それもね、私たちは昔の日本の産婆さんから習ったことなの』って言われたんです。いま、ここにきてすごいと言われていることが、元をたどればすべて、昔の日本にあったものなんです。衝撃でした。だからいま、日本で私たちがやろうとしていることって、何か新しいことではなくて、取り戻すだけのことなんです。」
生命の源である海を守る
『Water Baby』のセリフの中に、「子どものころに見ていた美しかったあの海を、私の子にも見せてあげたい」というセリフがあります。沖縄生まれの幸子さんは、小さい頃からきれいな海を見て育ってきました。『Water Baby』も、現在制作中である続編の『Pacific Mother』も、妊婦さんだけでなく「海」という生命の母を守ることもテーマになっています。イベントの後半では、「海」をテーマに話が進んでいきます。
福本さん 「人間も自己治癒能力を持っているように自然もきっとその力を持っていいて、最近の自然災害は『自分たちでどうにかしなきゃ』と、自然がもがいているように見えて、海に潜っていると切なくなるんです。私たちは海を痛めつけているのに、海は私たちに与え続けてくれている。そんな海を、私たちはもっと大事にしなければなりません。」
海の大切さを訴える福本さんは、定置網などを使った過剰漁業や、サメの乱獲などの問題にも触れました。
福本さん 「魚がどんどん消えていくことによって、海の中の生態系が崩れてしまいます。私はサメの保護活動も行っているんですが、サメは基本的にすごく穏やかな生き物で、『出産が怖い』のと同じぐらい、『サメが怖い』ということがどちらも間違っていると言い切れます。怖い、危ないという理由や、フカヒレなどの商業的なもののために獲られすぎてしまうことによって、サメはいま絶滅の危機にあります。
だから本当は、サメがいっぱいいる海の中で出産したかったんです。サメが危なくないことを伝えるには、それが一番手っ取り早いなと思って。サメは人間の血液に反応する、といった都市伝説がありますが、そんなの全部嘘。サメがいっぱいいる中に人間の血液を入れる実験があったのですが、入れても何も反応しなくて。それぐらい、実は人間には興味がなくて。どうしたら守れるかばかり考えています。」
海を身近に生きている福本さんだからこそ感じる危機感。そんな福本さんは日常的に素潜りをして、自分が食べる分だけの魚を獲って食べているそうです。
福本さん 「素潜りは狙いを定めた魚しか獲らないので、無駄がないんですよね。1対1の関係で、私たちも息を止めて魚と対等に、お互い命がけ。そうして獲った魚を、残さずいただく。これこそフェアで、自然の中で共存していくということだと思うんです。」
自然と共に生きている福本さんだからこそ、自然の痛みを自分の痛みのように感じることができる。身の回りの自然に気づき、自然のありがたみを身体で感じることは、サステナブルな生活への一歩なのかもしれません。
100人いたら100通りのバースストーリーがある
福本さん 「出産は、『痛い』とか『怖い』というイメージが先行しちゃうんですけど、もし私が出産を一言で言うなら、『最高』しかなくて。よく鼻からスイカが出るくらい痛い、などと例えられますが、そういうネガティブなものじゃなくて、それ以上に最高です。
あとは意外と妊娠期間って短いんです。妊娠してから勉強して、出産のことを学ぼうと思っていたらあっという間に産まれちゃいます。妊娠や、出産に直面するもっと前の段階から、どうやって産みたいかが日常の会話の中で出てくるようになったらいいなって。別にそれが病院でもいいし帝王切開でもいいし、無痛でも何でもいい。色んな選択肢があるということが伝わったら嬉しいです。」
四角さん 「産み方は100人いたら100通りあって、自宅でも病院でも、お母さんも赤ちゃんも元気で、2つの命がしっかり守られていれば、僕はもうすべてが正解だと思います。ただ、なんとなく流れでもともとあるレールに乗って、『あのとき、あれで良かったんだろうか』と後で後悔するのは、お産に限らず、人生すべてにおいてみんな嫌じゃないですか。そのためにもやっぱり事前に勉強して、しっかり時間をかけてパートナーと話し合う。そういう時間を持つのは、パートナーシップにとってもすごくいいと思います。」
助産師さんや妊婦さんだけではなくて、私たち一人一人みんなに、バースストーリーがある。お二人のお話を聞きながら、イベントに参加された方々はそれぞれのバースストーリーに想いを馳せていました。現在、ドキュメンタリーフィルム『Pacific Mother』の制作チームでは、「もう一度、大切なことを思い出して欲しい」という想いで、「#それぞれのバースストーリー」というInstagramのハッシュタグで、色んな方々のバースストーリーを集めています。
四角さん 「バースストーリーに想いを馳せたその瞬間、間違いなくみんな母に対して、ありがとうと思えるんです。これこそが、すべての原点ですよね。みなさん、自分がどう産まれたか知らない人もほとんどでしょう。自分自身のルーツを思い出す。そしてその先にある、海のことにまで、想いを馳せてもらえたら嬉しいです。」
世の中が女性と妊婦さん、そして海という“母”たちに優しくなったら、社会、そして世界は、それだけで平和になるのではないか──それが、私たち人間がウェルビーイングに生きるために必要な、すべての原点なのではないでしょうか。
8分間の『Water Baby』では伝えきれなかった想いをすべて詰め込んだ、長編ドキュメンタリーフィルム『Pacific Mother』が、2022年9月に完成予定です。ドキュメンタリーフィルム作成を応援したい方は、現在クラウドファンディングもやられているので、のぞいてみてはいかがでしょうか。
Image via Pacific Mother Film
【参照サイト】 命の起源、母と海を守りたい。 “産み”と“海”のドキュメンタリーを世界へ